焔と渦巻く忍法帖 第十九話

「続きだ。失敗した人達の処分を表向きは寛大にしてはいるけど、結局大失態を犯した人間にそのあとの生活ででかい顔をさせたら結局罰を与えていない物と同じ事になる。だから履歴書って存在がある、こいつらは公爵邸で粗相をした。だから雇うにしてもそれを念頭に入れろ、ってな」
「・・・っ・・・」
遠回しな体裁を気にしての罰の与え方、貴族としてのやり方は陰湿と言える物。例え雇うにしても公爵の声は確実に解雇しろと後々にかかることは間違いないので、職場としても門前払いする以外にはどうしようもない。
最大限の譲歩と体裁、それを批難しようにもその原因は他でもない自分。反論の芽が摘み取られているが故に、修頭胸は言葉を吐き出せず息しか飲めない。
「そんな職にありつけない人達の現状、そこで出て来る問題が・・・さっき言った遺族、だってばよ」
・・・ここでナルトは本題を明かす為に、雪原を思わせる程寒い声色で修頭胸を脅かす。



・・・これが修頭胸の心を壊し続ける煉獄になる、そう思いながらナルトは真実を述べていく。



「職にありつけない、食べ物が食べれない、家族を養えない・・・一つの出来事から負は連鎖する・・・そんな人達の中には人生に諦めて自殺をしたり、路頭で迷って野垂れ死にしたり、キムラスカから消えて新天地を目指そうとする人がほとんどの割合を占めていたってばよ」
「・・・占めていた・・・?どういうこと、それ。まるで見て来たみたいな言い方・・・」
「みたいな、じゃないってば。見て来たんだよ、実際」
「!?」
予想ですらない確定事項。現実味に満たない話を信じれていない修頭胸を信じさせるよう、ナルトは強く強く言い切る。
「俺らはこの履歴書を手に入れた夜、履歴書に書かれていた住所や故郷に手分けして影達に行方を探させたんだってばよ・・・酷かったなー、行った場所にその人や家族がいないのは当たり前。辛うじて得られた情報は今言ったようにとっくに死んでいるか、行方不明。その中での消息が分かった人達も見るも無惨な程落ちぶれた生活をしてたってば、まさかこの人達がこんな大きな屋敷の警備をしてたのかって信じられなくなるくらい死んだ目をして。まともな生活してる人達なんて一人もいなかったってばよ」
「・・・・・・そんな・・・・・・嘘、嘘よ!?そんなこと!」
・・・今更ナルトが嘘を言う訳ないだろう、現実逃避もいい加減にしろと言いたそうな顔をしている公爵はとうとうナルトの胸倉を掴み鬼気迫る様子で否定しろという修頭胸を冷めた瞳で見ている。



国から事実上見放された人間の末路など知って気持ちいい物ではないが、見放されるという可能性を全く考えていない修頭胸は愚かだと同時にどこまでも経験不足でしかない。

事情もしっかりと理解している身でクビを切られて屋敷から職無しで放り出されたという事は、退職金といったお金すらもらえずそれまでの稼ぎで食いつながなければいけないことになる。そんな経済状況の危機に職場への手回し、大半の人間が一気に存亡をかけた策を考えねばならなかっただろう。もちろんそんな中には家族を持っている人もいる、焦りも尋常ではなかったことだろう。

・・・だが世間は無情である。そんな必死さを受け入れる職場は都合よくあるはずもなく、経済状況の芳しくなかった年若い兵士や家族を持つ兵士などからどんどん死んで行った。行方不明となっている人達は道を踏み外していなければマルクトやダアトなどに亡命し、そこまで行く路銀の工面がつかなかった者は野垂れ死にしているか最悪野盗へと身を落としているだろう。



それこそ末路は人の数だけある。だがその悲惨な現実を巻き起こしたのは目の前の兵士崩れ。

・・・その現実を一端だけでも無念さとともにくれてやる、ナルトの行動はただ早かった。










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