焔と渦巻く忍法帖 第十七話
「・・・それでは、衛兵。ジェイドを捕ら・・・」
「少々お待ちを、陛下」
重い雰囲気の中ピオニーは意を決したように前を向き眼鏡狸を捕縛するように言おうとするが、途中ルークが言葉を遮る。その言葉にどうしてと言いたげな顔で戸惑うピオニーだが、一番理解出来ていないのは捕縛されようとした当の眼鏡狸だ。
「私が申し上げたのはあくまで、‘陛下が罰を与える姿を見たい’です。実際に罰を与えていただくのは私の要望ではありません」
「・・・話が見えないが・・・？」
どういう事かとピオニーに倣いゼーゼマン達も同じように首を傾げる。ルークはそんなピオニー達を見て、パイロープに頭を下げてからピオニーにまっすぐ視線を送る。
「失礼な話ですが、私はカーティス大佐の態度にマルクトの誠意とアクゼリュスの住民の方々を救助する為の姿勢を全く感じられませんでした。今この場に来ていただいたアクゼリュスの住民の代表、パイロープさんには悪いとは思いましたがマルクトにアクゼリュスが見捨てられてキムラスカに住民の方々を押し付けたのではと思う程に」
「・・・それは、確かに申し訳ない。アクゼリュスを後に回したことは住民を救助することを放棄したように取られてもおかしくないからな・・・すまなかった」
誤った判断が起こした不誠実な行動にピオニーがパイロープに体を向け、深々と頭を下げる。パイロープは皇帝に頭を下げられるというけしてありえない事態にあわあわと目を見開いて何も言えない。
・・・事実皇帝がここまでしなければいけないのははっきりと眼鏡狸の不手際だ。ルークの発言はもうマルクトにとって無視出来る物ではない、そして民草が苦しんでいて国に助けを求めたというのに別の事に集中していたとのこと。頭は下げるべきではないが、下げねばもう国の在り方すら民に否定をされかねない。
・・・そこまでの行動を皇帝に強要した眼鏡狸は有り得ないと、信じられない物を見るようにピオニーを見ているが。
「・・・あなた方マルクトが本気でアクゼリュス救助に取り込もうとしたこと、そしてカーティス大佐の非礼に謝罪をする姿勢が本気であることは陛下、陛下が直々に頭を下げていただいた事で理解しました・・・確約通り預言の事実とアクゼリュスで起きた事実、お話しさせていただきます」
・・・一つ、この皇帝が能力とは別に愚かだった物。それは信頼すべき相手を見誤った事。しかし甘いという欠点こそあれど決断力はあり、その甘さで民に頭を垂れる事にも躊躇をしない。
ルークはマルクト皇帝のピオニーという人物にそこまで悪印象を抱く事はなかった。故に先を話す事を決めた・・・が、ここでルークは再びパイロープに視線を向けながらピオニーに話を続ける。
「ですがここからの話は一部パイロープさんも知ってはいますが、一般人である彼に国と国との事件にこれ以上関わりを持たせるのはいかがかと思います。ですので陛下、パイロープさんに部屋を用意していただいてよろしいでしょうか？アクゼリュスの方々の代表として住民の受け入れに関して話し合いもしなければいけないでしょうから・・・ね」
・・・丁寧に話してはいる、だが最後に妙な間を空けてピオニーに視線を送るルーク。
「・・・あぁ、そうだな。ではアクゼリュスの住民に関しての話し合いも兼ねて部屋を用意するからそちらに移られてもいいか？」
「あ、はい・・・」
ピオニーもその視線の意に呼応するようにパイロープに退出をしてもらうがと問い掛ける。パイロープはその問いに否定するでもなく、民として答える。
「じゃあ衛兵、案内してくれ」
答えを聞き衛兵を呼び案内を命じるピオニー。近くにいた兵士が近寄ってくる中、ルークは体ごとパイロープに向き直ると軽く首を縦に振って淡い笑みを見せる。
「お疲れ様でしたパイロープさん。後は私達に任せてゆっくりしてください」
「！・・・はい」
驚きを見せながらも残念そうにパイロープは力無く返事し、近くに来た衛兵を見ると付いてくるようにという後ろ姿に足を動かす。
・・・謁見の間を出る直前、名残惜しそうに少しちらっとルークを見てパイロープはその場を後にしていった。
（本当にお疲れ様。あんたの事利用した分はちゃんと預言にお礼しとくから）
後ろ姿を見送ったルークは軽く目を細める。アクゼリュスの住民は被害者という立場なのだ、ルーク達の敵ではない。例え策とはいえ一般人を巻き込むのは忍という立場で動くルークからすれば避ける物、ここで役割を終えさせ無事に普通の生活に戻らせるのがルークの望み・・・と同時に、パイロープにこれからのやり取りを見せたくなかったから退出させるようにしたのだ。
（流石に今からやることは一般人には酷だからな）
．
「少々お待ちを、陛下」
重い雰囲気の中ピオニーは意を決したように前を向き眼鏡狸を捕縛するように言おうとするが、途中ルークが言葉を遮る。その言葉にどうしてと言いたげな顔で戸惑うピオニーだが、一番理解出来ていないのは捕縛されようとした当の眼鏡狸だ。
「私が申し上げたのはあくまで、‘陛下が罰を与える姿を見たい’です。実際に罰を与えていただくのは私の要望ではありません」
「・・・話が見えないが・・・？」
どういう事かとピオニーに倣いゼーゼマン達も同じように首を傾げる。ルークはそんなピオニー達を見て、パイロープに頭を下げてからピオニーにまっすぐ視線を送る。
「失礼な話ですが、私はカーティス大佐の態度にマルクトの誠意とアクゼリュスの住民の方々を救助する為の姿勢を全く感じられませんでした。今この場に来ていただいたアクゼリュスの住民の代表、パイロープさんには悪いとは思いましたがマルクトにアクゼリュスが見捨てられてキムラスカに住民の方々を押し付けたのではと思う程に」
「・・・それは、確かに申し訳ない。アクゼリュスを後に回したことは住民を救助することを放棄したように取られてもおかしくないからな・・・すまなかった」
誤った判断が起こした不誠実な行動にピオニーがパイロープに体を向け、深々と頭を下げる。パイロープは皇帝に頭を下げられるというけしてありえない事態にあわあわと目を見開いて何も言えない。
・・・事実皇帝がここまでしなければいけないのははっきりと眼鏡狸の不手際だ。ルークの発言はもうマルクトにとって無視出来る物ではない、そして民草が苦しんでいて国に助けを求めたというのに別の事に集中していたとのこと。頭は下げるべきではないが、下げねばもう国の在り方すら民に否定をされかねない。
・・・そこまでの行動を皇帝に強要した眼鏡狸は有り得ないと、信じられない物を見るようにピオニーを見ているが。
「・・・あなた方マルクトが本気でアクゼリュス救助に取り込もうとしたこと、そしてカーティス大佐の非礼に謝罪をする姿勢が本気であることは陛下、陛下が直々に頭を下げていただいた事で理解しました・・・確約通り預言の事実とアクゼリュスで起きた事実、お話しさせていただきます」
・・・一つ、この皇帝が能力とは別に愚かだった物。それは信頼すべき相手を見誤った事。しかし甘いという欠点こそあれど決断力はあり、その甘さで民に頭を垂れる事にも躊躇をしない。
ルークはマルクト皇帝のピオニーという人物にそこまで悪印象を抱く事はなかった。故に先を話す事を決めた・・・が、ここでルークは再びパイロープに視線を向けながらピオニーに話を続ける。
「ですがここからの話は一部パイロープさんも知ってはいますが、一般人である彼に国と国との事件にこれ以上関わりを持たせるのはいかがかと思います。ですので陛下、パイロープさんに部屋を用意していただいてよろしいでしょうか？アクゼリュスの方々の代表として住民の受け入れに関して話し合いもしなければいけないでしょうから・・・ね」
・・・丁寧に話してはいる、だが最後に妙な間を空けてピオニーに視線を送るルーク。
「・・・あぁ、そうだな。ではアクゼリュスの住民に関しての話し合いも兼ねて部屋を用意するからそちらに移られてもいいか？」
「あ、はい・・・」
ピオニーもその視線の意に呼応するようにパイロープに退出をしてもらうがと問い掛ける。パイロープはその問いに否定するでもなく、民として答える。
「じゃあ衛兵、案内してくれ」
答えを聞き衛兵を呼び案内を命じるピオニー。近くにいた兵士が近寄ってくる中、ルークは体ごとパイロープに向き直ると軽く首を縦に振って淡い笑みを見せる。
「お疲れ様でしたパイロープさん。後は私達に任せてゆっくりしてください」
「！・・・はい」
驚きを見せながらも残念そうにパイロープは力無く返事し、近くに来た衛兵を見ると付いてくるようにという後ろ姿に足を動かす。
・・・謁見の間を出る直前、名残惜しそうに少しちらっとルークを見てパイロープはその場を後にしていった。
（本当にお疲れ様。あんたの事利用した分はちゃんと預言にお礼しとくから）
後ろ姿を見送ったルークは軽く目を細める。アクゼリュスの住民は被害者という立場なのだ、ルーク達の敵ではない。例え策とはいえ一般人を巻き込むのは忍という立場で動くルークからすれば避ける物、ここで役割を終えさせ無事に普通の生活に戻らせるのがルークの望み・・・と同時に、パイロープにこれからのやり取りを見せたくなかったから退出させるようにしたのだ。
（流石に今からやることは一般人には酷だからな）
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