焔と渦巻く忍法帖 第十九話

「・・・ティア・グランツよ。お前は兵士の解雇という私の決断をするに到らせた最もたる原因。そのお前に私を批判するのはお門違いもいいところだ」
「わっ、私が原因だなんて・・・」
「お前は譜歌を持ってヴァンを殺す為にこの屋敷に入ったと言ったな?成程、貴様は確かにそれ以外目的が無かったというのはよくわかった。しかし屋敷を警護していた兵士はそういった個人的な事情でヴァンを殺そうとした貴様を入れる訳がない。そう考えたから譜歌を使って兵士を眠らせたのだろう」
「は、はい・・・」
呼称がお前から貴様に格下げされ、明らかに好意を持たれていないそれに圧されながら修頭胸は馬鹿で正直に答える。
「それを鑑みれば屋敷の警護は白光騎士団にしてみれば通常にして重要任務だ。いかに譜歌を使われたとて易々と屋敷に侵入されたら、その警備体制の甘さと侵入された責任を併せて問わねばならぬ。この場合どちらが正解なのだ?兵士が愚かだったというべきか、貴様の侵入技術が高かったのか、どっちなのだ?」
「そ・・・れは・・・」
極めて答えにくい質問、相手が無能か自分が白光騎士団より有能と嫌味にしか取れない答えを返すか。攻める公爵の答えに窮する修頭胸に、ナルトはしっかりと追撃をかける。
「まぁどっちにしても愚かだってばよね。自らの磨き上げた譜歌やダアトでの兵士として鍛え上げた力を自分の兄弟の為に人を巻き込んで使ってるんだから・・・それで・・・えっと、確かねぇちゃんってユリアの子孫って戯言言ってたってばよね?それで自分の譜歌がユリアの譜歌だって。それ考えたらねぇちゃんの技術が高いんじゃない?だって由緒正しいユリアの譜歌なんだから」
「!」
続いたナルトの口撃は無駄に自尊心だけは高い修頭胸のそれを逆手に取った、根幹を揺るがす事実を叩きつける。
確かに修頭胸は自らをユリアの血縁といい、譜歌もユリアの譜歌と言った。それは普通の譜歌とは違うとも。
自分の方が有能だと流れが傾きかけていると感じたのか、意味のない焦りで修頭胸は顔が引き攣る。
「・・・どちらにしても原因は貴様だ。いや、どちらかと言えばユリアという名が付く分お前にはその名を汚した責がある・・・それはヴァンも同様であろうがな」
「・・・っ!」
そこで公爵の愚昧兄妹達への痛烈な言葉、修頭胸は唇を噛んで視線を反らす。



が、責める種はまだ残っている。この程度で終わる気は更々ないナルトは公爵の後を引き継ぐよう喋り出す。
「分かるってばよね?自分のやった事の重さが。ねぇ、ねぇちゃん?」
「・・・・・・確かに私は兵士の人達に迷惑をかけたから謝らなければいけない、それはわかったわ」
「でもただ謝罪するだけで問題は解決しない、それじゃ遺族は納得しないってばよ?」
「・・・えっ?」
ナルトから話し掛けられ自らの過失を暗い様子で認めたという発言から一転、遺族という言葉にふっとナルトの方を振り向く。
「遺族・・・ってどういうこと?」
「あれ?想像出来なかった?王族の屋敷を警備していて、例え個人的事情だとしても、事故だとしても王族のルークを危険に晒しておいて解雇だけで責任を取れる訳ないってばよ。その解雇の後の生活ってどういう風になるか、聞いた事ない?」
「・・・いいえ」
遺族、そして事後の経過。ただならぬ雰囲気を醸し出す単語達に修頭胸はただ首を横に一回だけしか振らない。









11/35ページ
スキ