焔と渦巻く忍法帖 第十八話

「どういう事だモースよ・・・?お主がわしとクリムゾンに話があると申したのではないのか・・・?」
「いえ・・・私は公爵からルーク様についてお話をしたいことがあるから謁見の間に集まるようにとお聞きしたのですが・・・?」
「私が・・・?それは何かの間違いではないのですか?陛下が我らを呼ばれたと聞いて私はここに参ったのですが・・・」
三者三様に食い違った意見を出す面々はどういうことなのかと、平行線になっている会話を続けている。しかし何故そんなありえない証言と状況が揃っているのか?
‘ゴォォォォォォ’
会話の途中に、謁見の間の扉が重い音を立てて開いていく。何事かと散漫な会話しかしていなかった三人と近くに配置されていた数人程の兵士達の目が扉の方へ向く。そこから姿を現したのは・・・





(おーおー、随分と不様な顔してやがるな。おい)
悠然と歩くルークを先頭としたルーク達。ルークは静かに表情を抑えながら、幽霊を見たような驚きの顔になっている三人を見てカラカラと心の中で笑って歩いていく。
(もうちょっと上げてから落とすから気を失うなよ?せっかく舞台に上げてやったんだからな)
三人をこの場に集めたのはルーク、兵士に扮した影分身に嘘の召集をかけさせたのだ。‘ルーク様の事でお話がある’という内容を持って釣りあげたのだ、預言を壊しダアトを崩壊させるための場に。





「お久しぶりです、陛下」
「う、うむ・・・」
インゴベルトの前に来たルークはらしく丁寧に頭を下げ、再会の挨拶をする。だが声ははっきり喜びではなく、戸惑ってしかいない。預言を果たすはずの存在が今このバチカルにいることが不思議でならないのだろう。だがインゴベルトと残りの二人は気付けていない、ルークが木の葉の里での普段着に着替えている理由と声に潜ませた不遜な響きに。
「まずは報告から参ります。陛下から承りましたアクゼリュス救助の任、無事住民を救い出しマルクトに送り届け無事役割を果たさせていただきました」
「「「!?」」」
最初は小手調べとアクゼリュス救助の事実、だが打って響きすぎと言える程驚くその顔に顔をあげたルークは失笑しかける。
「ル、ルーク様・・・それは本当の事なのですか・・・?」
やはり真偽が気になるのだろう、脂汗を額に滲ませながら惑星屑がルークに問いただす。
「えぇ、何か問題でもあるんですか?大詠師?」
「う・・・そ、それは・・・」
与えられた任を完遂させただけのルークには責められる言われはない、自信に溢れた返答を受けた惑星屑は言葉をはけずに視線をあちらこちらに反らす。想定外の事態にどうにか落ち度を探せない物か、考えているのだろう。所詮そんなものだ、考えを放棄した人間が自分の思考を使おうとすればまともな言葉など出て来るはずがない。
「大詠師、マルクトも住民の救出を終えた事で満足しておられました。聖なる焔の光が鉱山の町へと向かう、とあった預言も無事に果たせました。何を悩む事がありますか?後はマルクトと同盟を結べば戦争も起こる事なく、自然と新たな平和という繁栄を呼び込めるでしょう。異論はあなたにもないはずですが?」
更に正論と向こうがほとんどの人間に明かしていない預言の闇を突いた話し方で、惑星屑を更に追い詰める。兵士達は平静を保っているように見えるが、ルークの話にそっと納得したように首を短く振っている・・・仕込みは十分だ、内心でルークがそう思っているのを知らず三人は明らかに苦そうな顔を崩せない。
だがそこはやはり預言だけを目的としている惑星屑、言い訳を探してキョロキョロしていたところではっと気付いたように声をあげる。
「・・・時にルーク様。ヴァンはどうされました?救助活動を共に行ったというならヴァンもこの場にいなければおかしいですし、それに何故シンク達がここに・・・?」
察するに老け髭の所在を明らかにして事情というか実態を聞きたくて仕方ないのだろう。現状を打破したいと苦し紛れなそのあがきに、兵士達も含め修頭胸除き嫌悪感を持った視線が弱いながらも目に表れる。だがアリエッタに関しては被験者イオンの事もあり、強い視線が惑星屑に向けられてる。
叩けば埃が出てくるというのは予想はしていたが、ここまで中身がない空洞の思考は類を見ない。人任せなその態度を見つつ、ルークは更に攻め手を強める。








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