焔と渦巻く忍法帖 第十九話
「ぶざまだな、自身の想いに素直に動いてるはずが勝手に感情と理屈をつけられ方向性を誤った。もうちょっと利口だったならそれに気付いて、自身の取る道も選べたのにな。本当に単独でファブレに復讐する、結局こんな動揺で行動に起こせないようじゃと思いファブレから離れる、とかな・・・けど、もうお前らは何も選ぶ事は出来ねぇよ。ファブレで使用人を続ける以外にはな」
「なっ・・・?何故ですかルーク様、何故使用人しか選べないのですか!?」
もはや虫の息のフェミ男スパッツ、その感情を代弁するかのようルークにペールが激しく抗議する。
・・・さぁ、止めだ。全ての負の感情を持って、ルークはその罰に繋がる解けない鎖を読み上げていく。
「今言ったようにヴァンの髭は大罪と禁忌を犯した。そして俺達をはめようとしたダアトには大きな借りがある。そこで髭親父には俺達を欺こうとした罪科も併せて、ダアトを潰す為の役割を担っていただこうと思ってんだ。でだ、そこで役に立つのは出身の事だ。ホド出身・・・その言葉は本人から搾り出させれば世界に公表出来る。けど、それで髭親父がホド出身だったって言ってその前後でホドを治めていたガルディオスの生き残りが現れたら・・・どうなると思う、ペール?」
「っ!・・・それ・・・は・・・」
非の打ち所がないほど絶望的な道筋、それを存分に聞かされたペールはまずさに気付き言葉を無くす。
「名乗りをあげればまず出て来るのはホド出身である髭親父との関係を問う声、その流れで今まで何処に潜んでいたのかって問いだ。そこで知り合いだったってばれてみろ、嫌疑のかけられ方は半端で終わるはずがない・・・もしマルクトに戻ったとしても、ガルディオスの名を出す事は外向的にも内政的にもよく思われないって考えられて貴族として再び召し抱えられる事はまずないだろうな」
これから全ての汚泥をホド出身という事にプラスして、老け髭には被ってもらうのだ。ガルディオスという名を名乗ったとしたら・・・もはやガルディオスはかつての没落貴族として見られなくなる、世界を破滅に導かんとした犯罪者として永遠に名を連ねかねなくなるのだから。
「かといって改めて復讐しよう、なんて思われたらそれこそシャレになんねぇんだよ。和平結ぼう、和平結んだって状態になってるのにファブレが滅ぼされてみろ・・・せっかく預言を外そうとしてんのに、結果戦争に繋がったら話にならねぇ。動機としてもファブレが潰されたなら、ホド関係とキムラスカの貴族や民達は髭親父の前例があるからマルクトを責めて罵るだろうな。そこまで行ったらもう後は泥沼だ。どっちかが滅びるまで戦争は続く、どっちが勝っても戦争の爪痕を世界各地に大きく残してな」
「・・・・・・っ」
復讐の代償は避けられぬ二大国間の世界戦争、ルークから語られるそれは最悪の顛末。しかもガルディオスと名乗ろう物なら世論は圧倒的マルクトの不利に陥る。復讐の成功を前提で仮定しても、何一つとして有利になることはない。
ご老体のその身にはさぞかし選択肢の最悪さは答えるだろう。だがそこで更に虫の息になりかけていたフェミ男スパッツに現実を突き付ける為、その顔を掴みルークは額と額を優しい悪魔の笑みで合わせる。
「なぁ、俺言ったよな?俺はお前らを戦争を起こさせないようにした後、今の位置にいれるようにしてやるって。これはお前の望んだ状態だ・・・嬉しいだろ?」
「う・・・嬉しくなんか・・・!」
「嬉しくない?なら俺が今すぐ殺してやろうか?」
「!?」
その声は優しい、だが紛れなき本気の殺意に表情は更に追い込まれ引き攣る。
「全ての不安要素は廃除してやった、平穏に暮らせるよう配慮してやった。そして選択肢がお前らに残っていない事を俺は気付かせてやった。なのにそれを尚不満だって言うのは気遣ってやって行動を取った俺に対す宣戦布告だ・・・もう一度言ってみろ、不満か?不満じゃねぇか?」
「・・・・・・不満、じゃない」
もはや逃げる為の脇道など存在しない、最期の質問に全て力を無くした脱力した虚ろな声でフェミ男スパッツは生きる為にルークに合わせて来た。
礼儀を知らなかった、だからそれを教え込む。使用人として使えるよう一から教える気は更々ない。むしろ礼儀知らずのままでいい。何せ相手は殺そう、復讐しようとしていた人物だ。
しかしもうその相手は殺せない、しかも二度と離れるなと強制された、意に沿わぬ行動をすれば間違いなく殺すと。
・・・想像に難くはないが、心中は荒れに荒れるだろう。殺したいがそうすれば死ぬ、環境から抜け出そうとしても死ぬ。八方塞がり、逃げ道のない閉ざされた迷路・・・復讐も自由も何も見える事はない。
長い年月をかければ確実に壊れるであろう元貴族の使用人、その有様を想像出来るルークは満足感で胸一杯になっていた。
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「なっ・・・?何故ですかルーク様、何故使用人しか選べないのですか!?」
もはや虫の息のフェミ男スパッツ、その感情を代弁するかのようルークにペールが激しく抗議する。
・・・さぁ、止めだ。全ての負の感情を持って、ルークはその罰に繋がる解けない鎖を読み上げていく。
「今言ったようにヴァンの髭は大罪と禁忌を犯した。そして俺達をはめようとしたダアトには大きな借りがある。そこで髭親父には俺達を欺こうとした罪科も併せて、ダアトを潰す為の役割を担っていただこうと思ってんだ。でだ、そこで役に立つのは出身の事だ。ホド出身・・・その言葉は本人から搾り出させれば世界に公表出来る。けど、それで髭親父がホド出身だったって言ってその前後でホドを治めていたガルディオスの生き残りが現れたら・・・どうなると思う、ペール?」
「っ!・・・それ・・・は・・・」
非の打ち所がないほど絶望的な道筋、それを存分に聞かされたペールはまずさに気付き言葉を無くす。
「名乗りをあげればまず出て来るのはホド出身である髭親父との関係を問う声、その流れで今まで何処に潜んでいたのかって問いだ。そこで知り合いだったってばれてみろ、嫌疑のかけられ方は半端で終わるはずがない・・・もしマルクトに戻ったとしても、ガルディオスの名を出す事は外向的にも内政的にもよく思われないって考えられて貴族として再び召し抱えられる事はまずないだろうな」
これから全ての汚泥をホド出身という事にプラスして、老け髭には被ってもらうのだ。ガルディオスという名を名乗ったとしたら・・・もはやガルディオスはかつての没落貴族として見られなくなる、世界を破滅に導かんとした犯罪者として永遠に名を連ねかねなくなるのだから。
「かといって改めて復讐しよう、なんて思われたらそれこそシャレになんねぇんだよ。和平結ぼう、和平結んだって状態になってるのにファブレが滅ぼされてみろ・・・せっかく預言を外そうとしてんのに、結果戦争に繋がったら話にならねぇ。動機としてもファブレが潰されたなら、ホド関係とキムラスカの貴族や民達は髭親父の前例があるからマルクトを責めて罵るだろうな。そこまで行ったらもう後は泥沼だ。どっちかが滅びるまで戦争は続く、どっちが勝っても戦争の爪痕を世界各地に大きく残してな」
「・・・・・・っ」
復讐の代償は避けられぬ二大国間の世界戦争、ルークから語られるそれは最悪の顛末。しかもガルディオスと名乗ろう物なら世論は圧倒的マルクトの不利に陥る。復讐の成功を前提で仮定しても、何一つとして有利になることはない。
ご老体のその身にはさぞかし選択肢の最悪さは答えるだろう。だがそこで更に虫の息になりかけていたフェミ男スパッツに現実を突き付ける為、その顔を掴みルークは額と額を優しい悪魔の笑みで合わせる。
「なぁ、俺言ったよな?俺はお前らを戦争を起こさせないようにした後、今の位置にいれるようにしてやるって。これはお前の望んだ状態だ・・・嬉しいだろ?」
「う・・・嬉しくなんか・・・!」
「嬉しくない?なら俺が今すぐ殺してやろうか?」
「!?」
その声は優しい、だが紛れなき本気の殺意に表情は更に追い込まれ引き攣る。
「全ての不安要素は廃除してやった、平穏に暮らせるよう配慮してやった。そして選択肢がお前らに残っていない事を俺は気付かせてやった。なのにそれを尚不満だって言うのは気遣ってやって行動を取った俺に対す宣戦布告だ・・・もう一度言ってみろ、不満か?不満じゃねぇか?」
「・・・・・・不満、じゃない」
もはや逃げる為の脇道など存在しない、最期の質問に全て力を無くした脱力した虚ろな声でフェミ男スパッツは生きる為にルークに合わせて来た。
礼儀を知らなかった、だからそれを教え込む。使用人として使えるよう一から教える気は更々ない。むしろ礼儀知らずのままでいい。何せ相手は殺そう、復讐しようとしていた人物だ。
しかしもうその相手は殺せない、しかも二度と離れるなと強制された、意に沿わぬ行動をすれば間違いなく殺すと。
・・・想像に難くはないが、心中は荒れに荒れるだろう。殺したいがそうすれば死ぬ、環境から抜け出そうとしても死ぬ。八方塞がり、逃げ道のない閉ざされた迷路・・・復讐も自由も何も見える事はない。
長い年月をかければ確実に壊れるであろう元貴族の使用人、その有様を想像出来るルークは満足感で胸一杯になっていた。
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