焔と渦巻く忍法帖 第十七話

「・・・さて、早速ですがまずヴァン謡将が起こした事からお話いたしましょうか?・・・ちょうど証人も来たようですしね」
パイロープから視線をピオニーに戻し、ルークは単刀直入に切って出す。だが後ろをちらっと見ながらのその言い方にピオニー達は怪訝そうな顔をするが、途端に謁見の間の入口の扉が開く。そしてそこから出て来たのは一人のマルクト兵士。
「失礼します、陛下。親善大使一行の方々をお連れしました」
「あ、あぁ・・・すぐに通してくれ・・・」
報告に来た兵士にほぼ誤差もなく来訪を告げるルークの言葉を聞いたピオニーは戸惑いながら頷いて返す。
「はっ!」
兵士は敬礼をし、すぐさま扉へ向き直り早足で退出していく。



数秒もすると再び扉が開き、今度はナルトが先頭を堂々としながらも余裕を感じさせる表情で一同を束ねて歩いてくる。一番後ろにはずだ袋に入れた老け髭を担いだ影分身兵士を連れて。ちなみにずだ袋に入れたのは運ぶ最中人目に触れないようにと、一般市民を怯えさせない為だ。
「・・・お久しぶりです、陛下。導師イオンです」
ちょうどルーク達の後ろに着き、ナルトとシンクとアリエッタと影分身兵士だけがかしずいて頭を垂れる中、イオンが再会の挨拶をする。
「あぁ、久しぶりだな導師・・・ルーク殿、ここに導師を連れて来たという事は導師が証人になるのか?」
「・・・え?」
挨拶もそこそこにピオニーが証人だと早速目星をつけたのはイオン、しかし話の流れを全く知らないイオンはまだ青白い顔に未だ顔をあげて礼すらしない連中とともに眉を寄せる。
「いえ、違います。証人はそちらにいらっしゃる」



「本物のルーク・フォン・ファブレ様です」



「「「「!!?」」」」
紹介するように差し出された手は紛れも無く煙デコに向いている。いきなりの急展開に自称正論者達もマルクト陣も、驚愕の色を隠せない。
「御前を失礼します、陛下」
そんな中で影分身兵士が担いでいたずだ袋を地上に下ろし、その縛り口を紐解いて老け髭の頭を出す。それに内心蔑んだ罵倒の声を浴びせつつ、ルークは隣に移動する。
「そちらのお方が本物のルーク・フォン・ファブレだと言うなら私は何者だ?と思われるでしょう。ですのでまずは正直に申し上げます・・・私はヴァン謡将の命でそちらのディスト殿により生み出されたレプリカルークという存在、つまりは偽者になります」
「なっ・・・!?それは本当なのか!?」
「はい、その通りです。偽りはございません」
事実なのかと焦りつつも視線をサフィールによこし確認を取るピオニーに、淡々と肯定を返す。
「彼、ヴァン謡将は預言に詠まれたローレライの力を継ぐ若者。つまりオリジナルルーク殿の力を、超振動を単独で使えるその身を欲しました。そこで彼が目をつけたのがレプリカ技術、ヴァン謡将はオリジナルルーク殿をさらい私に完全同位体を作る事を命じたのです。そして生み出されたのがそちらのルーク殿、オリジナルルーク殿はヴァン謡将の元に残され屋敷には彼が送り届けられました」
「・・・そんな・・・事を・・・」
話を聞き終わりサフィールと老け髭を交互にピオニーは複雑そうな顔で見る。察するに正直に話すサフィールを見てそんな行動を命じられたとはいえ取ったことを、どういう風な目で判断を下せばいいのか分からないのだろう。
「・・・ふぅ。サフィール、いやディスト。それが本当だというのは疑う余地はないだろう。未だレプリカ技術を研究してるって自白してる時点でお前は覚悟を持って証言していると俺は思う」
しかしようやく考えをまとめれたのか、その話を事実なんだとピオニーは足の付け根辺りで手を組み、認めるという。
赤の他人で済ますに瓜二つ過ぎるその顔は双子でなければ説明はつかない上に、双子であろうとも細胞一つ一つも似てはいるが全く同じという訳ではなく微細な違いがある。うたぐってかかっても、調べればすぐにわかることだ。
だがその声に、鋭くルークは割り込んでいく。
「事実だという証言が欲しいのなら私達全員が証言者になれます」
「・・・何?」
全員と聞き一斉にルークに視線が集中する。何を言うのか?
注目が集まる中、一人ナルトだけ下を向いたまま笑みをこぼす。



「六神将の鮮血のアッシュ。後のディスト殿の証言で判明した事ですが、彼もレプリカルークだったとのことです」
存在の在り方、かつて名乗った名の日だまりの消滅の瞬間の絶望の表情を思い・・・











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