焔と渦巻く忍法帖 第十八話

「周りにいる兵士の皆さん、これだけ私達のお話を聞きどちらに理があると思いますか?一歩間違えれば大詠師は預言の名の元、今この場にいる貴方方ですら死地アクゼリュスへとためらいもなく送り出しているのです!その証拠をお聞かせしましょう!」
今度は揺れに揺れている兵士諸君に威風堂々と声をあげ、ルークは手元にテープレコーダーをポケットから取り出して再生のスイッチを押す。
・・・誰もが何一つとして容易に動く事の出来ないこの状況、テープレコーダーの存在を消そうと動く人影などない。そんな中で一連の流れ全てを編集せずに入れたテープが見目悪い姿の惑星屑の声とともに回り始める。









・・・そして全ての内容を明かし終えたテープが役割を終え、停止する。その時の三人の雰囲気たるや、魂が消し飛ばさんばかりの勢いで目を見開き瞬き一つ出来ず小刻みに震えている・・・これは事実上、殺されても全くおかしくない状況。王が民を見捨てている、信者を教団が見捨てている。そう発言している証拠をはっきり出されているのだ、いつ切り掛かられてもおかしくはない。殺気で語られているのだ、きっかけ一つでそうなると。



そんな中で更にルークは押し込むよう、煽りを入れていく。
「お分かりいただけたでしょう、この場にいる貴方方も死ぬと預言に詠まれていたなら何も告げられる事なくアクゼリュスへ送られていた!いや、アクゼリュスへ送られなくともマルクトとの戦争で死ぬと預言に詠まれたなら大詠師はためらいなく死地に送り出します!死ぬと詠まれた兵士を助ける事もなく、あまつさえそれが当然の事だと!貴方方はそれが正しいと言えますか!?自らが知らぬ内に死地に赴く事を命じられ、死しても路傍の石を見るよう心にさざ波一つ立てない人間の思惑に躍らされる事が!?」
右へ左へと大きく動き、胸に手を当て体を曲げたかと思えば悲痛な顔でいきなり兵士達へ直に視線をやって大きく手を振って理解してくれとアピールをする。大袈裟ともいえるオーバーアクションで悲劇的に見せながら精一杯の声でルークは兵士に訴えかける。



・・・文字通り、役者が違う。これが悲劇を題材とした演劇なら客席からは同情の視線を総浚いするだろう。それほどに惚れ惚れするほど、ルークの演技は堂に入っていた。だがルークは悲劇を演じてはいない。



「・・・皆さん、この場だけ剣を捨てていただけませんか?私もアクゼリュスに派遣された皆さんも、貴方方と争いたくはありません。ですがもし、向かってくるというのであれば容赦はしません・・・」
周りから見れば悲劇だろうが、ルークとナルト達からすればこれは立派な喜劇である。‘ローレライ教団崩壊、預言の罪の実態’という名の。
実際ルークは楽しくてしょうがないのだ、手駒を全て奪われ見苦しい苦しみの姿を見せる惑星屑の様子が。演技上では微塵もそのような様子を見せず、戦いたくないと示し悲しげに声をあげているが。
‘ガシャッ、ガシャガシャッ’
そのルークの声に、次々とその場の兵士全員が鞘ごと剣を床に放り投げる。一瞬のためらいこそ何人かには見られたが、ほぼ同時のタイミングに投げられた事からルークの言葉に思う所があってこちらとの争いを放棄したのだろう。それほどルークの演技が絶大な効果を発揮したのだ、人の根幹の信頼を惑星屑の元から引き寄せる程に。
「おっ、おい!剣を捨てるな!貴様ら、私を見捨てる気か!?」
誰が敬意を見せもしない偉ぶるだけの他人に命をかけようか、より自らの命に危機を感じた惑星屑の必死な命令が出されるが誰一人として剣に手を出そうとはしない。



・・・さぁ預言の威光は死を命じられた兵士には聞かない、同じく軍や国の最高峰の指揮者の言葉も共犯という事で届くはずがない、そしてわずか守ってくれるだろう兵士ですら守護を放棄した。
もはや惑星屑の元には頼れるものなど何もない。惑星屑はそのことを否定するよう、ただ兵士に剣を取るように命じ続けている。



(さぁそろそろ幕を引く時間だ。クライマックスはテメェに担わせてやるよ、色鮮やかにな)








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