焔と渦巻く忍法帖 第十九話

・・・そして翌日、ルークは目を覚ますと城から公爵邸へと足を運んだ。ルークが公爵邸に入りまっすぐ向かったのは庭、公爵と煙デコを前にして公爵夫人や屋敷内の兵やメイドなど働いている人達全員が勢揃いしている。ルークはそんな中でさっさと煙デコの横に付くが、ナルトは一緒には付いては来ていない。むろんそんな場にナルトがいないわけはない、ナルトは煙デコの屋根の上でその場面を見ている。

集められた意味がわからず何が何だか分からずといった様子の一同だったが、ルークの登場により少し同様で雰囲気がざわめく。



「・・・ん。来たな」
公爵は位置につけたルークを威厳を持った口調で確認すると、一同に向かって話を切り出す。
「皆、聞いてくれ。今諸君の目の前にいるルークとそのルークと瓜二つの姿をしたものがいる。諸君の知るルークはこちらの服装を変えて髪をまとめた者であろう、だが落ち着いて聞いてもらいたい・・・こちらのルークは・・・偽者だ」
「「「「!?」」」」
公爵の苦渋の表情から切り出された真実、その場は一気に動揺の輪がより一層広まる。
(貴族なだけあって腹芸は得意だよな、まぁそれくらいしてもらわねぇと俺に殺されっから当然っちゃ当然か)
そんな中で覚悟を決めてその瞬間目をつぶったように見せたルークは内心で城の中で叩き込んだ事を思い出す。






「本物のルーク様を元のファブレ子息に戻していただくために一つ演技をしてはいただけませんか?」
「演技・・・とは?」
「私とて不肖の未熟者ではありましたがファブレの名を名乗らせていただきました。そこでルーク様を元に戻す為と皆が私をルーク様ではないと認識していただく為に、ヴァン謡将の所業を明かして・・・ルーク様に同情を買わせるような演技をしていただきたいのです」
「・・・っ」
さぞ恐ろしかったのか同情をとの言を言う時に耳元で煙デコ本人に聞こえないように呟いた時、すぐさま公爵はブンブンと首を縦に勢いよく振った。






・・・内心は失敗は出来ないと脂汗を絶え間無くかいている事であろう、公爵は老け髭の起こした事を一同に全て話し終える。
「・・・ヴァンのせいで我が息子ルークは日の目を見ぬ日々を過ごして来た。そして諸君、諸君らが接してきたルークはヴァンの生み出したレプリカであった!・・・何も知らぬレプリカ・・・我々は記憶を失ったものだと思っていたが、それはヴァンがルークとレプリカを入れ替えたからであったのだ!」
「そ、そんな・・・」
夫の激しい一言に夫人は頭を抱え倒れ込みそうになるが、側付きのメイド達がすぐに体を支える。
「・・・その事実を知ったこちらのルークはルークを助けた後、キムラスカへと戻り私にこう告げてくれた。真実を知った以上私はもうファブレの名を名乗る事は出来ない、と」
「・・・それではこちらのルークは、ファブレから出るという事ですか?」
夫人は力無く公爵にルークの行く末を問う。恐らく目に見える二人のルークに酔っているのだろう。人格者たらんとするその姿は一般人ならともかく貴族としては致命的な欠点だ。修頭胸しかり今のルークしかり、そのまま放置してはいけない問題よりも感情を優先している。
体や心が弱い分素直な感情に従う事に縋らなければ生き辛いのだろうが、自らの命が大切な公爵はきっぱりと言い切る。
「そうだ。これは本人たっての希望でもある。偽者であると知りその存在を疑問に思ったこちらのルークはファブレの名をルークとともに継いでいいものかと、屋敷を離れる事を選んだのだ」
正直に言えばルークをそのまま置く事の危険性もないことはないのだ、レプリカ技術という禁忌の技術から生み出された存在は。耳通りのいい言い訳を即座に考えた公爵は更に話を詰める。
「とにかく、ルークはヴァンの凶行の為にファブレの家を七年もの間離れる事となった。確かに気付けなかった我らにも非はあろう・・・だがだからこそ我らはルークを迎え入れなければならんのだ、キムラスカを導く存在として今度こそ守る為に」
(やるねぇ~、流石に歳の功だ)
自らの弱い所を見せ上に立つ人間に相応しい貫禄と決意を表すそのギャップに、ルークは茶化しを心で入れる。
これだけの世紀の茶番を見て、周りの人間達はどこか公爵の見る目が変わっていく姿にもう大丈夫だろうと思ったルークはちらりと煙デコの横顔を見た。









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