焔と渦巻く忍法帖 第十九話

「んなしけた顔してんじゃねぇ。俺はそれは言う気はねぇよ」
「ほ、本当か!?」
ルークのその声にやはりと嬉しそうな声を出し、フェミ男スパッツはルークに勢いよく顔を向ける。
「あぁ」



「お前らがこの家で殺人や暴動なんかの騒動を起こさない事、この家の使用人を辞めない事が絶対条件だけどな」



「「!?」」
朗らかに緩んだルークの口から出た言葉は二人を凍らせる。
今、何を言ったのか。その宣告を明らかにすべく、ルークは更に口を開く。
「ガイ。お前は俺がこの家に来た時からすぐに俺に殺気を向けてたよな?あんな気なんて俺は向けられる覚えはねぇ、なにしろ全く初対面だったんだからな。俺とお前は・・・だから考えてみたんだよ、んな恨まれる覚えのない殺気を俺にぶつけるのはルーク様個人に対してか、それともファブレって家全体に対してか、ってな。まぁ実際すぐに答えは出たよ、ファブレ・・・この家全部が憎いから刃を俺に向けて殺そうとしたんだろ?」
「「!?」」
「確認するまでもねぇけど図星、だな」
答えを言われたのか一気に表情が引いて青くなる二人に、ルークは当然のように核心を突いたと話を更に突き詰めていく。
「もし仮に、ルーク様単体を殺そうってんなら殺した後の後始末がどうしても必要になる。自分が殺したってばれない為の後始末がな。けど屋敷の警護は厳重、普通の賊じゃ証拠も残さず屋敷に侵入なんてまず考えられない。そこで疑われるのはまず屋敷内で働く人達、それもルーク様の身辺に近かった者からだ。そこで自分が上手く候補から外れたとしても、残っている結末は何故ルーク様が殺されたというのに賊と対峙すらせずのうのうと生き残っているという叱責付きの国からの罰。職務怠慢で主を失った罪で相当数の首がはねられて、その中に二人の首も入る。そこまで考えれば個人を狙うメリットははっきり言えばないからな、どうあがいても首ははねられるし・・・けどファブレ自体が憎いなら話は別になる」
核心を突くルークの声は一段低くなり、それにつられフェミ男スパッツはビクッと体を揺らす。
「個人だけを狙うには弊害が多い上にリスクも高く、ルーク様が屋敷にいたとき子供単体を殺したいと思える程強い恨みを抱く出来事があったとは思えない。子供がやったことは所詮子供のこととお前が見れないで殺意を抱いているなら話は別だけどな。それにルーク様だけを殺したなら今言った通りすぐさま足がつくか、責任を問われてキムラスカに殺される事になる。ならどうすれば自らは罪に問われないか・・・?答えは一つ、屋敷にいる人間全て殺して火にかける。そうすれば死体は誰の物か判別しにくくなって、誰が家にいたのか曖昧になるからな。それに大体ルーク様を単体で恨んでいて屋敷の人間に愛着を持っているなら暗殺なんて手は使わない。なにしろ周りを巻き込むんだからな、自分の身勝手で。殺したいが巻き込みたくないという矛盾を敢えて成立させるつもりなら、自分が殺したって自白するか白昼堂々と誰かの目の前でその現場を目撃させる。それくらいしかやり方はねぇ。けどお前はご丁寧に逃走ルートまで既に割り出してる、そんな気がねーのは明らかだ」
「と、逃走ルート・・・?」
「廃工場、そういやわかんだろ?」
「!!?」
その名に何度目か知れぬ驚いた表情がフェミ男スパッツに現れる。



そもそもの話、バチカルで立入禁止に当たる廃工場。その存在だけなら知っている者は市民にも多々いるだろうが、外に繋がっているやもなどと一朝一夕にはすぐに思いつかないだろう。故にフェミ男スパッツは事前に廃工場に入れずとも、バチカルからの逃走ルートとして計算に入れていたのだろう。秘密裏にバチカルから消える脱出の方法の一つとして考え。



「坊主が憎けりゃ袈裟まで憎いなんて言葉があるけど、随分と恨んでんだな。ファブレを。けどこれからはキムラスカとマルクトの和平を成功させて世界を平和に導かなきゃなんねーんだ。そこでルーク様及びファブレに危害を加えてみろ。さっき言ったような目に合わせてやる」
もちろんそれ以上の目に合わせる事も考えているが・・・と、ルークは含みを入れて殺気を込めた瞳を送る。案の定ビクッとするフェミ男スパッツであるが、こんな人物にはきっかけを与えない。いや、与える気もルークにはない。
何故ならフェミ男スパッツからはナルトこそが嫌悪する匂い、復讐という匂いが漂っているのだから。






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