焔と渦巻く忍法帖 第十七話

「私達はアクゼリュスの地にて救助活動を命じられていました。しかしその場には恐るべき陰謀が渦巻いていました・・・その陰謀にはダアトが深く関わっているのです・・・」
「陰謀・・・!?」
「率直に言わせていただきますなら預言にはアクゼリュスの消滅、そしてマルクトとキムラスカの戦争が詠まれていたのです。更に言うならマルクト側が敗北するという、あなたがたにとっても捨て置けぬ事態になる内容までもが詠まれていて・・・」
「えっ・・・!?」
こもった驚きの声が届いて来る。更に畳み掛けるようにルークは後ろに視線を向ける。
「嘘ではないという証言をお願いします、神託の盾六神将のディスト殿」
「はい。確かにルーク殿がおっしゃられた通り、ダアトの大詠師はアクゼリュスを消滅させるためにヴァン謡将をキムラスカからの救援隊とともに派遣させたんです。消滅を見届けさせる為にね」
「そこで我々はダアトの非道な行為を目撃したのです。パイロープさん、お願いします」
「・・・私とルーク様が目撃したもの、それはアクゼリュスに救援しにきたキムラスカの兵士をヴァン謡将が殺そうとしているものでした・・・」
「!?」
「その後キムラスカの兵士の皆様を助けたルーク様が出した証拠の音機関に、預言の為に謡将が行動を起こしたとありました。そしてその兵士達も預言で死ぬのだから殺しても構わないと仄めかす事も・・・」
「そこで私は独自にマルクトに味方をするために行動を起こしたのです。事実アクゼリュスの住民の方々は現在エンゲーブとセントビナーにて受け入れていただいています」
「・・・?ルーク殿、それは本当の事なのですか?我々はそのような連絡は受けてはおりませんが・・・?」
そこで本当に怪訝な様子でルークに問うマルクトの兵士。そこで鋭く眼差しがきつくなるルークに、兵士は気持ち一歩引きそうに体をわずかにのけぞらしてしまう。
「セントビナーのグレン将軍、エンゲーブのローズ夫人には帝都には報告をしないように頼み込んだんです。あなたたちマルクトに是非理解していただきたいことがあったので」
「え・・・どういう事ですか?」
「アクゼリュス消滅が戦争のきっかけになるというのが預言に詠まれた事象です。ですが我々がマルクトにその事実を持ち込んだ、となれば大詠師及びキムラスカがどのような行動を取るのか分からないのです。最悪自らの手でアクゼリュスを消滅させておいて、それを言い掛かりにマルクトがキムラスカの戦力を削ぐ為に起こした罠だと言ってくるかもしれない。私がマルクトにいるといっても、強制的に亡命させたか偽物だと取り合わない可能性が非常に高い。だからキムラスカに救助成功と伝えない為にもカーティス大佐に箝口令を敷いてもらったんです」
箝口令と聞きルークに不審な目を寄越す眼鏡狸。これは影分身にやらせた事だ。眼鏡狸影分身の土下座混じりの謝罪の最中、「是非!陛下に謝罪しに行くまではアクゼリュス住民の救出は報告しないでください!お願いします!」と聞いた事もない程声高に言わせていた(何度もゴンゴン地面に頭をぶつけさせ額に血が滲む程やらせたので、引きつつも二人はそうすると確約してくれた。異常に見せるのも一つの仕返しbyルーク)。
眼鏡狸のそんな視線を無視し、ルークは尚続ける。
「そこで申し上げたいのは私達をマルクト皇帝のピオニー陛下の謁見を今すぐに行うよう計らっていただきたいのです。さもなければいつまでも消滅しないアクゼリュスに疑問を持ったキムラスカが何らかの手を講じて来る可能性が高い・・・事は一刻を争います、預言通り戦争が起きた場合マルクトに在籍しているあなたにも余波は確実に来るのです。ですが今陛下と対策を講じる事が出来ればその流れも変える事が出来るのです。それらを踏まえ、陛下に・・・今すぐ取り次ぎを願えますか?」
深く覗き込むようにルークは目を合わせる。その視線には並々ならぬ圧力がかかっている、この判断に全てがかかっているのだという責任が肩に、全身にマルクトの命運を握っていると錯覚するほどに。
「は・・・はい!すぐに案内いたします!」
型にはまったような動きの固い敬礼を全身全霊でルークに行う兵士。その動作は呑まれているとしか言えないが、それでも危機を察した事にルークは少しマルクト兵士の見解を変えるには十分だった。









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