焔と渦巻く忍法帖 第十八話

瞬間、ナルトの横に白い煙がボンと音を立てて現れる。また何かが現れるのか?多少耐性の着いた面々はその白い煙が晴れるのを待つ。



・・・だが耐性など消し飛ばす、想像だに出来ない姿が・・・
『グォォォォォッ!!』
天地すら壊してしまう程の咆哮を放ちながら、それは煙を吹き飛ばして全貌を明らかにした。
「「「「!!!!!」」」」
・・・もはや驚きなどとの陳腐な感情を越えている、ただその姿を見てほとんどの者が見せた表情は無表情そのままだった。
それもそうだろう、人間は許容範囲内の具象に対して対処は出来るがそれを越えれば総じて思考は停止する。実際見た事はないだろう、ナルトの横にいる・・・九本の尾を生やし赤いチャクラを身に纏った狐らしきものなど。






口寄せ・・・ナルトの身に封印された九尾、そんな存在をナルトが召還用に口寄せ出来るのか?・・・答えは否、である。

ナルトが口寄せしたと言っている九尾は種を明かせば自らの影分身に九尾のチャクラを相当量引き出させて纏わせた、いわばまがい物の九尾だ。故に人より多少大きい犬程度のサイズとなり、結界の中に収まれている。もし木の葉の民がこの影分身九尾を見れば違和感にはすぐ気付くだろうが、九尾を聞いた事すらないこの世界の住民ではそんな差異に気付けるはずもない。故に脅迫の材料に使う事にしたのだ。

しかしこんな芸当を軽くこなせるのも、ひとえにナルトが九尾を凌駕せん強さを単体で持っているが故だ。全身の形態が変わる程九尾のチャクラを身に纏っている影分身、だが影分身九尾は自我を失わずナルトやルークに襲い掛かろうとはしていない。これはナルトの意志が遥かに勝っているという証拠だ、九尾のチャクラのもたらす破壊衝動を抑えているという。現にナルトは冷や汗一つかかず、平然とした表情のままだ。






「陛下、公爵。九尾のお姿を拝見した感想はいかがですか?」
無表情のまま思考を停止させていたインゴベルト達に、ルークは結界の中から意識を取り戻させるべく話し掛ける。
「・・・っ!ま、魔獣と申すがそのような者何故手なずけておる!?」
その声に意識を戻したインゴベルトは改めて九尾影分身を見て顔を土気色に変えて経緯を言えと命じて来た。
「手なずける?違いますね、ナルトは飼い馴らしているんですよ。九尾を」
「!ヒッ・・・」
魔獣を傍らに余裕を持った笑みはさぞかし妖しく恐ろしい物だったのだろう、笑み一つにインゴベルトは引き攣った声を出す。もはや虚勢すら張れない、滑稽な姿を見て上出来だと感じたルークは仕上にかかる。
「さて・・・先程の続きですが、お二方にはもう預言に頼った政治をしてほしいとは思っておりません。そこで先程出て来た預言と大詠師一派のダアトを信じないと言われた言葉、その言葉を言質として私は宣言します。もし言葉を違えマルクトとの戦争に踏み切るというのであれば・・・九尾に暴の限りを尽くさせます、この城が跡形も無く消し飛ぶまで」
「「!!」」
まさかの宣告は国の崩壊を招く壊滅宣告。二人は声を無くす。
「預言により戦争を仕掛けねばならない、すなわちそこで死んだ命は摂理だ・・・そんな風に陛下達が心の奥底で考えられていても、私達にはそれを知る術もありません。故に貴方方にも心に刻んでいただきたいのです、そのような行動を取った場合九尾に殺されるのは因果、なのだと」
そこでルークは会話を止め、影分身九尾を見て口を動かす。
「先程の咆哮・・・あれ一つ取っても九尾の力は絶大です。結界の中で出していなかったらここは既に倒壊してもおかしくはありません・・・一瞬でね」
「っ・・・!」
射殺すように鋭い視線を最後に送る。ぞくりと粟立った様子を見せるインゴベルト、そしてルークはとどめの言葉を放つ。
「これが私のルーク・フォン・ファブレとしての最後の頼みです。大詠師はもはや死に行く者の気持ちすらも汲み取る事が出来なかった為にナルトが手にかけましたが、お二方にはそのような事がないと思われます。先程の気持ちに偽りがなければ預言を排すると宣言されてください。ですが出来ないというのであれば・・・革命がその瞬間、始まります。私と彼らの手によって・・・」
今度は兵士達に視線を向ければ鞘に納めた剣に再び手をかけていた。もとより兵士達が求めているのは預言絶対体制の改革、そしてルークに心酔している彼らからすれば王の命すらも覚悟一つで奪う事が出来るくらい決意は固かった。









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