焔と渦巻く忍法帖 第十七話

「でしたらタルタロスに使いの人を寄越していただいていいですか?テオルの森の外につけてあるタルタロスの中にはキムラスカが親善大使として選んだ人員と、捕らえているヴァン謡将を乗せています。彼らも証言者ですので、すぐに通してもらいたい」
「はっ!すぐに向かわせていただきます!」
ルークの頼みに一緒に話を聞いていた兵士がすぐさま敬礼を返して走りだし、テオルの森の外へ向かう。それを見送ったルークは真剣な表情で振り返る。
「では行きましょうか」
「はっ!どうぞこちらへ・・・」
一言言うと、兵士は元気よく返事をして前を向く。道案内を買って出た兵士が先を歩く後ろ姿を見ながら、ルーク達は後をついていく。






・・・グランコクマの街を悠々と闊歩していくルーク達は兵士の説明を何度か交えながらも、マルクト皇帝のピオニー陛下が待つであろう宮殿の謁見の間前へとたどり着く。

バチカルのような縦に長い土地の使い方とは違い、グランコクマはその土地の広さを存分に使った横に長い使い方をしている。必然建物の作り方ひとつひとつ取ってもバチカルとは違い、白を基調とした壮麗な宮殿が横に大きく広がる。土地がクレーターの中心跡地ということで限られた土地の中、縦に長い建物の作り方をしているバチカルの城とは違った美しさがある。

・・・道案内をしてくれた兵士が最後の取り次ぎをしている中、ルークは造りの違う建物の様子を見ながらその美麗さを余す事なく不自然でない程度に見る。



「・・・お待たせしました、ルーク殿。陛下は中でお待ちとのことです」
「わかりました、ご苦労様です」
話をつけてきたであろう兵士がうやうやしく声をかけてくる。ルークはその様子に労いの言葉をかけて労いの言葉を出すと、眼鏡狸にだけ分かるよう強い意志を込めた視線を放ちながら振り向く。
「ではカーティス大佐、お話を通して下さいね?」
「・・・はい」
視線を受けた眼鏡狸は反論しない、というよりも出来ないまま肯定する。なにしろまんまそれが‘ヘマしてんなよ、おい’というのがわかる視線だったのだから。まぁ掛値なしに本音なので、手加減する気無しの視線を送った訳だから反論ははなから言わせる気はルークにはない。
「・・・では行きますので、ついてきてください」
「えぇ、わかりました」
先頭を歩かざるを得ない眼鏡狸はルークの頷きをきっかけに、全員が開け放たれた扉の中へと足を運んでいく。



宮殿の中を歩いて行き、何人かのマルクトの重臣や将軍が周りを固める椅子に座った、どこか幼さを感じさせる金髪の浅黒い肌の偉丈夫がいるのをルークは確認する。そしてそれと同時にルークはこの皇帝に関しての第一印象を瞬時に思い描く。
(・・・眼鏡狸とは違う意味での食わせ者ってとこかな)
その服装一つ見ても仰々しい皇帝らしい服ではなく、ラフな着こなしの動きやすさを重点に置いた服を着ている。むろん服の材質に関しては皇帝という地位なのだから最高級品なのだろう。だがそのような服を着ているというのに、一切気負いや慢心をしている様子は見て取れない。その態度が自らの自我を確立しているからこその、自信と経験から来る物だとルークは見ている。
(けど・・・食わせ者ってたいていどっか一本ネジが飛んでんだよな)
例えば死体漁りが二つ名になっている頭だけが取り柄の馬鹿を和平に送るとか。そう思ってしまっている時点で、ルークの中では変わり者でしかないとなっている。






どこかアンバランスな印象で判断に難しいマルクト皇帝。ルークは攻め口をどうしようかと模索しながらも、眼鏡狸を先頭にしたルーク達はピオニー陛下の前に位置つける。そしてそれと同時に笑顔になった皇帝から出て来たのは明るい労いだった。









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