焔と渦巻く忍法帖 第十六話

「・・・とりあえずこれでここでやることは終わった、じゃあシンクにサフィール。これから俺達と一緒に行動してくれるってば?」
眼鏡狸達に一瞥もくれず二人の確認を笑みを浮かべて取るナルト。だが口元がわずかに引き攣っているのを見た二人は、まだ怒りを燻らせているのだと見る。そこを突くのは危険だと判断した二人。
「うん、そうするよ」
「それでこれから何処に行くのですか?」
さりげに話題転換をしたサフィールに内心安堵するシンク、だが引き攣り笑みなナルトの顔は全く緩む事はない。
「マルクトだってばよ。ルークは影分身を使いに出して先に行くって伝えるから、俺達はさっさと行くってば」
「・・・つかぬ事を伺いますが、何故先に?」
ルークを待たなくていいのかと遠慮しながら聞くサフィールにナルトはそれはそれは楽しそうに、楽しそうに言葉を放つ。
「ルーク達が話を終えるまでこいつらとずっとせっまい室内で顔を合わせてろって?やだってばよ、殺したい!ぐちゃぐちゃに臓物ぶちまけたいのに、その衝動抑え切ろうとする我慢なんて後5分も出来ないってばよ!俺!これでも大分我慢してる方なんだから、直に顔見てたらいつうっかりで首や胴体が切り離されてるような事態引き起こしちゃうかもしれないから、優しさで言ってやってるんだってばよ?クーッ!やっさしー!俺!」
その尋常ではない一人劇場のテンションの高さに、全員が呆気に取られると同時に背筋に悪寒が走る。身振り手振り一つ一つがその言葉の動作の精巧さを表している、経験上の人間以外が出せる物ではなく、至って真剣さが出ている。
「つー訳でさっさと行くってばよ!あっ、サフィールは椅子に乗らないよーに。影分身二体分使ってサフィールと別に椅子を運ぶから」
「えぇ」
逆らう事など誰が出来ようか、サフィールの目の前で印を組み影分身を出した有無を言わさないナルトの行動に全員に緊張が走る。だが反応を示さないコウモリ娘に、ナルトはハイテンションのまま両脇を抱え無理矢理立たせ暗く落ちた顔に笑顔を突き合わせる。
「しっかりしろよ♪ここで死にてぇか?売られてぇか?はっきりしろってば♪」
「ヒッ!い・・・行く!行きます!」
笑顔を突き付けられコウモリ娘は即座に涙を浮かべ、壊れた機械のように首をガクガク何回も縦に振る。



事実この場で頼れるのは冗談ではなくナルトとルークだけだ。感情論などで自分は救われない、知らしめられた事実から眼鏡狸達を不信の目でしか見れない。

正しく公平な目で見て命を救えるのはルーク達、ここで見捨てられれば文字通り命が亡くなる。見栄も外分も関係なく命にこだわったコウモリ娘はもう・・・堕ちていた。


だが可哀相な物を見る目でコウモリ娘を見る眼鏡狸達は、より一層コウモリ娘を惨めに晒しているとは気付かずその泣き顔を見る。
「さ、行くってばよ!」
そんな眼鏡狸達に気遣う事なくナルトは兵士に扮させた影分身達に一同の体を担がせる。そしてその瞬間一斉に姿を消した一同。その場にいたのだと微塵も感じさせず、消え去ったナルト達はマルクトへと向かって行った・・・








明日は我が身



激震を震わせる使者は全てを巻き込んでいく



次は賢帝の地にて断罪の鎌が落ちる






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