焔と渦巻く忍法帖 第十八話

「見苦しいですよ、大詠師。人に死を強要しておきながら何故自分の身だけを可愛がる。・・・知らないのですか?因果応報という言葉を」
「因、果・・・?私は何もしておらん!私は・・・!」
「ナルト」
あがきにもならない預言を口に出そうとする惑星屑、だがルークの一声に続こうとした癇ざわりな声が止まる。
「あっ・・・がぁっ・・・」
何が一瞬の間に起こったのか過程はルークを除いて見る事も出来なかった、だが結果は今ナルトの右手が惑星屑の喉元を掴んでいるというのは確認出来た。喉に食い込む指に手をかけもがく惑星屑だが、運動不足で脂肪の塊の中年一人の力で振りほどく術などあるはずもない。どんどん顔色が青く染まっていく。
「人を殺すなら自分も殺される覚悟、それもない奴に殺される事ほど不様な事はないんだってばよ?自分は殺されないし恨まれない、だって預言があるから。自らは血に濡れる生臭い戦場に足を踏み入れすらしない、人を自らの手で殺した事もない人間・・・そんな人間に死んで当然なんて言われる言われは全くないってばよ」



少なくとも普通の感覚を持つ者で戦場に踏み入れた事があるなら分かることだ、人の死はあっさりと訪れはするが人は生きたいと必死にあがいて戦っている事を。木の葉の忍の最高責任者である歴代火影も様々な戦場で血生臭い戦いを経て火影という地位につくことが出来た。その経験があったからこそ木の葉の火影として信頼も生まれていた。もし歴代火影が血も死も見た事もない青二才が務めていたなら、瞬く間に里を蹂躙されどこぞの里に吸収されていただろう。

人の死は望めるなら避けるべき、だが平穏な日々を脅かすなら殺す事もいとわない。何故なら里を脅かす敵も多様な思想を持って、覚悟を決めて殺し会いを挑んでいるのだから。だからこそ幾多の戦場を経験した火影の判断は里を守る為重い決意があり、言葉がある。故に里は火影の元で繁栄を築いて来た。

しかし惑星屑の行動は主体性という物が全くない、人の死も何も経験していない。覚悟すら預言に丸投げしたその言葉はただ軽かった。



・・・ナルトは無感情に言葉を終えると、そのまま握り潰すかと思われた手をパッと離す。
「ゲホッ、ゴホッ、ガハッ!・・・ハァハァハァ・・・」
「さぁ預言無しで自分の言葉で兵士の人達を説得してみろよ。じゃないと今すぐ兵士の人達に殺されんぞ?」
地べたにへたりこみ喉を抑え息を整えようとするが、ナルトは背後に回り込み首筋を掴むと兵士の顔を強制で見るよう固定する。
・・・かつてない緊張が謁見の間に張り詰める。言葉一つ誤れば自分も死ぬかもしれない、そして動きのあまりの鋭さにナルトに手出しも出来ないと感じているのだ。三人に声は全く出て来る事はない。
「早く言えよ、背中・・・押してやるってばよ?」
そこで兵士全員の殺気を補ってもあまりある殺気がナルトから溢れ出す。それと同時にゆっくりと惑星屑の体がナルトにより持ち上げられていく。
「はい、全員剣を構えて~。そっちに投げるから」
恐ろしい呼びかけに、兵士全員一斉にナルトより弱いが脅しではない純然に殺そうとする殺気とともに剣を鞘から抜いた。瞬間で惑星屑の顔が痛みを忘れて引き攣る。
「まっ、待て!わかった!謝る、謝るから剣を納めてくれ!」
「ふーん、どんな風に謝るか言ってみろってば。剣を納めんのはそれからだ」
焦りを感じたのだろう、その場の雰囲気に勢いでだけ謝罪しようという軽さが見えている。一応聞こうという姿勢でナルトは惑星屑から手を離す。ひとまず自由の身になった惑星屑は焦りで顔を歪めつつ、早口でまくし立てていく。
「す、預言と知らせずアクゼリュスまで行かせて悪かった!だから詫びとしてダアトの名の元、お前達の生活を保護するよう手続きをしてやる!死の預言が詠まれていたという事実もこの場にいる陛下達との間の秘密にしてやる!だから剣を納めてくれ!」
・・・出て来た言葉は謁見の間にいる全ての人間を凍り付かせた。それもそうだろう、内容は謝罪ではない、未だ上の視線から見た取引という名の押し付けだ。更に預言という自らのアイデンティティでもある存在を捨て去ってまで、自分の命を恥も外聞もなく取ろうとした。
覚悟すら出来ず命にしがみつくのはもはや醜くて仕方ない、修頭胸ですら目を伏せて許せと兵士に目で命じている惑星屑を見る事をやめている。



預言というよりどころすら命を前に呆気なく手放した。情状酌量の余地など元よりなかったが、ここまで保身に走る姿を見せられナルトに我慢する気など起こるはずもなかった。








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