焔と渦巻く忍法帖 第十九話

「更に人員的被害に関しても、おいそれと無視できる物ではない」
インゴベルトは更に言葉を紡ぐが、実はこの問題こそが修頭胸と似通った問題・・・だが一介の一兵卒と一国の王女では比べるまでもない波紋が広がる。
「ナタリア付きの当時の担当のメイドに侍女、部屋の警護をしていた兵士は抜け出すナタリアを見過ごしていた事で解雇を命じ・・・いや死刑とした」
「・・・えっ・・・えっ!?」
人員被害を告げるインゴベルトはオブラートに包もうとした言葉をあえて広げ、本当の事を冷たく明かす。一瞬何事か理解出来なかった様子だが、言葉の意味を飲み込み驚きと蒼白を併せた様子で声を上げる。
「・・・何故・・・何故なのですか・・・?」
「むろんナタリアをみすみす城から抜け出させたせいだ。王族を守り盾たらんはずの者がこのていたらく、死罪ははっきりと言えば当然の事。役目を果たせず何が従者と言えようか」
カタカタと震えの見える猪思考姫はインゴベルトに恐る恐る質問し、その答えに威厳を持たせた様子で返す。
「理由はそれだけじゃないんだよな~、ねぇへ・い・か?」
「!!」
だがそこでナルトは流れを打ち切るよう、頭の後ろで両手を組んで気楽そうに緩い口調で話し出す。インゴベルトは瞬時に口を止めたが、その打ち切った流れに先を促して来たのは静観せざるを得なかった煙デコだった。
「・・・なんなんだ、その理由とは」
「理由は簡単、どこからか出るかもしれない証言の食い違いを無くす為だってばよ」
「食い・・・違い?」
「そう。陛下や故人モース氏は考えた、アクゼリュスで王女に死んでもらうのはいいが世間には聡明な方でこの任にも内密の形で付いていったと思われるように情報操作をしなければと。けど前提の条件として王女が城から脱走なんて聞こえの悪い噂を立てられたら自業自得だと気運が下がる可能性があるし、もし脱走の事実を知る者が声高にこれは嘘だと騒ぎ立てたなら戦争どころか王女を謀殺したとか戦争を誘発するための自作自演とかいう根も葉も無い噂が飛び交って最悪民と国の間での内戦にまでの発展も考えられる。だから綺麗な王女のイメージを崩させない為に、証言者たりえる人員を処分したんだってばよ。表向きは王女を脱走させてしまったって悟らせない為に適当な罪を着せてな」
「「「!!」」」
三者三様、衝撃は強く顔にその反応が現れる。煙デコは事実を知っての驚き、インゴベルトは内情を明かされ何も反論が出来ず卒倒しそうな顔色の悪さでうつむき黙り込む。だが一番加害者のはずの猪思考姫は魂の抜けた人形のようになりながらも、カクカクと口だけを動かす。
「私が、城を抜けた為に、彼女達が・・・?」
「そうそうそういう事。姉ちゃんに仕えていた人達ってどんな人か見たことないから知らないけどさぁ、姉ちゃんのせいで死んだようなもんなんだってばよ?それなのに姉ちゃんは死刑になるどころか、王女としての名前に傷一つついてない。随分皮肉な事だってばよね、無自覚にやった行動から結果偽者だってわかってもそのまんまの地位にいれるんだから。国に大きな被害を与えておいても全くお咎めがないんだから」
事実昨日ルーク達が街を散策し『ナタリア王女』の評価をバチカルの住民達に聞き込みをしてみれば、脱走の事に関して事実を知っている住民はおらず評価は総じて高い物だった。住民からまとめたイメージとして気高く民を気遣う才気溢れる人物、そのイメージもルーク達から見れば多かれ少なかれ改竄されているのではと考えていた。



「私は、悪くありません、悪いのは、預言・・・」
だが尚も自身の非から逃れようと預言に非をなすりつけようとする。が、
「黙れ、愚姫。お前にその言葉を口にする権利はねぇんだよ」
ナルトは預言と出た瞬間タメ口から罵倒へと言語を変化させた。許す気はない、だからこそその預言という言葉がナルトのカンに障った。









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