焔と渦巻く忍法帖 第十七話

「六神将の鮮血のアッシュがレプリカルーク・・・?どういう事だ・・・?」
ピオニーは先に話を促そうと身を乗り出してくるが、聞きたいと本当に考えているのは自称正論者達。そして一番聞きたそうにしているのは、当の本人戸惑っている煙デコだ。
「えぇ。彼、鮮血のアッシュは私達がアクゼリュスに到着してきた時、私に切り掛かってきました。そこで私は彼を撃退し剣を彼の胸に突き立てました・・・そうしたら彼は死体を残さず、光になって消え去ってしまいました。後でディスト殿に彼の死亡時の様子をお聞きしたら、超振動をより実践的に使う為にオリジナルルーク殿に負担をかけないよう実験台として作られたのが鮮血のアッシュとの事です。その死に様を見た私は彼がレプリカだという事・・・認めざるをえませんでした」
レプリカの死亡の仕方というのは、サフィールに聞いた事。あぁこういうことかと思うと同時に、サフィールはその先に出るであろう言葉こそが本題であると気付いてしまう。



「ですが私は一つ気にかかった事がございました」
改めた口調、丁寧であるというのにひやりと空気が下がっているような錯覚を皆が覚える。その感覚を一番味わっているのは紛れも無く話題の中心である、アッシュであった煙デコであろう。
「彼は死ぬ間際にまでおっしゃっていました、何故俺が劣化レプリカ野郎に、と・・・彼は度々私に会うといわれのない罵声を浴びせてきました。それまで一度も会ったことのない私に。それでディスト殿に何故そんな風に言われなければならなかったのか聞いた所、それはヴァン謡将の鮮血のアッシュの教育の仕方のせいだったとの事です」
「・・・!?」
下の老け髭に視線を向け話すルークの後ろ姿に、煙デコは何を話すのだと食ってかかりたそうな顔で踏み止まっている。
「レプリカの自立を促す為と自らの手駒として使いやすくするため、その二つの条件をクリアするには自らがオリジナルだと自覚させてレプリカに恨みを持たせようと画策した故の事との事でした。そして恨みを植え付けられた鮮血のアッシュはその地位に上り詰める程力を付け、レプリカが消えればキムラスカに戻れるという言葉に殺意を私に向けるようにしヴァン謡将のみを信じるようにするように、とね。事実はオリジナルルーク殿はヴァン謡将に軟禁されていたんですけどね、ダアトの中の六神将にしか入れないような重要な場所に」
ここで一息入れ、ルークは話を少しだけ止める。自称正論者の顔は明るい、特に猪思考姫はこの作り話にルークとして戻れるのだと煙デコに熱い視線を向けている。
しかし軟禁されていただけで終わらせる為に話をしている訳ではないルークは、一息つくとすぐに話を始める。
「ですが彼はヴァン謡将の思惑すらも越え、私に対しての悪意を過度に現してきました。まずは先程も申し上げましたが国境においての襲撃、それでキムラスカ側の港の襲撃に加えアクゼリュス救援に向かう我々をザオ遺跡に呼び出した事。更に私とは直接関係はないとは思いますが、タルタロス襲撃に実行犯として関わった事。これは全て看過出来ない事実です。彼の、鮮血のアッシュの態度はマルクトにも相当な被害をもたらしたのでしょう?」
そのピオニーに問う声が出た瞬間、煙デコはビクッと何かに反応する。それはルークから向けられた刺すような殺気、話を聞けと鮮烈にアピールしたものだ。
「・・・まぁマルクトが受けた被害はタルタロスにいた兵士百四十人の命と、アクゼリュス救援に遅れた事だな。もっとも遅れた原因はジェイドが導師の救出を優先したことだがな」
「・・・」
今度は痛烈な皮肉が眼鏡狸に突き刺さる。しかし被害状況と言われ、眼鏡狸は流石に反論はしない。
「えぇ、そして彼はキムラスカにも大きな被害をもたらしました。実際これは仮定の話でしかありませんが、オリジナルは自分だと私が死んだ場合その後言い出しかねない雰囲気でした。そしてディスト殿の話も併せ聞いた私は不謹慎ですが、こう思いました」



「彼が死んでくれてよかった、と」










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