焔と渦巻く忍法帖 第十六話

「実際俺らとしては身内ひいきだけは勘弁してもらいたいんだってばよ。ただでさえ預言って盾を出されたら口と立場じゃ形勢逆転しにくいのに、あからさまに大義じゃなく私怨で発言されたら取り合われないかもしれないのに。ねぇイオン、世の中そうそうチーグルの森で起こったような都合のいい展開ってないんだってばよ?」
「・・・え?」
突然の話題転換、その矛先が自分に向きイオンは青い顔ながら理解を出来ずに怪訝に眉を寄せる。
「だってクイーンとの交渉に失敗しました、殺されかけました、運よく誰か助けに来ました、それでクイーンを倒してめでたしめでたし、なんて展開もうある訳ないんだってばよ?これからは。だって俺らはイオン達がポカした瞬間、首を跳ね飛ばしていく訳だし。都合のいいお前らにとっての援軍はいないしね」
「そ、それは・・・」
「それに交渉術に関してもチーグルの森でお前は愚昧だって証明してるってばよ。確かチーグルの長老に説得するとか言いつつ、森からの立ち退きしてくれとだけをライガに言ったよな?ミュウ」
「は、はいですの・・・」
ナルトの強い視線に修頭胸の持っていた袋の中から顔を出す、ミュウ。今までミュウが顔を出さなかった理由、それは発言権すら許さないようなルークとナルトの殺気を浴びたが故だ。現にオアシスで一人置いてけぼりにされる形になったミュウは、修頭胸達からの何があったかという質問にミュウは何も言わなかった。それは野性の獣にのみ感じられた危険の匂いが、ルークの事実を言う事を袋ごしにミュウに思い留まらせていた。以降ミュウはルークがいない事に暗い表情を修頭胸達の前で見せていたが、それははっきりとルークが怖いという単純なものだった。
現にナルトの問いかけにおどおどとミュウは答えている。
「はいはい、そうだよね。それが甘いんだってばよ。イオン、もしキムラスカや惑星屑の説得を試みたとして預言を廃止してください。そう言ったところで誰も首を縦に振る訳がないって言えるってばよね?」
「・・・はい」
「今の話から転換して、クイーンを思い出してみろ。あんな言い方でクイーンが従うって、今から考えて思う?」
「・・・あれは、仕方なかったんです。ライガがあのまま森にいたらチーグルが苦しんだし、エンゲーブの人達にも食糧の問題が・・・」
「今更何なの!?例えに出すのはともかく、もう終わった事よライガの事は!それにライガは退治されてとうぜアゥッ・・・!?」
またシュンとしながら仕方ないと宣う学習のないイオンを擁護しようと、修頭胸が主のイオンの言葉を遮りながら怒鳴りちらす。だが途端に悲鳴に近い声が響き、床にいきなり倒れ伏せた修頭胸。その光景に全員がア然とする中、ナルトが膝を屈めて頭を指で突く。
「俺はルークじゃないから、障気解放の合図は律儀に出さないってばよ。俺も障気丸は扱えるから、不用意な発言したら今のような目に合うからな」
当然と言えば当然だが、ルークだけ使えてナルトだけ使えないなどという状況下で障気丸を作ったりはしていない。二人のチャクラを織り交ぜて作った障気丸は正しく、『二人だけ』しか扱えない物。
それを知らないとはいえ、合図無しに障気を全身に流された修頭胸は息も絶え絶えにナルトをゆっくり見上げる。そこには興味なく、冷めた瞳で頭をまだ突くナルトの顔。だが見上げた瞬間、ナルトは興味すらなくしたのか、修頭胸をほっときイオンに体を向けて立ち上がる。もちろんというか、何と言うか修頭胸は立ち上がれない。ナルトはそのままで話す気しかないのが丸分かりだ。
「仕方ないって言ってるけど、お前は結局クイーンが死んでいなくなった事をチーグルの為だって言ってるよな?なぁ、自分で言ってておかしいと思わなかったかってば?ライガの事を思ってはいた、けど殺したから安全だ。矛盾だってばよ、この発言」
「っ!」
吐き捨てるように矛盾を突き付けられ、イオンの声が止まる。
「結局お前はライガがいなくなることしか考えてなかったんだってばよ。人がいる、教団の聖獣チーグルがいる。だから仕方ないって言葉で逃げてるんだってばよ。本音を言ってみろ、あの場からライガがいなくなればそれでよかった、穏便な手段が通らなかったから力ずくで俺達に倒させた。実際お前、ライガの結末は全く考えてなかっただろ?だからライガに行き先も用意せずに出ていけって言ったんだろ?」
ナルトはただ答えをイオンに求め、イオンはどう返せばいいかとただ四苦八苦しながら惑っている。ただイオン達は気付いていない、話の焦点がズレていることに・・・








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