焔と渦巻く忍法帖 第十七話

「・・・へぇ・・・そう・・・知りてぇんだ・・・俺らの事・・・」
大体の事情と経過を聞き、ルークは腕組みをして目をつむる。何か考え込んでいるような体制ではあるが、何故か雰囲気が重い。
「ナルトはこことは違う世界から来て、俺は生まれてからほとんどの時間をナルトの世界で過ごして来た。影分身の術や俺らの強さはそこで学んだ物。それでシンクとサフィールはコーラル城で正体を明かして協力してもらうように願い出た。これが全部で俺も寝るから話は終わり。お休み」
「・・・え?・・・!ちょっ、ちょっと待ってくれ!」
息継ぎ無しのノンブレスで言葉を吐き切ると、ルークは先程のナルトのように手をぶらつかせブリッジを後にしようとする。だがさっさと退出しようとしたルークをフェミ男スパッツが呆然としていた状態から立ち直り、慌てて引き止めようと声をかける。その声に振り向いたルークの瞳はけだるげに染まっている。
「あぁ?んだよ。これ以上説明することねーぞ」
「ち、違う世界ってどういう事だよ!?」
「言葉通りだよ、ナルトは違う世界。つまりこの世界に来れる術を身につけてここに来た。術ってのは今もさっきまでも世話になった影分身みたいなもんで、その応用だ。証拠としてこの世界に影分身みたいな譜術なんて存在しないだろうが。影分身や変化の術の存在、他に聞いた事があるか?」
「うっ・・・」
今までに経験のない未知の術の存在に、フェミ男スパッツだけでなく眼鏡狸達までもが口をつぐむ。どう説明しても譜術なんて言える物ではないから、否定のしようがない。
「水の上を走れる奴なんて聞いた事があるか?」
もう唸り声すら出ない。
「証拠は十分。もう否定の材料なんてないだろ?」
首を振り肯定否定のどちらの態度を取ることすらしない。認めるにはあまりに突飛過ぎるが、認めねば説明がつかぬ事が多すぎる。全員、沈黙を持ってその話を肯定して答えとするしか出来なかった。






「ねぇルーク、なんで普通に事情を話したのさ?」
沈黙が支配するなか、シンクがあっさり事実を話し出した事に疑問を持つ。
「ナルトに話を回さねぇようにするためだよ。影分身が言伝に来た時、どれだけあいつの笑顔が引き攣ってたか・・・俺でもあそこまでのナルト見た事ねーからな。下手に今のナルト引っ掻き回したら冗談抜きに殺されんから、仕方なしに話役を買って出たんだ・・・惨劇を止める為つってもめんどくさかったけどな」
「そ、そう・・・」
やはりあれは相当な物だったのだと聞き、シンクと聞き耳を立てていたサフィールも心なしか引いてしまう。
「ナルト刺激したくねーなら今日一日くらい何もせずに大人しくしてろよ。なんかやったらそこまで俺責任持たないし、止める気もないから」
またけだるそうな様子を強め、今度こそブリッジを出ようと踵を返す。すると途端にズボンの裾をアリエッタが握って来た。
「どうしたんだ?アリエッタ」
「アリエッタも一緒にいい、ですか?」
どうしたのか首を傾げながら行動の意味を問うルークに、アリエッタは共に行きたいとのこと。しかし起こして意識をようやく覚醒させたばかりのアリエッタに、ルークは優しく声をかける。
「起きたばかりだろ、アリエッタは。今から俺は寝るから相手は出来ないぞ」
タルタロスに着く大分前からルークの背中で寝ていたアリエッタに、又聞き話でも怒りを感じていたルークも寝て気持ちを落ち着けようと考えていた。そこに表情を暗く落としたアリエッタの一声が小さく響く。
「・・・アリエッタ、今のイオン様と一緒にいたくない、です・・・」
「!」
言葉が確かにイオンの元へと届く。驚き表情を青ざめさせるイオンに感心を寄せず、ルークに話続ける。
「今のイオン様が悪いって、言う訳じゃない、です。けど・・・ママの事、あんな風に言った今のイオン様とアリエッタ、一緒にいたくない、です・・・」
「ア、アリエッタ・・・!?」
更に聞こえた自らの拒絶にイオンは思わず手を伸ばそうとする。だが声に反応したアリエッタから返って来たのは強い怒りと拒絶を宿した視線のみであった。







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