焔と渦巻く忍法帖 第十六話

「・・・ククッ、解るか?この報告書を出した奴ってのはどう見積もってもイオンに対して味方じゃねぇんだよ。大詠師っていう対立している人物に情報流してんだ。それ踏まえて情報流せそうな立場の人間って誰がいると思う?」
前を向けない、ナルトは片隅で頭を垂れるコウモリ娘を見続ける。ここまで明らかにしているというのに、私ですと自ら言わないのは単なる淡すぎる希望だろう。バレてない、バレてるはずがないと。そんな泡沫以下に消えやすい物、持つだけ無駄だろうとナルトは冷ややかな視線を送るとともにルークを見る。
するとルークはうんうん唸り、答えが一向に出て来る気配が見えない一向に黒ズボンのポケットに手を突っ込み、一つの紙を取り出す。そしてその紙が現れた瞬間、音に気付き顔を上げたコウモリ娘の顔は蒼白どころではなく、一瞬で土気色とも言える顔色になり壁際に張り付く。
(終わったってばよ)



「これが何か解るか?これはある場所で手に入れた手紙だ。中身を見てみろ」
その紙はカイツールでルーク達が手に入れた、惑星屑に宛てたあの報告書。その紙をルークが眼鏡狸に押し付けると、一同は全員コウモリ除き集中してその紙を見る。
「・・・っ!これは・・・」
「あ~、解るか?これはいわゆる報告書だ。カイツールにいたっつーのは中身を見れば分かるだろう。これとこれ。文章書く時の文字と癖を比べれば一目瞭然、こいつらを書いたのは同一人物だってすぐに調べがつくぜ」
この世界には写輪眼はない。写輪眼持ちがコピーした文章でなければルークとナルトは同一人物が書いた物かどうか、すぐに見分けがつく。これはルーク達は同一人物が書いた物だと断定した、その時点で二つが繋がるのは揺るぎない決定項だった。
「ここで更に問題発生だ。イオンが出て来た事を惑星屑に伝え、更にこの手紙はさっきも言ったがカイツールからバチカルにいる惑星屑の元に届けられようとしたのを影分身が鳩の後を追わせた事でわかった。つまり・・・イオンの居場所を逐一教えてた奴はマルクトに行く時からずっとダアトから付いて来てたって事だ」
「「「「っ!!」」」」
まさか、そんな事がと驚く面々。だが驚きの吐息に消されるかのようにナルトの耳にある声が聞こえる。
「嘘・・・嫌・・・なんで、あれが・・・」
誰にも言えないと抑えてあるが信じたくないのか、蚊の泣くような声に絶望がこもっている。頭を抱え、引き攣った顔を見るとナルトはルークに声をかける。
「驚いたってばね、ルーク。だってまっさか」



「朝こっそり宿を出て行った人物を追っかけたらこの報告書出してたんだし。そしてその人物が導師の命を守るはずの導師守護役だったのが更に驚きだったってば」



何もない静寂が辺りを包み込む。だがその静寂はルークの発言ですぐに打ち破られる。
「実際驚きだったな。主を裏切るなんて、俺らには有り得ねぇ。驚きより呆れが強かったってのが、正直な感想だけど」
「・・・ちょっとお待ち下さい、朱炎。アニスが・・・スパイ、だと?大詠師の・・・?」
「そうだよ。状況が示してるじゃん、こいつ以外俺の証拠に当て嵌まる奴いねーし。つーかこいつの行動ではっきりわかんじゃん、反論一切出てこねーし」
コウモリ娘をルークが指させば、ビクッと体をのけ反らせ壁に背中を隙間がないほど密着させ、扉に逃げ出したそうに視線を向けた姿が目に入る。実際に逃げ出したいのだろうが、扉の前にはナルトだ。一か八かなんて可能性は全く感じれないのだろう。
「ほ、本当なの・・・アニス・・・?」
「嘘と言ってくださいまし・・・」
女二人がコウモリ娘の変貌に信じられないから否定してくれという。ただそれは信頼からではなく、ただルークの言葉を否定したいからだ。前なら証拠提供しようが出てくる声はルークが悪いと、あしらおうとするものだ。ルークに対しての優劣で優位に立って見ていたと思っていた頃は共にいた、だから私の言葉を受け止めてくれるだろう。共に責める事が出来るようになるのだから。
そんな信頼がかけらも見えない、ただの我が儘にルークとナルトは醜いものだと思うしか出来なかった。




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