焔と渦巻く忍法帖 第十六話

「それにマルクトに関して、事実上の宣戦布告だと見られて戦争を仕掛けられてもおかしくない事。イオンだけじゃなく猪もキムラスカとしてダアトに協力して、マルクトに侮辱の言葉を送ってるような迂闊なもんだってばよ」
「えっ・・・!?」
ここで矛先が猪思考姫に向いた事で心外だと本気で驚く。
「言ったってばよね?いたいけな少女になんて事を!なんて。馬鹿馬鹿しいってばよ、目先の小を取ってマルクトの被害って大を見ようともしないなんて」
「マルクトの被害・・・?」
「・・・説明するのも馬鹿らし。けど、説明しなきゃ話にならないから言うってばよ。マルクトの被害はあらゆる意味においての国を考えてない越権行為だってばよ」
「「「「・・・!?」」」」
直接な表現でなければ理解出来ない。だがそんな疑問を隠しもしない一同に、ナルトは前置きを敢えて行う。
「まず一つはマルクトからの和平に対して仲介の依頼を妨げるような情報を惑星屑に渡した。これはすぐにマルクトへの害意が裏切ってるかどうかの次元じゃなく、伝わってくる。結果マルクトの和平なんかどうでもいいって、証明してる。二つ、イオンを取り戻す為にセントビナーやエンゲーブに神託の盾が見張りを置いた。これは市民の生活がイオンを探索するために脅かされたんだってばよ、神託の盾にもたらされた情報のせいで・・・ねぇ、死体漁りの眼鏡さん。これって普通、マルクトってどう扱う?預言があるとかないとかで、ダアトに反論出来ないとか言うのはどっかにすっ飛ばして考えても、ダアトが被害与えてないって言える?」
「・・・大佐・・・」



ナルトの質問という針の筵からの状態に、修頭胸が擁護をするだろうと眼鏡狸を呼ぶ声を出す。だが何も答えようとせずに、眼鏡を押し上げる姿を見てサフィールがそのポーズの意味を冷静に分析する。
(・・・子供の強がりみたいなものですね。思えば昔から彼は自分の意に沿わないものは認めようとはしていなかった・・・)
自分の意志を多少なりとも汲み取ってくれる人間以外には総じて見下した態度を取る、だが自らがおとしめられる事は何よりも嫌う。今のサフィールから見て、眼鏡狸という人物に対しての評価は器量の狭い頭でっかち。それは素直に自らをなんとも思っていないナルトに対しての意地であり、真実だというのにナルトからの話だと認めようとしない安っぽいプライドの現れだとサフィールは見ていた。



「何も言わないなら言っちゃうってばよ?決定的な三つ目」
修頭胸と眼鏡狸の半ば睨み合いに近い互いの言葉を待つ二人の中、ナルトが元気よく口を開く。



「三つ目は・・・タルタロスが襲われた事」
だが途端に落とされた声に一同が一人を除き声を無くす。
「・・・タ・・・タルタロスは私が襲ったんじゃない!そこにいるシンク達じゃん!」
ただ一人反論に転じて来たのは矢面に立っているコウモリ娘で、顔を青くしながらもシンク達二人を勢いよく指差す。
「その事実は変えようがないのは確かだってば。実際襲ってるんだしねぇ、二人とも」
「えぇ、それは確かです」
「でもここまで言われてあんた、自分の責任がないなんて言える訳?」
なんの反発もなく認められた、そのことにコウモリ娘の瞳が戸惑いで大きく開かれコロコロ動く。反応からして自己弁護に入るのを期待し、そこを攻め立てたかったのだろう。だがシンクから言われた言葉にどう反撃するかも忘れ、止まるコウモリ娘。



「僕らにタルタロス襲撃を命じたのはあんたからもたらされた情報を得た大詠師、惑星屑なんだよ」
シンクの言葉が今度こそ全員を沈黙させる。だが今は自分の番だと主張するかのように、シンクの声は響き続ける。
「今言ったナルトの前二つの事柄と併せてみなよ。確かに僕らは実行犯だ。だがあんたは今言った三つの事柄に1番根っこの情報提供っていう、マルクトに被害を被らせる行動を取ったんだ。それを指揮した人間の手先で国に不利益な情報与えてるのに、自分は情報を流しただけで悪くない・・・なんて勢いでも言えるなんて虫酸が走るね、ここまで来ると。惑星屑の手先って時点で破滅物の立場なのに、マルクトがそれを知ったらどう思う?もうダアトに信頼を置けるはずがないってイオン含んだローレライ教団はマルクトから外交を断絶、即刻の身柄引き渡しをマルクトから戦争を餌に求められるだろうね。死霊使いやキムラスカの馬鹿姫なんかは反逆や戦争推進派だって言われそうだけどね、こんな罪まみれな小娘を無条件で許せなんて言っちゃったし。これを報告したら少なくてもあんたらはマルクトの損を全く考えていない、無能にしかならないよ」
開き直りに似たあっけらかんとしたシンクの言葉、だからこそ自覚している者の言葉は強い。何も言えない複雑そうな顔に、シンクは鼻で笑った。







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