焔と渦巻く忍法帖 第三話

「それじゃあこれくらいでいいってば?」
「・・・何をそんなに急いでいる?用事でもあるのか?」
「明日からしばらく里の外に出るからその準備だってばよ」
里から出る。表向きナルトはまだまだ弱い。その事を見かねた綱手の元チームメイトであり、伝説の三忍の一員である『自来也』の提案で里外での長期修行の旅に出る事になっている。
しかし、三忍を遥かに超える実力を持っているナルトが修行を必要な訳がない。なら何故?それはうちはイタチが現在所属している犯罪者グループ『暁』や、大蛇丸がいる音の里を筆頭とする里に害をなさんとする組織の内情調査を行う為のカムフラージュとするためである。



「そうか。ところでルークは行くのか?」
「勿論だってばよ!」
「で、そのルークは何処だ?」
「久しぶりに向こうに戻ってるってばよ」
三代目が死に、新たな火影として綱手を迎えにナルトが向かった時ルークも一緒にいた。綱手が火影になる事を決意したときにナルトとルークが『虚空』と『朱炎』だということを明かした。その際にルークの事情を聞いた綱手と自来也は三代目同様にルークを受け入れたのだ。



「そろそろ行き来するの飽きたから今回何もなかったら影分身置くのやめてとっとと老け髭ぶちのめして正式に移住するって言ってたってばよ」
ルークはもう少し老け髭の計画は早いと思っていた。いいとこ産まれて二、三年位、遅く見て四、五年程度だと。しかし、予想外に何も起こらない・・・というよりも何もないといった方が正しいのだ。ここまで来ればルークはどうでもいいか、と今回何もなかったらそれこそ向こうに影分身を残す事すら無駄だと判断したのだ。
「そうか。ならいいか」
綱手も妥当だろうとそう判断した。ルークに向こうの成り立ちを聞き、腐っていると綱手はそう感じていた。預言が昔から習慣づいているため、預言を神格化している。それで預言には人が歩む道を標しているという。しかし、こちらでは預言などというものは存在していない。何をするにも自分で考える、それが当たり前なのだ。向こうでは色々な選択肢を預言ひとつに委ねる、つまり考える事を放棄していることになる。
全てを決められた道順で行う・・・綱手は『無自覚で踊らされている人形劇』を世界規模で常時開催しているようなものだと思っていた。そんな世界自分ならゴメンだ、とも。だからこそルークの移住も納得出来るのだ。それに綱手はルークのことを嫌いではない、寧ろ好きだ。さっさと正式に里の住民として迎えたかったのだ。
「ご苦労だった、ナルト。下がっていいぞ」
「了解だってばよ」
そういいナルトはサッと姿を消した。
「何も起こらなければいいんだけどねぇ・・・」
ポツリと呟いた綱手の声には別の意味でルークを心配しているのが聞いてとれた。




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