焔と渦巻く忍法帖 第二十話

・・・それから数日後、タルタロスは目的地ダアトの近くの地にたどり着きその場に停泊した。



タルタロスを置き、その地に団体で足を踏み入れて行くルーク達。だがその一行の中に人一人分の大きさのずだ袋を担いだ影分身兵士が二人いる。そのずだ袋の中身を知っている一同はあえて口出しはしない、しないのだが一同の嫌疑の目がナルトが脇に抱えて持っているある物体に集中している。

その物体とは・・・肩幅より少し小さいくらいの正方形の形をした、飾り気が全くない木箱。ナルトがいきなりそんな正体不明な物体を持ち出した事にまた何かが起きるのか、そんな怯えの視線がほとんどである。だがルーク達はこの木箱を周りの面々への攻撃に使う気はない、勝手に怯えるなりなんなり好きにしとけと弁明もすることなく歩みを進めていく。



そして教会の中に入った一同、ルークはそこでイオンの肩をポンと軽く叩き合図をする。苦々しい表情になるイオンだが、結局断る事が出来ない事でイオンは出来るだけ表情を引き締め近くの神託の盾兵士へと近づいて声をかける。
「よろしいですか?」
「あっ・・・これは導師。私にどのような御用でしょうか?」
イオンと対しかしこまった口調になる兵士にイオンは伝えるべき事を話す。
「至急トリトハイムを始めとする詠師六人を集めて会議場に来ていただくよう伝言をお願いします。バチカルで起こった事の報告を兼ねて至急話し合わなければいけない事がありますので早くお願いします」
「はっ!わかりました」
命を受けた兵士は勢いよく敬礼を返すと、一礼をしてどこかへと走りだす。
「はいご苦労さん。んじゃ俺らは先に会議場にでも行こうか」
「・・・わかりました」
ルークはそんなイオンに労いの言葉をかけながらも、会議場への案内を頼む。イオンは暗い表情ながらもその声に応え、前を歩き出す。









ルーク達がイオンに詠師達を集めさせる理由は簡単である。それはここが本題ではない、の一言に尽きる故だ。

詠師は大詠師・導師に続く位置でダアトにいると、ルーク達二人はサフィールから聞いた。そのほとんどが惑星屑より大分柔い程度に預言保守派であること、そして惑星屑とは違い戦争が詠まれた預言の事を知らないという事も。

あくまでもルーク達の狙いは預言を詠まないようにすること、ダアトを始めとするローレライ教団信者を改心・改宗させることではない。だからルーク達は詠師クラスを集めるだけに留め、その面子に預言の事実を強く知らしめる事にしたのだ。
まあ集めた詠師達がいかに事実を否定しようともそれを受け入れざるを得ないよう、ルーク達は手を尽くすのを忘れてはいないが。









先に会議場に入ってイオンは一同をまとめる立場にて上座の席に座っている。ルーク達は一応の立場を鑑みてこの場ではイオンの後ろで立っている。

重要地位にいる人間をいきなり集める、それ相応の時間を費やし待っていたルーク達の待つ会議場の扉が開かれた。
「失礼します、導師」
「あ・・・お待ちしていました、トリトハイム」
扉から現れた丁寧な挨拶をする比較的平均的な体型と顔立ちの中年男性、その男性にイオンはトリトハイムと名を呼び立ち上がり出迎える。
(ふーん、この人がトリトハイムねー)
ルークはその人物を見て顔をしっかり覚える。
導師や大詠師がローレライ教団のそれぞれをわかつ二大派閥の党首ではあるが、トリトハイムはダアトを実質的に治める責任者という立場にある。それが示すのは詠師の中でも特別な地位にいるということを現している、つまりは・・・
(これからこの人がイオンとダアトを切り盛りしていくんだよなー、頑張ってー)
心にもない励ましを心で思いながらトリトハイムにそう念を送るルーク。
殺す気がないというのは本音で間違いないが、ダアトのごたごたをルーク達が関わる気がないのも事実。ダアトで繰り上がりの形ではあるがNo.2になるであろうトリトハイムに苦労が降り懸かるのは確定だろうと、ルークは思っていた。







4/30ページ
スキ