焔と渦巻く忍法帖 第四話

ルークはナルトに報告を終え、オールドラントに戻ってきた。
(さーて、とりあえずこいつを起こすか)
「おーい。起きろ~」
と言い、ルークは侵入者の顔をペシペシ叩いた。
「んっ、ううん・・・」
「起きたか?」
「はっ!あなたは!?」
そう言い侵入者はルークから距離を取り、杖をルークに向けていた。
「迂濶だったわ・・・あなたも第七音譜術士だったのね」
「は?つーかお前誰だよ!!」
「人に名を尋ねる時は自分から名乗るものよ」
この言葉を聞いた瞬間ルークは目の前の女に対して「馬鹿じゃねぇ?」と思っていた。



(つーか『今から仲良くするために自己紹介しましょう』みたいなノリで聞いてんじゃねーよ、俺は。それにファブレ公爵邸に忍び込んで来てんだから‘ルーク・フォン・ファブレ’だって知ってるんじゃねーの?この世界じゃ赤毛で翠の瞳を持つ者はキムラスカ王家に関係する人間しかいねーんだし。つーかその事知ってる知らない関係なしにあの場にいたんだから間違いなく貴族だって予想出来るだろ。まぁ一応オリジナルの物だけど俺次期王様なんだぜ?何武器向けて偉そうに上から目線な口調で話してんだ?一兵士が王族に対する態度としては最低以下だな。あー、やっぱ馬鹿だ)
こんなヤツとは話したくねぇんだけどなぁ、と内心やる気激減なルーク。
(こいつ無駄にプライド高そうなんだよなぁ。自分が納得できない事に対して、意地を無駄にはりそうだし)
あー、仕方ねぇ。
「ルークだ」
名乗ってやんねぇとグチグチ言いそうだし、と気だるげに名前を名乗った。
「ティアよ」
名乗った事に一先ず満足したのか武器を下げ、名前を名乗った侵入者。
ルークはとりあえず気分を落ち着かせたティアとかいう女から事情を聞くことにした。
「お前何で師匠を襲ったんだよ!!」
「それはあなたには関係ないわ」
返された返事にルークはまた内心で呆れていた。
(・・・マジかこいつ)
「関係ないなんてことはねーだろ!!俺んちに来て師匠を襲ってんのに!!」
「個人的な事情よ。あなたには関係ないわ」
関係ない、そういえば全て通るというのか。ルークはそう思っていた。
(・・・無理矢理情報を吐かせてやろうかな)
黒い考えが頭によぎり始めたが、
(見た感じ情報持ってるのは間違いないんだよな。それを言えない、関係ないなんて強調するのはよっぽど重大なことなのは想像出来る。まぁ、時間はあるから急ぐ必要はないな)
とじっくり行く形で進めて行こうとルークは決定した。






(やっぱ無理矢理吐かせてさっさとおさらばしておけばよかった・・・)
ルークは気長に行こうと決めた事を早くも後悔していた。
ルークは常識知らずな女軍人だと認識していたが、これほど酷いとは思っていなかった。
(形式上は民間人で別国の貴族の俺に前衛で戦えって・・・)
ここが外である以上魔物が出てくる、当然ティアが魔物を排除するものだと思っていた。しかしティアは
「魔物よ、構えて」
と、ルークに戦えと言ってきたのだ。ルークは戦う事には反対ではないが、あくまでティアが一人では無理だと判断したときに自己申告で手伝うつもりだった。しかし、最初から自分に戦えと言ってきたティアに会って何度目かの失望を感じていた。
(・・・もういいや。こいつに『どうして俺が!?』って言っても『剣を持っているなら戦うのは当然よ。子供でもわかることだわ』って返されそうだし)
自分の考えに自信を持っているだけに他人からの指摘は気に入らない・・・というよりも相手の言葉が間違っていると信じて疑わない、ティアからすれば理想の兵士像を確立しているつもりなのだろうが実は只の一人よがりな自己満足だと気付くことは決してないだろうとルークは思っていた。
(はあ・・・面倒くせぇ)
下手に逆らっても疲れるだけなのでティアの言葉に従っているが、本来の常識を知ってる身としてはツッコミたくて仕方ない。その衝動をルークは押さえつつ、渓谷を下っていった。




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