焔と渦巻く忍法帖 第十八話
「ヴァン謡将・・・ですか?・・・その点で是非お聞きしたいことが大詠師に一つあるのですが」
「な・・・なんでしょうか?」
途端不穏に落ちた声色に惑星屑の顔により一層の汗が滴る。
「先遣隊に派遣し、ヴァン謡将に同行した兵士がヴァン謡将に襲われました。アクゼリュスに来た私は謡将の行動に感づきこれはキムラスカに仇を為す物と判断して捕縛いたしましたが、謡将の凶行はダアトの総意として捉らえてよろしいですか?」
「なっ!?そ、それは・・・!」
思わず体を後ろに反らした惑星屑は言い訳を募ろうと二人を見ようとするが、すぐさまルークは畳み掛ける。
「もっとも謡将の行動を正当化しようというなら、無駄ですよ。彼ら六神将が誰の配下で、どういう意味でこの場にいるのか・・・それは理解出来ない大詠師でもないでしょう」
「「「~~~っ!」」」
暗にではなく直接に近い表現を出され、三人の表情が一気に曇る。流れから既に知られていると見られても全くおかしくない言葉を出した。だがここではっきり同じ所ばかり攻めてもすぐさま状況はルークの思うように好転はしない。動揺収まる事のない三人に、更なる事実を告げる。
「とはいっても、私にとっても貴方方にとっても予想外の事をヴァン謡将は起こしていました。とても衝撃的な事を・・・これは実際見ていただければ分かります。前に出ていただけますか?本物のルーク・フォン・ファブレ様」
「「「「!?」」」」
後ろを振り向き有無を言わさない視線で煙デコを呼ぶルークの耳に、衣擦れの音や鎧のカチャッという音が辺りから聞こえてくる。信じるにはあまりに衝撃過ぎるそれは改めて前に出て来た、緊張していると見られる煙デコがその言葉を真実へと加速させる。あまりに姿だけは双子そのままの二人に、煙デコを見たキムラスカ側の人間は動揺を隠せなかった。
「さて・・・今言った通りこちらのお方が本物のルーク・フォン・ファブレに当たるのですが、私がこの事を知ったのはこちらの六神将の三人に会ったことからです。ヴァン謡将を捕縛した我々の前に現れたのは、ダアトの謀り事に荷担した六神将です。我々は彼らを制し、ヴァン謡将が発したある一言について質問をしました。‘レプリカごときに’と私に向けられた言葉のね」
「レプリカ・・・!?」
「そうです、大詠師。貴方ならご存知でしょう、配下であるディスト殿が研究されているレプリカ技術の実態を」
「・・・それは真か、モースよ?」
「は、はい・・・確かに知っております・・・」
それはそうだろう、レプリカのイオンの事実を知っている惑星屑がレプリカ技術を知らないなどありえない。だが混乱しているにしても禁忌の技術、レプリカ技術の存在をあっさりと認めるのは浅慮極まりないだろう。もっともシラを切っても、話は止める材料にはならないが。
「ディスト殿の話によればローレライの力、つまり超振動を目当てにレプリカである私をディスト殿に命じて作ったとのこと。表向きは預言に忠実に従う主席総長の姿を保ち、裏では力欲しさに預言すら欺こうと私という身替わりをファブレに置いた。これがヴァン謡将の真実だと、私達に協力を申し出てくれたディスト殿の言葉です。本物のルーク様はダアトの奥深く、ヴァン謡将率いる神託の盾一派がいた地にて軟禁されていました。話を聞いた私は本当のルーク・フォン・ファブレである彼を助け、バチカルに戻って来た次第です」
かしずいて煙デコに礼を取るルークは正に臣下のよう、というよりは完璧なイメージ作りだ。
「本物のルークがいる、そして歪んだ理由で私を作ったヴァン謡将・・・正直な所、私はファブレの名に未練がないわけではありません。ですが歪んだ思考に屈したくない事、ルーク様が不当に意志をねじまげられていた事。二つを思えば私はファブレの名を名乗れなくても後悔はしません、私はルーク様にファブレの名をお返ししてこの身を引かせていただきます」
礼を解き三人に向き直って強く、はっきりとした声で宣言をする。意志を燈した声は煙デコを真摯に思ってその地位を譲っているように見える。しかしそれこそが目的、ここで国のトップの国王と実の父親がいる場で宣言している事。これこそが重要なのだ。
・・・これから起こす惨劇から、スムーズに煙デコをルーク・フォン・ファブレに戻す為に・・・
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「な・・・なんでしょうか?」
途端不穏に落ちた声色に惑星屑の顔により一層の汗が滴る。
「先遣隊に派遣し、ヴァン謡将に同行した兵士がヴァン謡将に襲われました。アクゼリュスに来た私は謡将の行動に感づきこれはキムラスカに仇を為す物と判断して捕縛いたしましたが、謡将の凶行はダアトの総意として捉らえてよろしいですか?」
「なっ!?そ、それは・・・!」
思わず体を後ろに反らした惑星屑は言い訳を募ろうと二人を見ようとするが、すぐさまルークは畳み掛ける。
「もっとも謡将の行動を正当化しようというなら、無駄ですよ。彼ら六神将が誰の配下で、どういう意味でこの場にいるのか・・・それは理解出来ない大詠師でもないでしょう」
「「「~~~っ!」」」
暗にではなく直接に近い表現を出され、三人の表情が一気に曇る。流れから既に知られていると見られても全くおかしくない言葉を出した。だがここではっきり同じ所ばかり攻めてもすぐさま状況はルークの思うように好転はしない。動揺収まる事のない三人に、更なる事実を告げる。
「とはいっても、私にとっても貴方方にとっても予想外の事をヴァン謡将は起こしていました。とても衝撃的な事を・・・これは実際見ていただければ分かります。前に出ていただけますか?本物のルーク・フォン・ファブレ様」
「「「「!?」」」」
後ろを振り向き有無を言わさない視線で煙デコを呼ぶルークの耳に、衣擦れの音や鎧のカチャッという音が辺りから聞こえてくる。信じるにはあまりに衝撃過ぎるそれは改めて前に出て来た、緊張していると見られる煙デコがその言葉を真実へと加速させる。あまりに姿だけは双子そのままの二人に、煙デコを見たキムラスカ側の人間は動揺を隠せなかった。
「さて・・・今言った通りこちらのお方が本物のルーク・フォン・ファブレに当たるのですが、私がこの事を知ったのはこちらの六神将の三人に会ったことからです。ヴァン謡将を捕縛した我々の前に現れたのは、ダアトの謀り事に荷担した六神将です。我々は彼らを制し、ヴァン謡将が発したある一言について質問をしました。‘レプリカごときに’と私に向けられた言葉のね」
「レプリカ・・・!?」
「そうです、大詠師。貴方ならご存知でしょう、配下であるディスト殿が研究されているレプリカ技術の実態を」
「・・・それは真か、モースよ?」
「は、はい・・・確かに知っております・・・」
それはそうだろう、レプリカのイオンの事実を知っている惑星屑がレプリカ技術を知らないなどありえない。だが混乱しているにしても禁忌の技術、レプリカ技術の存在をあっさりと認めるのは浅慮極まりないだろう。もっともシラを切っても、話は止める材料にはならないが。
「ディスト殿の話によればローレライの力、つまり超振動を目当てにレプリカである私をディスト殿に命じて作ったとのこと。表向きは預言に忠実に従う主席総長の姿を保ち、裏では力欲しさに預言すら欺こうと私という身替わりをファブレに置いた。これがヴァン謡将の真実だと、私達に協力を申し出てくれたディスト殿の言葉です。本物のルーク様はダアトの奥深く、ヴァン謡将率いる神託の盾一派がいた地にて軟禁されていました。話を聞いた私は本当のルーク・フォン・ファブレである彼を助け、バチカルに戻って来た次第です」
かしずいて煙デコに礼を取るルークは正に臣下のよう、というよりは完璧なイメージ作りだ。
「本物のルークがいる、そして歪んだ理由で私を作ったヴァン謡将・・・正直な所、私はファブレの名に未練がないわけではありません。ですが歪んだ思考に屈したくない事、ルーク様が不当に意志をねじまげられていた事。二つを思えば私はファブレの名を名乗れなくても後悔はしません、私はルーク様にファブレの名をお返ししてこの身を引かせていただきます」
礼を解き三人に向き直って強く、はっきりとした声で宣言をする。意志を燈した声は煙デコを真摯に思ってその地位を譲っているように見える。しかしそれこそが目的、ここで国のトップの国王と実の父親がいる場で宣言している事。これこそが重要なのだ。
・・・これから起こす惨劇から、スムーズに煙デコをルーク・フォン・ファブレに戻す為に・・・
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