焔と渦巻く忍法帖 第十八話

「大体そんな酷いみたいな事国から言われたって言っても別に構わねぇだろ、どうせキムラスカには首を縦に振ってもらうんだ。つまり大佐殿が死ぬ事もねぇんだよ」
かいていた頭を修頭胸から背けるように横を向け、呆れたように声を出す。ルークが命を保証したこととどのような手段を持ってしても目的を達成させる人間だということ、その二つを忘れて尚反論が出来るのは目先の出来事にしか反応出来ない短慮としか言いようがない。
「・・・そうですわね。私達がバチカルでどうにか戦争を止めればいいこと、そうすればジェイドも胸を張ってグランコクマに戻れますわ!」
不満そうな顔でルークの言葉を聞いていた猪思考姫が、話を聞いて希望を持ったように嬉しそうに段々と声のトーンを上げて顔を明るくさせる。
「そーそー。成功させんだから一々目くじら立てんなよ」
ここで珍しくルークが猪思考姫の言葉に同意をする。といっても多少投げやりな雰囲気は否めず、自称正論者達に背中を見せる。
「だから適当に休んでろよ、着くまでは何もしなくていいから」
「あぁ・・・そうさせてもらおうか、皆行こう」
未だかつてない気遣いを見せるルークに疑いを消したのか自称親友兼使用人と自分で言っていたフェミ男スパッツが、退出しようと他の面々を促す。そのルークの態度に少し気を許したのか、全員頷きで返しブリッジから退出していく。



・・・そして全員が退出した時、ルークは一言漏らす。
「馬鹿から一皮剥ける気はねぇのかよ」
溜息もセットにして出された言葉は何よりも憐れでいて滑稽でならない一同に冷酷で、振り向いたルークの顔は非常に淡泊そのものになっていた。
「これから行くのはテメェを見捨てた主様達のいるバチカルなんだぜ?人の心配してられんのか?」
次の目的地には死を望んだ者達が雁首揃えているというのに、攻められなじられないなどと誰が確約した?それこそ眼鏡狸がマルクトから全身全霊を持って拒絶されたかのような発言以上のものを喰らうかもしれないのに。
「それにお前達が戦争を止めるんじゃねぇ、俺らがあいつらに首を振らせるんだよ」
更には自らの立場を全て忘れたかのように自分の力でやるんだと、既に発言権すら消え去っている王女の言葉は中身がすかすかだ。あそこまで預言達成の道筋が作られていたのに、殺されようとした数名程度の人員が大逆転など奇跡が起こってもありえない。そう、ルーク達が文字通り首を縦に振らせない限り。
「未だ反論すんのは気にいらねぇけど、それはバチカル行きゃ反論も出来ねぇほど粉々にプライド壊されるからいいか」
一人、また一人と自尊心と矜持を砕いてきた。今度はかつてない程に精神を壊す為の材料が大量に揃っている。もし少しでも思う所があれば覚悟を決めれただろうに、覚悟どころか自覚さえしない現状ではどれほどのダメージを受けるのか想像に難い。その表情をただ想像をするだけでもルークは溜飲が下がる思いで、楽観的な気持ちになれた。
「まぁキムラスカにも惑星屑にも相応な目を見せてやっから向こうから与えられた衝撃は痛み分けでいいだろ。身から出た錆の総決算はバチカル着いてからでいいから、今だけはゆっくりしとけよ」
何もルークは単純な優しさで休息を薦めた訳ではない。欝陶しさも勿論あったが、本番はバチカルに到着した時。軽いいさかいこそ発生したが今すぐ壊す気のないルークはせいぜい楽しめばいいという意味で休息を薦めたのだ。
「さっ、バチカルまで急いで行こうか」
とはいえ一気に片付ける事の出来る地、バチカルに行くのはルークにとって楽しみで仕方ない物。ルークは自らの影分身兵士だというのにそれに構う事なく、楽しそうにビシッとバチカルの方角を指差した。









・・・タルタロスがマルクトの領地から離れて数日程経った。移動中ルークの陣取るブリッジの元にはナルトとシンクとアリエッタとサフィールも常に場所を取るようになり、他の面々は顔を見せに来る事もなく順調な航路を辿って行った。そして順調な航行を過ごしていたルーク達の前に・・・天高くそびえる城を頂上に据えた、光の王都が姿を現した。








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