焔と渦巻く忍法帖 第十六話

「・・・ねぇ、なんでこいつらもここに来てるのさ?はっきり言って必要ないじゃない」
「おー、サフィールと同じ反応だってば。まぁシンクは元々素だし、違和感全くないってばね」
嬉しそうにシンクの悪意を隠そうともしない言葉に、ナルトは全員が室内に入り終わった瞬間入口の扉に近付き扉を閉める。そのままナルトは扉に背をもたれると、腕組みをして不動の体勢に入った。
「連れて来たのにはちゃんと理由があんだよ。シンク、多分だけど今お前が持ってる資料が俺達の求めてるもんだ。ちょっと見せてくんねぇ?それ」
爛々と輝く瞳に悪戯を楽しむような笑顔で手を差し出され、シンクは意図を理解し呆れているような笑みを口元に浮かべ無言でそれを手渡す。だが意図をシンクと違い理解出来ない他の面々は口だししたそうにしている。ただ一人部屋の隅で、俯きフルフル体を震わせている者を除き。



資料をパラパラと速読していくルーク、その束を全て後ろまで読み切ったルークはその瞬間に一つ紙を中から抜き取り、眼前に突き付けるように上部を二本指で挟み紙を出す。
「知ってるだろ?タルタロスに襲撃に来たのは間違いなく六神将だ。それは生き残りの俺達、そしてシンクとサフィールとアッシュが証言出来る。・・・おっと、アッシュはもういないんだ。すみません、ルーク・フォン・ファブレ殿?」
うっかりしたと、顔を緩く申し訳なさそうにするルーク。視界に未だアッシュに未練を持ってるのか睨みつける煙デコの姿など知った事ではない、これはシンクとサフィールに遠回しにアッシュとして扱うなと言うためだ。二人も向こうでファブレの名ではなく猿飛の名を名乗っているとコーラル城で聞いている、意図は分かるだろうとルークは煙デコを意識的にわざと無視しながら話を続ける。
「・・・で、そこで重用なのは誰の意志でタルタロスを襲ったのかって事だ。そこでこの部屋の主に命じられたってシンクとサフィールに聞いたんだ。それでこの資料を見てみろ、これがその証拠に繋がんだよ。これは導師イオンがマルクトに向かったっていう報告書だ。おまけに中身はマルクトに和平の仲介の為に行ったって詳細な理由付き、しかも報告書に書かれている日付から逆算しても恐らくダアトから出発して二三日か遅くても一週間内にこれは出された。おかしいだろう、何にも知ってるはずがない大詠師の惑星屑の部屋にこれがあることが。ちなみに聞くけど、シンク。これは未開封だったか?手紙の状態で」
「いいや、ちゃんと開けてあったよ。あいつはこう言った書状は自分宛てのは見なきゃいけない立場にいるからね、大詠師だけしか見れないような物もあるから自ら確認はしてるし・・・一応ね」
「あんがと。嫌いだってのはよく分かった、うん俺も嫌い。それでまぁ確認はまだしてないけど、確実に惑星屑はこの報告書を手にした後キムラスカに直行したんだろうな。預言をちゃんと遂行するために。そしてこんな物がちゃんと開封されてるのに言うか?導師がマルクトの死体漁り大佐っていうご立派な代表とともにキムラスカに来てるのに、あんなあからさまに焦った探したって言葉。情報をまとめりゃどう考えても嘘はついてるだろ?」
「あ、あぁ・・・確かにそうだが・・・」
フェミ男スパッツがその説明に戸惑いながら答える。まだ真意にはたどり着いてはいないが、それでも確実になっていく惑星屑の裏側に全員が息をすることすら忘れひたすらにルークの話に必死の形相になっている。ただ一人、先程より酷く顔を青くしているのを除いて。






「・・・さて、ここで更に一つ問題だ。こんな物を出した奴って、誰なんだろうなぁ?イオンと死体漁りがマルクトに行ったってこれを出した奴は誰なんだろうなぁ?」
だからこそルークの目に、その怯えたビクッという反射行動が綺麗で滑稽に見えた。・・・そのコウモリの姿が。






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