焔と渦巻く忍法帖 第二十話

・・・ユリアシティ、障気により液状化した大地の中で唯一二千年前からその形を変えていない、創世歴時代の技術を持って作られたローレライ教団の闇とも言える預言を見守る者達が現在住まう街・・・

シンク達からの話を聞いたルークとナルト二人はその街の在り方がローレライ教団の預言絶対主義を後押ししていると考えていた。



街自体は創世歴時代の技術の高さから障気に飲み込まれず残る事が出来た、二人はその点は素直にすごいと認める事が出来る。だが街の名前、ユリアシティ。その名前こそが預言を守るべきだと、人の命の事など考えない預言狂信者を生み出している原因の一つだと二人は思っていた。

・・・ユリアシティ、その名前が示す物は文字通りユリアが関わった街。その街が大衆に知られていたなら、預言を信じるこの世界の人達はまずユリアシティとの関わりを求めるだろう。狂信者という種類の人間は信仰する物の恩恵に縋るもの、だがそういった者達全員にユリアシティの存在を知られれば街という小さな世界の土地の中ではとても面倒は見切れない。故に入る人間の制限もあり情報の制限があるのは当然なのだ、信者達による混乱を避ける為には。だがその選民思想とも言える極秘主義と、ユリアという名が預言至上主義者を生む条件になっているのだ。

その存在を公にしない、その代わりユリアの遺した預言を守る事を役割として世界を繁栄に導く・・・そういった気持ちを持ってユリアシティの住民及びその存在を知っている者達は活動している。だがそれは排他的な気持ちを生む事になるのだ、自らの思想に同意出来ない者は自分とは別の存在なのだと。使命感というのは強ければ強い程、盲目の想いを生む物だから。

更にそんな考えになるに当たる理由はユリアシティのユリア、という名の後押しが大きい。もはやこの世界で神とも呼べる存在、その神が見守る障気すら不可侵な土地。そんな土地に住んでいてなおかつ預言絶対とも呼べる程の教育を受ける・・・大人になるころには立派なローレライ教団信者へと成長することだろう。ユリアと間接的とはいえ関われていてその神の言葉とも言える預言に逆らう・・・ありえるはずがない。



そんな人間と街が在るからこそローレライ教団の活動は滞りなく出来ているのであるし、預言に対しての姿勢を保てている。だがその姿勢故に捨てている物・・・それが倫理感、そして現実を見る目。

どれだけ預言が繁栄を示そうとしてもその先にあるものだけでなく、過程に出る犠牲を知らなければいずれそれは破綻を生む。その犠牲を意図的に無視したというのなら、尚更だ。

だからルーク達はそれを知らしめる為に動いているのだ、最高の手駒をその手に携え・・・












ルーク達はダアトから少し離れてユリアシティへ行く道に繋がる、アラミス湧水洞の奥へとたどり着いた。そこで水に包まれた譜陣から先に飛んだ・・・



・・・飛んだその先はユリアシティの中の一室、そのどこか今までの建物とは違う造りの屋根に覆われた光景からそう察したルークは修頭胸に声をかける。
「おい、市長に連絡取って来いよ。今から導師を始めとした人達から話があるから出来る限り早く話せる場を用意してくれって」
「・・・わかったわ・・・」
命令と呼ぶに相応しい口調・・・だが修頭胸はそんなルークの口調に一切反論せず、力無い声と力無い頷きを残して一人先に走って行く。その光景を見ても誰一人として口を出してくる事はない・・・その事実がもうルーク達に逆らえるような者が誰もいないことを指し示していた。
(んな肩落としてんじゃねーよ。まだ終わってねーんだぜ?お前らの罰は)
しかしルーク達は罰を終わらせた気は毛頭ない、もうちょっと持てよと思いながらルーク達はその後をゆっくり歩いて行く・・・







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