焔と渦巻く忍法帖 第十九話

「どうしますか?示しをつけるだけの罰は必須です。ナタリア殿下の行動に見合うだけの案でなければ殿下だけの問題ではなく陛下に公爵、それにキムラスカ王族の血を引く貴方にまで貴族は不満を強めます・・・その処分次第では国からの離反を考える方もおられるでしょうし、最悪クーデターすら起きかねない可能性もありますよ」
「・・・!」
とはいえ感情論を持って食ってかかられては時間の無駄なので、あらかじめインゴベルトに自分を信じてほしいと訴えかけないように逃げ場を潰す。煙デコはそうしようとしていたのか、口が軽く開いたまま眉間に強くシワを寄せて何も言わず止まってしまう。
示しというからには、それは度量を見せなくてはならない。それが度量を見せず身内ひいきの判決しかしないようであれば・・・国から離反を考える貴族は間違いなく出て来るだろう、少なくても大きな不信感は確実に残る。そこで猪思考姫の名誉挽回に失敗でもすれば・・・クーデターもそれこそ有り得ない話ではなくなってしまう。
・・・国にとって最悪な結末が待ち構えている。そう告げられ煙デコが出す答えは何なのか?煙デコがどういう結論にいたるのか、インゴベルトと猪思考姫は固唾を飲んで見守る様子を見せている。が、ルークとナルトは分かっている。出て来る答えが何なのかを。









「・・・・・・・・・」
「・・・いつまで黙っておる、ルーク」
時間にすれば10分程度というくらいだろう、一向に口を開かず苦い顔をするだけの煙デコに痺れを切らしたインゴベルトが口を開く。
「まさか考えも無しに口を開いた訳でもあるまいな?」
「・・・っ!」
「・・・図星、のようだな」
インゴベルトのもしや、という響きを持たせた質問に煙デコは何も言えず顔を下に下げてしまう。その反応から予感が的中したと理解したインゴベルトは若干の鋭い視線を見せる。
「先を見越した案もなくルーク、何故お前はナタリアを擁護しようとする。お前はキムラスカを潰したいとでも言うのか?」
「・・・それは・・・」
流石にキムラスカを変えると猪思考姫と言っていただけあって、潰すという単語に煙デコは意気消沈した様子ではっきり反論を口に出来ずにいる。
「これからはキムラスカはもう預言を頼らない、いや頼れんのだ。お前がその調子でどうする」
だが続いたインゴベルトの言葉にピクッと煙デコは肩を震わす。そして上げた顔に浮かんでいたものは、ルークに見せたような怒りだった。
「・・・お言葉ですが、叔父上。貴方は預言の為にナタリアを、そして私を見捨てようとされました。その事実を忘れましたか?そんな貴方に預言を詠めなくなるからしっかりしろなどと言われたくありません・・・!」
流石に預言に詠まれたから見捨てられそうになったという事実から、インゴベルトにそれだけは言われたくないと思ったのだろう。煙デコは無礼だということも気にせず現王に牙を見せ、反抗の態度を示す。
だが・・・ルークとナルトはその二人の冷え切った瞬間の空気を見て、感じ取っていた。インゴベルトは煙デコより優位に立つ事は確定で、インゴベルトが生きている限り優位に立てる事はないだろうと。
「・・・確かに偉そうに言われる言われはないだろう、預言により見捨てたお前達にこの国の未来を託すのだからな。だが文句を言うだけ言っておきながら、その実は何も考えを思いついていなかった者に国の存亡をかけれると思うか?」
「・・・っ!」
開き直り、と言っていいだろう。もはやなりふり構わず国を守る為に辛辣に言葉を吐き出すインゴベルトに、あまりに正論を言われて煙デコは答えを返せずに無意識に身を引いてしまっている。



現王は必死、その事がわかってしまうだけにルーク達は笑いをこらえていた。王とあろうものが仮にも六神将であった煙デコの怒りにけして負けない威厳を保っていた、少なくみても四十は越えているであろうほとんど王座から動かないはずのオッサンが。つまりそうしなければいけない程の危機感があるのだ、このままでは国が危ないと思える程の。
(まぁわかんぜ?気持ち。とりあえず精一杯煙デコを諭しな、とどめは綺麗に刺してやるから)







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