焔と渦巻く忍法帖 第二十話

「私達がヴァン謡将をここに連れて来た事、それに六神将の三人がここに来てくれているのには重大な理由があるんです」
「理由・・・ですか?」
ルークの立場が一気に上に来た、あからさまにうやうやしい態度に変わったトリトハイムは慎重にルークの言葉を先に促す。
「はい・・・ヴァン謡将がそのような凶行に及んだ事で和平を結ぶ立場の両国はどう考えると思いますか?和平の仲介をダアトに頼んだのに当のダアトから戦争を引き起こすような行動を取るヴァン謡将が現れた・・・それがどのような結果を招くかは簡単に想像がつくでしょう」
「・・・っ」
まずは軽く釘を刺す、詠師達の動揺が一斉に広がる。このルークのあまりにも組織としては致命的な事実を突かれた言葉に、詠師達はすでにルークに逆らえるような状態ではない健康さを損ねる顔色をしている。
「導師はこの事態を受け止め、ヴァン謡将をダアトより除籍する考えを示しています・・・そうですよね、導師?」
「・・・はい」
そこでルークは氷の微笑を張り付けイオンの顔を覗き込むようにして、同意を取る。そこで結局罪を犯し過ぎた身内を守る為の矛盾した打開策を練れなかったルークに流されるままでしかないイオンは机の下で手をギュッと握りしめ、俯きながらそうだと答える。
「貴方方はどのようにお考えですか?この導師の決断を」
「それ、は・・・当然の判断かと思います・・・」
「はい・・・私も・・・」
イオンの答えから真面目な顔に戻りながら詠師達を振り返り、どうだとルークは問う。詠師達はどもりながらもその意見に同意しだし、全員が同じように最後は首を縦に振る。



だがそれも当然の事だ。ここで言う除籍とは言わばキムラスカ・マルクトの両国へ老け髭を渡すのは、実質上の死刑宣告に等しい。

老け髭をダアトから関係ないとでも切り離さない限りは両国からの抗議、及び脅迫は止む事はない。最悪老け髭の身柄引き渡しを要求して、何かと偉そうな口上を述べられ戦争に発展・・・

そう考え外交の目を気にするならば老け髭を見捨てるのは妥当な判断・・・そう言えるだろう。



「成程・・・貴方方もそう言って下さるのですね」
だがここでルークは詠師達に初めて、ニタリと言った表現が似合う笑みを見せる。



・・・ルークとナルトがそんな老け髭をあっさり殺させてはい終わり、で終わらせるような生温い終わり方を望むはずがない。その存在を利用して使い回してボロボロにしてから殺す・・・それが人を道具として使おうとした者の末路に相応しい。ルーク達はそうしてから老け髭への意趣返しを終わらせようと考えている。まずここはその手始め・・・



そう思ったルークのその笑顔に、詠師達の顔は恐怖で歪んだ。
「でしたら少し私達に付き合っていただけませんか?そこまで遠い所には行きませんので、いいですよね?」
その恐怖に付け込むよう、お願いとも言えない命令に近い頼みを詠師達に投げかける。
「遠い所ではない・・・とはどこなのですか?」
その声にトリトハイムの当然とも言える質問返しが来た。






預言と老け髭の計画の頓挫が目的のルークにとって必要でない場所に行く必要はない、それならどこにルークは行くのか?
・・・それは惑星屑にとっても、老け髭兄妹達にとっても重要で馴染み深い地・・・
「ユリアシティです」
・・・そこで預言依存の者達に預言を詠ませなくするために・・・







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