焔と渦巻く忍法帖 第二十話

ルークとナルトは愉快と言った様相を見せながら、バチカルからタルタロスに移動してそのブリッジの中にいた。



一足先に待って笑顔を無理矢理消してその入口を並んで見続ける二人、ふと二人はピクッと反応し一瞬だけ口角を上げる。そんな反応を見せた二人のすぐ後にブリッジの扉が開く。

・・・そこから現れた面々の顔を見た二人は共通の考えが浮かんでいた。



((うっわひっでぇ顔、どいつもこいつも・・・!))



内心で笑いを堪えつつ、平静を装う二人。だが二人ともその気持ちを共に伝えたいのか、コツコツと互いに肘を一回相手の体の側面に軽くぶつける。だがそう気持ちを抑え切れないのも当然だろう、その視界に見える物はそれ相応の物だった。



まず傍目に見て1番ダメージが少ないのは眼鏡狸。ぱっと見て無表情だが外堀はもう埋まっている、表情が変わろうと変わるまいともうその顔がルーク達の前で優越感に満ちた物になることはない。その顔がいつまで続くかが見物だとルーク達は考えている。

その他は大体似たような物で、暗く影のさした表情をしている。だが他の面々全てを凌駕する顔色の悪さを見せていたのが、修頭胸だった。

目の下には幽霊を思わせるようなクマが出来、頬は大きく凹んでいる。更に表情には一切の生気もなく、視点はどこを見ているのかもわからない程定まっていない。体型も多少健康的なくらいだったそれが雰囲気もあいまって、たったの数日程度で一気に10キロ以上痩せたかと思える程小さく見える物となった

・・・やはり条件をクリアするまでナルトの幻術で数日の内ほとんどを過ごしただけの事はある、精神も肉体も相応に擦り減らした様子が簡単に見て取れた。



ただ目の下のクマに関してだけならいい勝負をしている者がいる・・・煙デコだ。その理由ははっきり分かる、隣に位置する猪思考姫の手元にある重そうな袋だ。明らかに旅をするのに不釣り合いな程パンパンに詰まった袋、その袋の口辺りから見えている物が・・・本の背表紙。それを見てはっきりルーク達は理解していた、煙デコは猪思考姫に勉強を強制させられているのだと。

猪思考姫からすれば一分一秒とて惜しいのだろう、移動の時間とて。本来なら煙デコを屋敷に縛り付け起きている時間全てを勉強に集中させたいはずだ。煙デコはその強制を断れていない様子・・・今は持っているだろうが、いずれはその顔を見るだけで煙デコは好意を持てなくなるだろう。何せ政治に関わる事を禁じられた身だ、これからは時間は余る程ある。全ての時間を注ぎ込んで猪思考姫は出来る限り煙デコに勉強を強要するであろうから。






・・・そしてこれからを思い確実にきつい展開になるであろう、イオンの表情は二人に劣るが相当の影があった。
「さーて、全員揃った事だしダアトに行きますか」
全員が全員、強い影のある表情を見てわざとらしくルークは全員揃ったと明るく出発を告げる。
「・・・あの、朱炎。よろしいですか・・・?」
「ん?なんだ、イオン」
その矢先たまらずイオンは小さく声を上げる。ルークはその声に機嫌よく答える。
「何故シンクとディストとアリエッタはここにはいないのですか・・・?」
「あぁ髭オッサンとリグレットのとこにいる。ちょっとあの二人をそろそろ起こしてやろうと思ってな、先に行ってもらってんだ」
「あの・・・そのことなのですが、貴方達はダアトで何をするのですか・・・?預言通りにしないようにするというのはわかります、ですが・・・」
「そこで止めとけ、イオン」
明らかに不信を見せるイオンの声色に、ルークは途中で口を出してその声を意図的に押さえる。
「これから俺らがやろうとしてんのは戦争を止めるっていう良心に満ちた行為だ。それは大詠師止めただけではい終わり、で済む事じゃねぇんだ。寧ろ大詠師の考えに同調して動く、預言保守派をどうにかしなきゃ話になんねぇ。そいつらを抑えるのが俺の狙いだから、お前は気にしなくていいんだよ」
イオンの言わんとしている事はルークにはわかった。穏便に済ませられないのかと言いたいのだ、ダアトでやることを。しかしルークには一切そんな穏便にといった手段を使う気はない。それこそ惑星屑以外の預言保守派が動いたなら更にややこしい事になる、下手をすれば水面下で再び戦争を起こすきっかけを作る為の手を打たれてしまう。
だがそういった緊迫した状況であるにも関わらず、イオンは一歩前に出て更に口を開く。







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