焔と渦巻く忍法帖 第十八話

・・・そもそもの問題からして、惑星屑はキムラスカ『だから』ここまで肩入れをしているわけではない。『たまたま預言に詠まれていた対象がキムラスカ』、それだけの問題であちら側についているだけだ。対象が仮にマルクトであったとしたなら、結果など考えるまでもない。預言に出た言葉、ユリアの遺志とやらに大義名分を掲げマルクトに今のように我が物顔でいたことだろう。

結局の所、預言の威光をかさにきた上でダアトを絶対的優位につかせたいだけなのだ。惑星屑を始めとする預言保守派、言い換えれば遺物にしがみつくコバンザメのようなおこぼれを狙う者達は。預言を繁栄させた裏では自らの利になるよう、全く自らの手を汚さず他を利用する狡猾さ。これでは預言通りキムラスカがマルクトを蹂躙した後、預言だと言えば都合のいいこと悪いこと吹き込めばキムラスカを傀儡とした実質のこの星の支配者となることすら不可能ではない。いや、既に惑星屑はそのつもりだ。でなければここまで導師を無視した発言を繰り出せはしない、例えレプリカだと知っていても。



(神の使徒とでも思ってやがるのか・・・ヘドが出る)
虎の威を借りた狐、とはイメージしてはいたがここまではっきりと醜悪な姿を見せられ心穏やかでいられるほどルーク、そしてナルトは優しく心の広い人間ではない。そこまでの力も知恵もカリスマも財力すらも、全ては預言。その一つが全て惑星屑の環境にあっただけのことだ。
(全部預言も何も関係ない場所に引きずり出してやっから、等身大のテメェであがいて見せろ。そして)



「死ね」






言葉に出さない最高の殺意を心で口にする。どうせこれからの流れは分かっている、ルークが猪思考姫の反応を楽しみ終え惑星屑を冷めた瞳で睨みつける。
「・・・ええい!預言だとわかったからなんだと言うのだ!所詮貴様らは預言にはいらんものだ!陛下、奴らの捕縛の命令をお出し下さい!」
「・・・うむ」
この手の小悪党は都合の悪い言葉はすぐに大きい声で事情を知る者の抹殺を謀る。例にもれないパターン、インゴベルトはその言葉に自身で決心をつかせ重く口を開く。
「城の中の兵と外の兵、すぐさまこの者達を捕らえるように集めよ!」
「・・・はっ!」
王命として出された言葉は入口近くに待機していた兵の耳に届き、様々な事実を明らかにされた兵は動揺からその一言で気を取り直し扉へと向かう。その行動に自称正論者達が何を考えたのか、各々の武器を取り出し入口へと重心を移動させる。・・・どちらの行動も無駄、ルークはそう思いながら別の言葉で双方の行動を止める。
「いいですよ皆さん、出て来られても」
ルークの言葉は何かの魔法にかけられたかのように、互い思い思いの行動を取っていた面々の時間を止める。とはいっても単純な興味及び疑問を引くよう、一瞬だけ足を止めさせる為の意味深な言葉というだけのこと。だが時間はその一瞬だけ止めれればルークにはよかった。
‘ゴォォォォォォ’
謁見の間の扉がまだ誰も開け放っていないというのに、重い音を立てて開いていく。誰かがまた来た・・・皆が扉から出て来るのは誰かと注目していると、そこから現れたのは今呼び出そうとしていたキムラスカの甲冑をまとった兵士達であった。
「・・・お、おぉ。ちょうどいい!そこにいるのはキムラスカに恐れ多くも反旗を翻した愚か者どもだ!陛下の命令も出ておる、そやつらを捕らえろ!」
いきなり現れた大勢の兵士の姿に、いち早く都合のいい展開にしようとしている惑星屑が声を上げて捕縛を命じて来た。いきなりの兵士の来訪、絶望的戦力の差に一歩下がり緊迫感が増す同行者達。
・・・修羅場を覚悟する面々、だがその場から動いた兵士達はルーク達には全く剣を向けずにルーク達の左右に広がるように走り出す。
「・・・え?」
戸惑うたのは誰の声かはどうでもいい、場にいるほとんどの面子が同じような顔をしているのだから。
「な、何をしておる!?こやつらを捕らえんか!」
自分の命を聞けと傲慢に言い付けるが、惑星屑の言葉に従う兵はいない。代わりにインゴベルト達の前に、ルーク達を守るよう兵士達は布陣を敷く。
「何のつもりだ、貴様ら!?」
「彼らは私が招いたのですよ、大詠師」
行動の意に沿っていない兵の行動に怒りっぱなしの惑星屑に、ルークが招待したのだと明かす。
「貴様が・・・!?何故貴様の兵のようにこやつらは動く!」
「貴方への制裁の為ですよ」
「・・・!?」
瞳と共に冷たく落ちた音、がなりたてていた惑星屑は前ここに来た時と同じ威圧感に圧され怯えるように声を口の中に戻す。
・・・だがルークから出て来た声とその内容は以前とは比べ物にならぬほど、惑星屑に衝撃を与えた。



「彼らはヴァン謡将に殺されるはずだった先遣隊の兵士達です」









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