焔と渦巻く忍法帖 第十八話

お膳立てされた死刑台、そこから逃げるにはルーク達の言葉に従う以外に有り得ない。もはやダアトにすら不信感を植え付けられたインゴベルト達に、迷いなどなかった。



「わかった・・・誓う。もう預言には従わん、戦争にも踏み切らん・・・」
魂が抜ける前のようにぐったり頭を下げて出て来た言葉、それは一国の指針を自らの命の為に変えると我が身かわいさで曲げた物。
・・・堕ちた。キムラスカという国がはっきりとルークという個人に平伏した瞬間だった。
「公爵も・・・それでよろしいですね?」
「・・・うむ・・・」
一応の確認にとルークは隣のファブレ公爵にも確認を取る。だが確認を取るまでもなく公爵も同じように力無く頷いた。
「そうですか・・・皆さん、剣から手を離して下さい。陛下はダアトの傀儡となることを止めると決心なされました。後はより良い治世を行う為に話し合うだけですから、争う必要はありません」
「「「「はっ!」」」」
それは畏怖から来る信頼か、真の心酔か。ルーク達なら問題ないと信じて疑わない兵士達はすぐさま心を翻したインゴベルトを怪しむでもなく、剣から手を離して敬礼をする。
そこでルークは何かに気付いたようにある物を見てピクッと反応する。
「ナルト、結界解くから九尾に周りが壊れない程度にあれを退かさせてくれ。それと始末もついでにやってくれ」
「リョーカイ」
ルークの視線にあった先は紛れも無く惑星屑の死体・・・何が起こるのか?必然的に退かすだけでは終わらないのではないかと皆が視線を集中する中、ルークは印を組み結界・四神硬陣を解く。その瞬間、辺りをピリピリ包む純然たる殺気と強さを一瞬で体感させるチャクラが辺り一帯を包み込んだ。
皆が皆ルークとナルトを除いて意識を飛ばそうとするプレッシャーを感じながら冷や汗を流すと同時に、全員が同様の思いを抱いていた。
‘怖い・・・’
結界の中だから何事もなかったように皆が遠巻きに九尾影分身を見る事が出来たが、実際目の前にしてみればそこにいるだけでも殺されてしまうような威圧感がひしひしと感じられる。
そんな災厄と呼べる存在が何を・・・?恐々と九尾影分身に注目が集まる中、九尾影分身はナルトの横から体を動かさず、代わりに右足を前に出し関節など知った事ではないと惑星屑までゴムのように伸ばした。
「「「「!?」」」」
一同が最大限に目を見開くが、そんな事気にせずと更に九尾影分身はその右足を人一人飲み込む程拡大させて惑星屑の死体を握りあげる。
「火遁・炎獄棺」
そこに仕上げとばかりにナルトは印を組み終え炎獄棺を放つ。九尾影分身の手ごと焼き払わんばかりのその所業も、数秒もすればすぐさま炎は収まりを見せ消え去る。そしてダメージを見せない九尾影分身が手を開いた時は、惑星屑の死体は塵一つ残す事なく消え去っていた。
「モースの、死体が・・・」
「いつまでも死体と共にいたい訳ではないでしょう。首はまだ都合上片付ける訳にはいきませんでしたが、胴体はもはや本人かどうか判別するには値しないもの。略式ですが、火葬させていただきました」
呆然とするインゴベルトの声にいつの間にかルークはその眼前に屈んだ状態で姿を表し、苦悶の表情のまま死んだ惑星屑の頭に手を沿え見上げるように見下した笑みを浮かべる。
「さぁ、それでは話をしましょうか。預言を詠まないようにするとキムラスカが世界に示す為の話し合いを・・・」
「「・・・っ!」」
だからこそ戦慄をせざるをえなかったのだろう、今まで見たどの表情よりも生の感情を出したルークの顔を見た二人の表情は、大の大人が逃げ出したくて堪らないといったように恐怖とともに涙をボロボロと溢れさせていた・・・









最初から逃げる道などあるはずもなかった



矜持無き者の心など死神達は弄ぶに易い事



心の心臓を握り潰すかのごとき行為の前に、国は陥落を告げた






next story










17/18ページ
スキ