焔と渦巻く忍法帖 第三話

ナルトが綱手の元に行く少し前にルークはオールドラントに戻っていた。戻ってきて影分身からの情報を叩き込んでいたが、大して変わった情報もなく何の変わりようもなかったので今日が終わればもう来る必要もないだろうとおさらばする気満々であった。



暫くボーッとしているといきなり頭痛がしだした。時折来る頭痛・・・影分身を置いているときは頭痛はしないが、本体であるルークが来るとかなりの確率で頭痛がおきるのだ。
オマケに途切れ途切れな言葉が付いてくる。その意味が分からず、こっちに何のようだと問いかけるが返事は帰ってこない。
(まあいいか、今日何もなかったら関係なくなるし)
頭痛は我慢できるし、ちゃんと伝わらない言葉になぞルークに興味はないのだ。



そんな事を考えていると部屋の外に気配をルークは感じていた。隠してはいるが度々自分を殺そうとした男、ガイの気配だ。
「ようルーク。起きてるか?」
部屋の窓から入るという不審者極まりない形で挨拶と言えない挨拶を投げ掛けてきた。貴族と使用人という関係であるが、この青年はその事を全く考えていないとルークは思っていた。
貴族と言うからには部下の不作法に対して厳しいものでなくてはいけないが、肝心のルークは自分が貴族だという意識は全くない。故に言葉遣いに対して注意はしなかったが、それを自分が年上だからか殺意を持つ相手に敬語を使う必要がないと鷹をくくったのかルークと二人きりのときは全く敬語を使わない。使うときは皮肉混じりな感じでからかうときくらいである。
「あぁ?つーかドアから入れよガイ」
使用人であれば許可さえあれば部屋に入っていいはずだが、ガイはその手順を踏まず主(のはず)の部屋に泥棒のように入ってくる。夜中寝ていたら窓からガイが殺気混じりで侵入してくることがよくあった。今もガイの腰元を見れば剣が腰にかかっている。
「気にすんな、ルーク。それよりどうだ?俺と剣術訓練するか?」
「へへーん、残念でした。今日は師匠来てんだ!」
自分を殺そうとしている(殺すかどうか悩んでは戻って行くが)ような人物と剣を重ねたくはない。影分身だったら老け髭の計画が崩れるのでおとなしく刺されてやるが、今は本体だ。結構な使い手であるガイに本気で切りかかられたら偶然かわしたなどという嘘は通用しづらい。老け髭が来たのはある意味幸運だった。



「ヴァン謡将が?剣術指南の日じゃなかったはずだが・・・」
「急ぎの用だっつってたけど何だろうな?」
‘コンコン’
「ルーク様よろしいでしょうか?」
本当は早く会話を切り上げたかったルークに助けの呼び出しがかかった。
「使用人は見つかる前に失礼させていただくよ」
と言い、窓の外に消えたガイ。
(あー、今日何もないだろうから俺も失礼するよ)
この世界からな、と付け加え皮肉気に使用人の礼をガイが出ていった窓に向かって行った。



メイドから(オリジナルの)父親であるファブレ公爵からの呼び出しがかかったので、仕方ないと公爵の元へ向かうと母親であるシュザンヌと本当は敬愛の念など抱いていない老け髭が公爵と一緒に座っていた。

一先ず椅子に座り急に老け髭が来た意味は何だと考えていると、老け髭が所属しているダアトのトップである導師が失踪したため、導師探索のためにダアトへ帰らなければいけないということだそうだ。

そんな理由で帰るならば暫くは屋敷に来ることは無いとルークは考えていた。

そして・・・(尚更今日で片付けてやらないとな)とも考えていた。



老け髭がこの家に来た時はルークに剣術を教える事が定例の行事となっている。先に準備をすると言った老け髭の後を追えば、ガイと何やら話しあっている姿があったのをルークは見ていた。今までにも何回かこういった場面を目撃し、老け髭と関わっている事からガイには信頼など置ける筈もないと自らガイに関わって行かなかった。向こうは無駄に爽やかな笑みで一方的にこちらに話し掛けて来る。アプローチが一方通行ではあるが、対するルークが(表面上)好意的に接するのでガイはルークの信頼を受けていると思っているのだ。





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