焔と渦巻く忍法帖 第十六話

・・・これは正直賭け。だが、知らないまま魔物を従える能力をダアトや老け髭に食いつぶされたらアリエッタには心底で未来が見えない。だから俺はアリエッタを連れて来るからイオンからアリエッタが傷つく、クイーン殺しの心層を引き出してくれ。

・・・これが先程ルークがナルトに読唇術で語りかけた内容だ。

事実惑星屑と老け髭はアリエッタに事実を伝える気はないだろう。それはどんなに飾ろうが、ダアトへの束縛を意味している。何せアリエッタはイオンへの純粋な想いで、ダアトにいる。老け髭に関しては善意を持っているとシンクから聞いて認識してはいるが、被験者イオンに比べれば対比は確実に被験者に向く。故に二人は明かそうとしていた、アリエッタに全てを・・・

それが傷つく事になろうとも、今から潰す所にアリエッタを置きたくなかったから・・・





「変わった、か・・・。なぁアリエッタ、お前はそうなった理由が知りたくないか?」
「「・・・え?」」
そっと抱擁から体を離し、ルークからの真摯な姿勢にアリエッタとイオンが同じように声を上げる。だが表情は千差万別、アリエッタは泣きそうながらも聞きたいと興味を示し、イオンは大きく目を見開き意図を理解したのか続いて声を消え入りそうにあげる。
「しゅ、朱炎・・・」
「けどこれを聞くならアリエッタはふ・・・謡将や目の前のイオンから姿を消さなきゃいけなくなる。何せこれはダアトの在り方を根っこから揺るがす嘘なんだからな。それを聞いたらアリエッタは引き返せないし、なにより・・・耐えれなくなる」
「!!」
消え入りそうな声を掻き消し、ルークは真実を話すが聞くかどうかの確認を取る。イオンは嘘と聞き、体と表情がこれでもかというくらい分かりやすく強張らせた。
「・・・それでも、聞くか?」
最後通告、二択をどちらか選んでもらう。ここでアリエッタが聞きたくないというようなら、この場からアリエッタを外す。ルークはそう決めていた。



「・・・・・・聞きたい、です。アリエッタ、イオン様が変わった理由・・・教えて下さい、ルーク・・・」
長い沈黙の末、暗い表情から意を決した様子でアリエッタがルークに顔を見せる。相対しているルークはその表情から覚悟を決めたと確認すると、首を縦に振り次にシンクに視線を向ける。
「シンク、手っ取り早く説明するために仮面を取ってくれないか?」
「・・・いいの?こいつらの前で取っても?」
「構いやしねぇ。寧ろ必要なんだよ、こいつらの意識を引き締める為にもな」
「・・・わかったよ、けど出来れば取りたくないんだからね、こいつらの前じゃ・・・」
やれやれ、仕方ない。雰囲気が明らかに嫌だと語っているシンクは仮面に手をかけようとする。





そして外された仮面の下にあった顔は、一同を騒然とさせるものだった。



「イ、イオン様・・・!?」
「イオン様・・・えっ・・・!?でもシンク・・・えっ・・・!?」
その気怠さを隠しもしない歪められたイオンとは違う表情に、コウモリ娘とアリエッタが似たような反応で戸惑いを見せる。同じく似たような反応はイオンと眼鏡狸を煙デコを除き、倒れている修頭胸も同様に戸惑い。イオンは純粋な驚き、眼鏡狸と煙デコはそこまで意外ではないのか表情に変化はない。
「ねぇ、じろじろ見ないでよ。珍しい顔じゃないでしょ、そこに同じ顔があるんだからさ」
顎でイオンを見ろよと指して、シンクは睨みを効かせる。本気で視線が欝陶しいのだろう、目が鋭く緩む事がない。そこにルークの声が響く、助け船を出すように。
「仮面かぶっていいぞ、シンク。これで大体わかったろうからな、アリエッタ以外は」
その声に全員がルークに視線をやる中、シンクは淡々と仮面を被り直す。余程こいつらの前で取るのが嫌だったのか、その行動に迷いがない。
「アリエッタ。イオンとシンクが瓜二つに似ているっていうのはわかるだろ?それに俺とそこの現在ルーク・フォン・ファブレ様が似ているってのもな」
「・・・はい、今見た、です」
余程衝撃が強かったのか、多少の間が空きながらアリエッタが答える。だが事実を知る覚悟に陰りはないようで、いたずらに先を促そうとしない。そのことに順を追ってルークはまた話し出す。







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