焔と渦巻く忍法帖 第十六話
「本音で包み隠さず言え。お前はライガさえどうにかすればよかったんじゃないかってば?」
偽りはいらないと、述べるナルトの顔はただイオンを見据える。居心地がけしていいとは言えないその視線、イオンはゆっくり口を開く。
「・・・だって、しょうがなかったじゃないですか。僕は導師としてチーグルを守りたかったんです。ライガの事を考える余裕なんてそこまでなかったから、どうしてもチーグルの為に出ていって欲しかったんです。あの時ライガが僕たちを襲ってこずに、素直にチーグルの森から出ていってもらったらあんな事にはならなかった・・・」
この消え入りそうなイオンの言葉にようやくナルトは一瞬ではあるが、口元を吊り上げて歪める。これはイオンからすれば格段の進歩だ。聖人君子であろうと曖昧な優しさを振り撒き善人たろうとしていたイオン、だが今はライガを思っていたが始末するのは当然の流れだと認めた。はっきり言えばこれがイオンの導師という立場なら当たり前の、下の者に示しをつけるための心構えなのだ。
だがこの心構えと本音を引き出せた事こそ、ナルトの真の狙いに外ならない。
「じゃあチーグルの長に報告した時のように、あれはまさしくチーグルとエンゲーブの人達の為の行動だったんだってばね?けどそれが叶わなかったから、イオンはルークとコイツに戦う事を願った、と」
指を修頭胸に指し、ナルトは微細な期待を持ちながら頭を下げたイオンの答えを待つ。
「・・・はい、そうです」
はっきりとした肯定の言葉が室内に染み渡っていく。いや、イオンの辛そうな言葉は既に室内から零れ落ちていた。
‘ガチャッ’
唐突に開かれた入口の扉、自然と静かになっている室内にいた人間の視線が注がれる。
「話は全部聞かせてもらったぜ」
するとそこにはルークの姿が・・・いや、正しくはルーク一人ではなかった。室内に入っていくルークの右手だけは後ろに伸びている。その右手の先、ルークに手を引かれながら一緒に入って来たのは・・・呆然としながら蒼白といった顔色のアリエッタだった。
「イオン、アリエッタには悪いけどはっきり聞かせてもらったぜ。お前がアリエッタの母親をはっきりと否定する声をな」
「!?」
驚きの表情から察するに、アリエッタの母親がクイーンだと知っていたのだろう。ただあのライガだと思っていなかった、というのが真実イオンの気持ちなのだろう。
だがイオンを擁護する気が全くないルークは、体をブルブル震えさせるアリエッタの体を優しく包み込みながらも尚責めの手を緩めない。
「イオン。アリエッタの母親を殺す事をはっきりと認めたのはお前自身だ。その事実を知ったお前はアリエッタにどう謝罪する?前導師守護役だったアリエッタの事情を知らなかった訳じゃないんだろ?」
「そ、それは・・・」
どう取り繕うか、優しいのに冷たさを感じるアリエッタを抱きしめたルークの言葉にイオンは言葉を探そうとする。
「・・・あれは、仕方なかったんです。それにクイーンがアリエッタの母親だって思わなくて・・・本当に、すみません」
だがいい言葉が見つからなかったのか、馬鹿正直にイオンは気まずそうに頭を下げる。だが仕方ない、で済ませ頭を下げる事だけで全てを済まそうとする言葉が心に届くはずがない。悲しみに浸った人間の心を動かすのに、仕方ないは一番心に響かない言葉だ。
「・・・イオン様、変わった、です。ママの事、アリエッタは大切にしてたの、イオン様にもたくさん話しました。けどイオン様、仕方ないってママの事死んでよかったって、変な事言いました。前のイオン様だったらそんなこと、言わなかった、です・・・」
「うぅ・・・」
ルークの肩に埋もれた顔を上げ、アリエッタは嫌疑に満ちた瞳をイオンに向けながら言葉を放つ。向けられた好意ではない感情、アリエッタからの初めての物にイオンはうろたえる。
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偽りはいらないと、述べるナルトの顔はただイオンを見据える。居心地がけしていいとは言えないその視線、イオンはゆっくり口を開く。
「・・・だって、しょうがなかったじゃないですか。僕は導師としてチーグルを守りたかったんです。ライガの事を考える余裕なんてそこまでなかったから、どうしてもチーグルの為に出ていって欲しかったんです。あの時ライガが僕たちを襲ってこずに、素直にチーグルの森から出ていってもらったらあんな事にはならなかった・・・」
この消え入りそうなイオンの言葉にようやくナルトは一瞬ではあるが、口元を吊り上げて歪める。これはイオンからすれば格段の進歩だ。聖人君子であろうと曖昧な優しさを振り撒き善人たろうとしていたイオン、だが今はライガを思っていたが始末するのは当然の流れだと認めた。はっきり言えばこれがイオンの導師という立場なら当たり前の、下の者に示しをつけるための心構えなのだ。
だがこの心構えと本音を引き出せた事こそ、ナルトの真の狙いに外ならない。
「じゃあチーグルの長に報告した時のように、あれはまさしくチーグルとエンゲーブの人達の為の行動だったんだってばね?けどそれが叶わなかったから、イオンはルークとコイツに戦う事を願った、と」
指を修頭胸に指し、ナルトは微細な期待を持ちながら頭を下げたイオンの答えを待つ。
「・・・はい、そうです」
はっきりとした肯定の言葉が室内に染み渡っていく。いや、イオンの辛そうな言葉は既に室内から零れ落ちていた。
‘ガチャッ’
唐突に開かれた入口の扉、自然と静かになっている室内にいた人間の視線が注がれる。
「話は全部聞かせてもらったぜ」
するとそこにはルークの姿が・・・いや、正しくはルーク一人ではなかった。室内に入っていくルークの右手だけは後ろに伸びている。その右手の先、ルークに手を引かれながら一緒に入って来たのは・・・呆然としながら蒼白といった顔色のアリエッタだった。
「イオン、アリエッタには悪いけどはっきり聞かせてもらったぜ。お前がアリエッタの母親をはっきりと否定する声をな」
「!?」
驚きの表情から察するに、アリエッタの母親がクイーンだと知っていたのだろう。ただあのライガだと思っていなかった、というのが真実イオンの気持ちなのだろう。
だがイオンを擁護する気が全くないルークは、体をブルブル震えさせるアリエッタの体を優しく包み込みながらも尚責めの手を緩めない。
「イオン。アリエッタの母親を殺す事をはっきりと認めたのはお前自身だ。その事実を知ったお前はアリエッタにどう謝罪する?前導師守護役だったアリエッタの事情を知らなかった訳じゃないんだろ?」
「そ、それは・・・」
どう取り繕うか、優しいのに冷たさを感じるアリエッタを抱きしめたルークの言葉にイオンは言葉を探そうとする。
「・・・あれは、仕方なかったんです。それにクイーンがアリエッタの母親だって思わなくて・・・本当に、すみません」
だがいい言葉が見つからなかったのか、馬鹿正直にイオンは気まずそうに頭を下げる。だが仕方ない、で済ませ頭を下げる事だけで全てを済まそうとする言葉が心に届くはずがない。悲しみに浸った人間の心を動かすのに、仕方ないは一番心に響かない言葉だ。
「・・・イオン様、変わった、です。ママの事、アリエッタは大切にしてたの、イオン様にもたくさん話しました。けどイオン様、仕方ないってママの事死んでよかったって、変な事言いました。前のイオン様だったらそんなこと、言わなかった、です・・・」
「うぅ・・・」
ルークの肩に埋もれた顔を上げ、アリエッタは嫌疑に満ちた瞳をイオンに向けながら言葉を放つ。向けられた好意ではない感情、アリエッタからの初めての物にイオンはうろたえる。
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