焔と渦巻く忍法帖 第十八話

「・・・ですが、この場ではアクゼリュスに参る事の出来なかったルーク様には報告は出来ません。話は引き続きルーク・フォン・ファブレとして、最後の活動という意味合いを持たせるために私が行わせていただきます」
「待たれよ。貴様が本物のルーク様でないのはわかった、ヴァンが良からぬ事を企みルーク様をかどわかしたのも理解した。だが私達が求めているのはそれだけではない、本物のルーク様であるこちらのお方がアクゼリュスに向かわれたのかということだ」
話を立て戻しいざ弁舌を振る舞おうとした矢先、惑星屑が体勢を立て直したように横柄に自信をこもらせた声でルークを止める。そう来るかと思うと同時にすぐさま貴様呼ばわりの順応の早さに、ルークに対しても『ルーク』という名前に対しても敬いの気持ちが一片も感じ取れない。所詮立場云々ユリア云々預言云々以外で人を見れない有象無象では、本気で誰か生きた人間に敬意を抱いた事はないのだろう。
「もちろん足を踏み入れてはおりません。ダアトから救出し、グランコクマを経由してバチカルに戻って参りましたのでアクゼリュスに寄る時間はございませんでした」
貴様呼ばわりには一切触れず真実のみを告げる。



「そうか・・・ならもう一度アクゼリュスに向かってもらいましょう、陛下。本物のルーク様を引き連れていただいて」
「「「「!?」」」」



・・・予想以上の返答が出て来た。流石にこればかりはインゴベルト、ファブレ公爵含め同行者も一同ア然とした目で惑星屑を凝視している。もっとも、流石のルーク達はこの流れを読めない言葉が出て来る事を読んではいたが。
「お話は聞いていましたか?大詠師。事実は周りにいる人達ももうお分かりでしょうが、ヴァン謡将が帯同した兵士を襲ったのは大詠師の指示によるものです。キムラスカの民を蹂躙せん指示を出したあなたが何故もう一度アクゼリュスへなどと申せるのですか?」
「黙れレプリカごときが!これは預言に読まれた事、ルーク様がアクゼリュスに向かわねばユリアの意志に反する!兵士達にも死の預言が詠まれていた、これはユリアの意志だ!ユリアの意志を私は守ろうとしているに過ぎん!」
「・・・っ!」
本性を表した惑星屑が正論をもってして切り崩して行くルークの声に、遂にがなり声を上げて預言という大義名分を前に押し出す。もはや自らの考えには正論など思い浮かばなかったのだろう。だが預言とはっきりと出して人殺しを正当化する声に、インゴベルト達ですら援護に入らず声を苦い顔で押し殺している。
「陛下、今すぐルーク様とイオン様以外を捕らえるよう命をお出し下さい。彼らは預言をよしとしない愚か者達です」
「う、うむ・・・」
更には強引に反逆者の濡れ衣を着せようと、流れを自分本位に引き寄せようと有無を言わせずインゴベルトに勢いよく声をかける。テンションに差があるインゴベルトは歯切れの悪い了承で返したが。



・・・大分不利に見えるこの状況、インゴベルトの一声で捕縛の声がかかる。それだけ考え、同行者達の身が怯えで震えている。もっとルーク達は微塵も恐怖心を抱かず堂々としている。むしろ楽しみでしょうがないのだ、捕縛の声がかかる瞬間が。

否応なしにその瞬間を全員が待つ・・・が、一人また空気を読まずにルークの前へ足を出した。その人物が目の前に現れた事で、ルークは少し意外そうに目を瞬かせる。



「お父様、そのような言葉に惑わされないでくださいまし!アクゼリュスの救助は無事終わりました!もう一度アクゼリュスに行く必要などありませんのよ!?」
猪思考姫が父親相手に、情で訴えるように必死に声を張り上げる。しかし拙い、預言を果たす為に見捨てた娘の声を一々取り上げるなどとそんな希望を抱いてどうなるのか。いや、希望という考えはないだろう。自分の声は絶対に取り上げてくれると、信じている声だ。
しかし娘を見捨てたのはれっきとした事実、そして場には惑星屑がいる。絶対に声を聞き入れはい終わり、で終わるはずがないのは火を見るよりも明らかだ。ルークは面白くなりそうだと、いらぬ口を挟まない事にした。











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