悩む様子を見せ目をつぶるピオニーに謁見の間の空気も、その瞬間の訪れを待ち重くのしかかる。



「・・・ルーク殿の案は確かに理にかなっている。少なくともマルクトには損はない・・・ただ・・・」
結論を出したのだろう口を開いたピオニーは、途中で話し口を切る。



「ジェイドが失われるかもしれないという事以外はな」
「！！」
切られた後に発せられた言葉は眼鏡狸が死ぬかもと暗に示した言葉、それは確かに驚きとして眼鏡狸の開いた目に現れる。しかしそれ以上に残酷な言葉が、ピオニーによって出て来る。
「・・・ルーク殿の策は成功の目はかなり薄い。ならばせめて失敗した場合、マルクトに危機を伝えてくれたルーク殿に敬意を示さないといけない・・・ジェイド、皇帝として命じる。死ぬ気で、いや成功しない限り死ぬ物としてルーク殿に付き従え。それがお前のルーク殿への謝罪でもあるし、俺から与える罰だ。失敗して自分一人命を惜しんで逃げ帰ってみろ、即座に首を落とす」
「！・・・はっ、陛下の勅命承りました」
・・・皇帝としてピオニーが出した命は前に進み成功しない限りはっきり死ねと命じた物。死ぬ気で挑めと鼓舞するような生易しい物ではない、成功以外赦さないと皇帝として威厳を伴わせた声がはっきり意を伝わらせている。
その命に反論一つでも口にすれば火を見るより確実に処刑の文字がピオニーから出てもおかしくはない、誰もがそう感じ取れる声に眼鏡狸は声を落とし軍人としての口調で拝命する。



・・・だが勿論の事、ルーク達は失敗する気など塵芥一粒もないし、眼鏡狸を殺させる気はない。重用なのは眼鏡狸のマルクトへの心象を底辺以下にすることだ、この段階では。更にはマルクトに対し大きな、大きな貸しも作った。予想よりも聡明であった陛下の判断も加わり、思った以上の成果も得られた。

・・・ここでやるべき事は全て終わらせた、そう思ったルークは軽く表情を緩めて心配をかけまいとするように笑みを作る。



「では陛下、カーティス大佐をお借りします」
「あぁ」
「ヴァン謡将はキムラスカに連れて参ります、無事に事を為した場合はこちらに連れて参りますので」
地面に置いていた老け髭を改めて頭を袋に入れ直し、担ぎ上げる影分身兵士。
「では私達はキムラスカに参ります。タルタロスに乗せていた神託の盾兵士はテオルの森の兵の方々に身柄を渡しましたので、捕虜として扱うなり罪状に照らし合わせて罰を与えるなり好きにしてください。私達はそのままタルタロスを足として使わせていただきますので」
頭を下げたルークから神託の盾兵士の扱いに関しての言が出る。これはナルト達の元に来たマルクト兵に、影分身兵士が捕虜として神託の盾兵士を引き渡すと申し出たからだ。タルタロスとて何百人も常に乗せれる程手広い訳ではないし、食糧などの維持費もかかる。マルクト側としてもタルタロスの兵を殺した集団だ、神託の盾兵士の引き渡しには事情を説明すれば躊躇われる物ではなく、寧ろ意気揚々と神託の盾兵士の集団受け取りに了承した。
「わかった、健闘を祈らせてもらう」
引き渡しとタルタロスの両方に了承をし、ピオニーは励ましの言葉をかける。
「はい、では失礼します陛下・・・行きましょうか皆さん、そしてカーティス大佐」
再度頭を下げ退出を申し出ルークは後ろを振り向く。足を出口へと動かす中、失礼でない程度に声をかける。・・・最後の顔色が若干悪くなった眼鏡狸には悪気しか感じ取れない口元の笑みを加え。その動作に何も出来ない眼鏡狸はさっとルークから目を反らし、先へと足を進める。






・・・謁見の間から出て水の都と呼ぶに相応しい光景を見ながら歩くルークの隣に、歩幅を狭くし後ろに下がって来たナルトが来て小さく声を出す。
「あの顔、傑作だったってばよ」
「あぁ、そうだな。けど今度は今まで以上に愕然としてもらうんだぜ？特に惑星屑にはな」
「ゴ～ミはちゃんと掃除して～♪その後事実をぶっちまっける～♪」
「いっぱいいっぱいやることがあんなー。ククッ、楽しみだよなぁ？」








募る思いは光の王都



訪れるのは繁栄などではない



預言を壊さんとする死の化身達の来訪は近い







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