焔と渦巻く忍法帖 第二十話

そしてトリトハイムの会議場入りを機に、残り五人の詠師も会議場に入り各々席に着く。トリトハイム以外の面々はいたって普通といった中年男性達の集まり、やはり惑星屑のあの体型は私腹を肥やして出来た物だとルーク達は考えながら代わり映えのしない面々の顔を覚える。



「・・・皆さん、よく集まってくれました。それでは報告を始めたいと思います」
「導師、その前に一つお聞きしてよろしいですか?報告と言われましたが、バチカルには大詠師がいたはずですが大詠師はどうされていますか?どうもここ最近大詠師からの連絡がないもので・・・」
イオンが皆が揃った事を確認し話し合いを開始させようとするなか、トリトハイムが開始前に惑星屑の近況をイオンに問う。質問のタイミングとしては重要な話し合いの前に口を出すよりはいいと言えるだろう。
「・・・そのことについては今からこの朱炎が僕に変わり、報告の中で話していただきます。それでよろしいですか?」
「は、はぁ・・・」
そんな質問に予てより打ち合わせていたルークへバトンを渡し、イオンはトリトハイムにその話の中身から拾ってもらうように頼む。トリトハイムは何故他人に任せるのかという戸惑いで言葉をはっきりさせず答える。
そのトリトハイムの姿にまぁそうなるだろうと口元を緩めかけ、ルークは前に出てイオンの隣につける。
「それではこれより私が導師よりお話を引き継がせていただきます・・・ですがその前に一つお聞きします。詠師である貴方方は大詠師はどのような用件でバチカルに行くかというのを聞いておられますか?」
「「「「?」」」」
丁寧に挨拶をしていざ話かと思いきや、惑星屑の目的を知ってるかとの質問。一斉に詠師達の顔が訳が分からないと首を傾げかける。
「・・・あぁそうだ。確かマルクトで何か不穏な動きがあると報告に受けたからインゴベルト陛下に急いで伝えに行かねばならないと言っていたな。言葉に比例するよう私にそう告げた後で飛ぶようにダアトから離れたので、多分私くらいしか大詠師がバチカルに行った姿は見ていないと思うが・・・」
そんな中でトリトハイムが思い出したようにはっとしながら、自分だけにそう伝えられたのではと最後にはっきりしない口調になる。だがそのはっきりしないという話し方は信頼に足る物だとルークは感じていた。



惑星屑はイオンがダアトから消えた理由をコウモリ娘から聞いていた。目的はマルクトからキムラスカへの和平の橋渡し、そう知ったからこそ惑星屑の行動は速くなった。死ぬ間際には預言すらも捨て去ったが元々は預言達成だけが絶対の人間、もし和平が結ばれたらと思うと気が気ではないはずだ。

そして惑星屑が預言をインゴベルト達に明かしたくなかったという言葉を照らし合わせると、更にトリトハイムの言葉に真実味が帯びてくる。譜石を詠むには第七音素を扱う素養のある者のみに許される行動、だが惑星屑はそんな素養はなかったという。

素養がないのに何故崩落から先の預言が詠まれた譜石の部分を折れたのか、その譜石を折る時間をダアトからバチカルに行くまでの間で突発的な出来事の中でどうやって取ったのか、そして譜石というユリアの遺産とも呼べる物体を折る事を勝手に認める狂者が道端にいるのか?

・・・それら全てを繋ぐ一直線上先にあるもの、その正体をルークとナルトはサフィール達からの情報を聞いた事で利用を試みる事にしたのだ。



はっきりしないという態度が指し示す物、それはあまりにも惑星屑に精神的余裕がなかった為に起こした出来事に対応出来ていない事を示している。現に他の詠師達もトリトハイムの話にほぉ、と今初めて知ったように感心を見せている。
それを見たルークは次の質問を口にする、この中に惑星屑と同じく志を共にせん者がいるかを確かめる為の。






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