焔と渦巻く忍法帖 第十七話

・・・ここまではっきりとレプリカルークとして『鮮血のアッシュ』を売り込んだのだ。煙デコへの当て付けとマルクトへの刷り込みは十分。後は老け髭のやったこととダアトの本音をばらすだけ。
「・・・話がズレてしまいました。ですが今の話はヴァン謡将がダアトの意志に反している事も表しているのです」
悲しげな表情を作りつつ、ルークはズボンに手を突っ込みテープレコーダーを取り出す。
「まずは聞いていただいてよろしいでしょうか?大詠師とインゴベルト陛下とファブレ公爵の密談をこの譜業の中に納めた物です」
テープレコーダーの姿にマルクト陣の人間全員どういう譜業なのかといぶかしむ中、ルークが再生のスイッチを入れる。そしてテープレコーダーから声が出て来ると、マルクトの全員が驚きで声を落とす。
誰にも静かにと注意せずにその声が辺りに広まっていく、事実だと預言を信じざるを得ない会話が・・・









一連の流れをテープを入れ替えながら繋げていったルーク。そして全て内容を聞かせるとルークはテープレコーダーを再びズボンのポケットに入れて、内容に愕然としているマルクト陣の人間を見る。
「・・・今お聞きいただいたのはアクゼリュスに私達が派遣される前日にこちらにいるナルトが録音した会話です。話しているのがインゴベルト陛下とファブレ公爵だというのはナタリア殿下が立証していただけます。大詠師に関しては導師が立証していただければよろしいかと」
「・・・確かにこの預言の言葉は重要だな。しかし何故導師はこの事実を知らされていない?」
テープレコーダーから出た言葉にルークの言葉も併せた事でピオニーは深刻だと表情を苦くする。しかし大詠師が知っている事実を知らなかったイオンに、ピオニーは一歩踏み込み訳を聞く。
「・・・僕はモースのように預言を絶対としている訳ではなかったので、預言の達成に不適格な人材だと見られたんでしょう」
ここで自らもレプリカだと明かせないイオンは言葉を選びながら、丁寧に言葉を搾り出す。そこでルークはボロを出さないよう、話を引き継ぐ。
「実際の問題として導師率いる改革派にはマルクトへの害意はないでしょう。ですのでマルクトと親善大使として派遣された私達にとって当面の問題は、戦争を起こそうとしている大詠師と預言により繁栄をもたらされると言われたキムラスカです・・・つかぬ事を伺いますが、マルクトとしましてはこの問題にどう取り組もうとお考えでしょうか?」
「・・・・・・難しいな」
話題転換にピオニーの顔が難しく歪む。国としては皇帝一人で判断するには重い問題だ、即決するには荷が勝ちすぎている。
「・・・結論がまだ出せないのでしたら私達に一つ、任せていただけないでしょうか?」
「・・・何をだ?」
そんなピオニーを見てルークは下手から出るように頼み込みをしようとする。しかし本題に入っていない話し方にピオニーはまた疑問をぶつける。



「私達はこれからキムラスカに戻りたいと思っています、私達が無事に任を終えたと伝える為に」



「「「「!?」」」」
まさかの発言が出て来た事で、謁見の間にざわめきが起こる。特に動きが見れたのは達と括られた大使一行と煙デコ、まさかキムラスカに戻る事はないとでも思っていたのか全員に怯えが走っている。
騒然と場が揺れる中、ルークはただ言葉を紡ぐ。
「先程も申し上げましたがマルクトにとっての脅威は大詠師とキムラスカに当たります。ですがキムラスカは大詠師の言う預言を元に動いているに過ぎません。そこで私達を和平成功の使者として認めてはくださいませんか?私に策がございますので」
「・・・策だと?失礼だが、その策聞かせてはもらえないだろうか?」
何やら勝算がありげな言い方にピオニーは確認を取ろうとする。






その瞬間発現したのは獣を思わせるような、血の匂いを錯覚させる笑み。



「ダアトの大詠師派を一層する、預言を排する策ですよ」








19/22ページ
スキ