焔と渦巻く忍法帖 第十九話
「・・・ん?」
幻術の中で何が起こっているのか、想像できずに何も言わなくなった修頭胸を黙って見ていたファブレ公爵。すると修頭胸の対面上に黙って立っていたナルトがおもむろに前進しだした事に反応する。
「・・・よいしょっと」
修頭胸の前に来たナルトは何故かいきなり修頭胸の体をお姫様抱っこする。そしてその体勢からナルトは公爵に頭を下げる。
「もうやることは全部終わったから帰らせてもらうってば。こいつは置いてくと迷惑だろうから俺が引き取ってくんで」
虚ろなままの修頭胸はナルトの腕の中で身じろぎ一つしない。幻を見せているというだけで恐怖物だが幻の中で何があったのか・・・修頭胸の状態にナルトへの恐怖より、興味が勝った公爵は恐る恐る口を開く。
「現実を見せたと言っていたが・・・終わったのなら何故ティア・グランツは目を覚まさないんだ・・・?」
その状態こそが疑問であった。終わったというのに端から見たら何も進んでいないその姿・・・
薄々不穏な空気を感じていた公爵。
「そうだってばねぇ・・・特別に教えてあげるってばよ」
公爵の言葉に不安を感じたのかわざとらしすぎるくらい、優しい声色で話すナルト。
「目を覚ませるようになるのはこの姉ちゃんが現実を直視出来るようになるまでだってば。それまではどんなに頑張っても幻から覚める事はないから、こんなところで突っ立たせても邪魔な置物にしかならないってば」
「・・・そ、そうなのか・・・」
聞いて公爵は若干後悔した。終わらない悪夢といっても過言でもない空間に置いた当の本人はいたって愉快そう。だが続いた言葉に更に公爵は後悔を強めた。
「もし現実空間に帰って来れるようになったとしても人間として最低な程、自らを省みれないからなぁこいつ。だから、犠牲を忘れるような事や謝罪を拒否するような事があればまた幻を見れるよう術をかけたから安心していいってばよ?もう二度と自分本位で自分が正しいなんて思うことがないよう、心の全てに刻み込んでもらうから・・・」
「・・・っ!!!」
思わず悲鳴をあげそうになったが公爵は必死にその声を口内に納める。ナルトの楽しそうな声に修頭胸を見る何も映していないその瞳がたまらなくアンバランスで、どちらが本当のナルトで本音なのかを公爵は理解出来ない・・・故に恐怖した。逆鱗に触れるその意味が改めて理解させられて、萎縮したのだ公爵は。
・・・もっともナルトからしてみればどちらも紛れも無い本心なのだが。
「じゃあこれで失礼するってばよ。お目汚しな場面を見せた事、詫びておくってば」
全く敬語を使わず敬っていないナルトだが、もはや公爵にそんな事を気に出来るはずがない。もう一回頭を下げてさっさと退出していくナルトの姿を公爵はただ見送るばかりであった・・・
「おーう、ナルト。お疲れさん」
「ルークもお疲れだってばよ」
城の中の自分達にあてがわせた部屋、ルークとナルトは互いの担当を終わらせた事を互いに労いながら顔を合わせる。
「首尾はどうだ?」
「さっきベッドに寝かして来たけどいつ目を覚ますか分からないから起きてる間は影分身をつけるってば。起きても一切気の休まる時間のない現実・・・どれだけまいるってばね~」
「ははっ、そうか。こっちも後々効いてくるようにしてやったよ。ナルトとは違ってまだ傷は浅いけど」
「後でおもいっきりグサッ!ってえぐるんだってばよね?ルークは」
「そういう事。ま、二人は済んだんだ。明日はあの二人だな」
「そうだってばね。明日は一気に片付けるからもうゆっくり寝るってばよ」
「そうすっか」
先程まであんなに不穏な雰囲気を出していたとは思えないやり取り、信頼の置ける唯一無二の存在は心許せる物。ルークはナルトとともに同時のタイミングで互いのベッドに入ると、明日に控える偽王女と出戻り貴族子息の断罪の為に穏やかに目を閉じた・・・
.
幻術の中で何が起こっているのか、想像できずに何も言わなくなった修頭胸を黙って見ていたファブレ公爵。すると修頭胸の対面上に黙って立っていたナルトがおもむろに前進しだした事に反応する。
「・・・よいしょっと」
修頭胸の前に来たナルトは何故かいきなり修頭胸の体をお姫様抱っこする。そしてその体勢からナルトは公爵に頭を下げる。
「もうやることは全部終わったから帰らせてもらうってば。こいつは置いてくと迷惑だろうから俺が引き取ってくんで」
虚ろなままの修頭胸はナルトの腕の中で身じろぎ一つしない。幻を見せているというだけで恐怖物だが幻の中で何があったのか・・・修頭胸の状態にナルトへの恐怖より、興味が勝った公爵は恐る恐る口を開く。
「現実を見せたと言っていたが・・・終わったのなら何故ティア・グランツは目を覚まさないんだ・・・?」
その状態こそが疑問であった。終わったというのに端から見たら何も進んでいないその姿・・・
薄々不穏な空気を感じていた公爵。
「そうだってばねぇ・・・特別に教えてあげるってばよ」
公爵の言葉に不安を感じたのかわざとらしすぎるくらい、優しい声色で話すナルト。
「目を覚ませるようになるのはこの姉ちゃんが現実を直視出来るようになるまでだってば。それまではどんなに頑張っても幻から覚める事はないから、こんなところで突っ立たせても邪魔な置物にしかならないってば」
「・・・そ、そうなのか・・・」
聞いて公爵は若干後悔した。終わらない悪夢といっても過言でもない空間に置いた当の本人はいたって愉快そう。だが続いた言葉に更に公爵は後悔を強めた。
「もし現実空間に帰って来れるようになったとしても人間として最低な程、自らを省みれないからなぁこいつ。だから、犠牲を忘れるような事や謝罪を拒否するような事があればまた幻を見れるよう術をかけたから安心していいってばよ?もう二度と自分本位で自分が正しいなんて思うことがないよう、心の全てに刻み込んでもらうから・・・」
「・・・っ!!!」
思わず悲鳴をあげそうになったが公爵は必死にその声を口内に納める。ナルトの楽しそうな声に修頭胸を見る何も映していないその瞳がたまらなくアンバランスで、どちらが本当のナルトで本音なのかを公爵は理解出来ない・・・故に恐怖した。逆鱗に触れるその意味が改めて理解させられて、萎縮したのだ公爵は。
・・・もっともナルトからしてみればどちらも紛れも無い本心なのだが。
「じゃあこれで失礼するってばよ。お目汚しな場面を見せた事、詫びておくってば」
全く敬語を使わず敬っていないナルトだが、もはや公爵にそんな事を気に出来るはずがない。もう一回頭を下げてさっさと退出していくナルトの姿を公爵はただ見送るばかりであった・・・
「おーう、ナルト。お疲れさん」
「ルークもお疲れだってばよ」
城の中の自分達にあてがわせた部屋、ルークとナルトは互いの担当を終わらせた事を互いに労いながら顔を合わせる。
「首尾はどうだ?」
「さっきベッドに寝かして来たけどいつ目を覚ますか分からないから起きてる間は影分身をつけるってば。起きても一切気の休まる時間のない現実・・・どれだけまいるってばね~」
「ははっ、そうか。こっちも後々効いてくるようにしてやったよ。ナルトとは違ってまだ傷は浅いけど」
「後でおもいっきりグサッ!ってえぐるんだってばよね?ルークは」
「そういう事。ま、二人は済んだんだ。明日はあの二人だな」
「そうだってばね。明日は一気に片付けるからもうゆっくり寝るってばよ」
「そうすっか」
先程まであんなに不穏な雰囲気を出していたとは思えないやり取り、信頼の置ける唯一無二の存在は心許せる物。ルークはナルトとともに同時のタイミングで互いのベッドに入ると、明日に控える偽王女と出戻り貴族子息の断罪の為に穏やかに目を閉じた・・・
.