焔と渦巻く忍法帖 第十五話

「第二に、ルークの実力を見たお前らなら分かるだろうけど本来ならあの家から音もなく姿を消す事くらいルークは普通に出来た。けどルークが何も告げずに屋敷から出たなら待っていたのは・・・ルークの代わりに作られた新しいレプリカがまたそこに転がってる老け髭が適当な所から見つけて来たって嘘ついて、新たに現れたレプリカが屋敷に送られるだけの結果だってば」
「そ、そのようなものすぐに見分ける事は出来ます・・・」
「出来ねぇから今までルークを本物だと信じて疑わなかったんだろ?現にそこのオリジナルが本物だって他人の口から聞いてやっとルークは違うんだって認識してたってばよ、お前は。本物偽者を他者から聞かなけりゃはっきり考えを決めれない、意見をコロコロ変える自分の意志がない愚姫が見分けれるか自信があるって口にするなってば」
「・・・っっ!!」



実際にこの世界にナルトが来た時にルークが見切りをつけて移っていたら確実に老け髭は代わりのレプリカをすぐに作り、「・・・で発見したから連れて戻ってまいりました」などと嘘を全面に押し出した苦しい言い訳をつけてそのレプリカをファブレの家に置く事にしただろう。そのレプリカがルークとは違うという事をキムラスカが気付けるかどうかははっきりと言えば、皆無だろう。ルークがタイミングを変えてある程度成長した段階でファブレから消えたとしても新たなレプリカが置かれるであろう時、誘拐のショックでまた記憶がという嘆きだけで終わる可能性が非常に高いからだ。

そして我が道を直進だけで突き進む猪ではあるが、周りに流されやすい自分が無いというより綿毛以下に軽い頭脳の猪思考姫のことだ。可哀相にまた、だが約束を思い出せばすぐにそんなハンデは取り返せるなどとろくに怪しいと思いもせずにその新たなレプリカを煙デコに重ねて見ていただろう。



はっきりとナルトが告げているのは、自分の考えでルークと煙デコの二人の差異にすら気付けなかった奴が何を言う、という物だった。その声に悔しそうに歯を噛み息を呑む猪思考姫の姿がナルトの横目に移る。だが今更事実を言って、検討違いな恨みの視線を向けてくる程度の事などナルトは相手にしない。
「それで本来ならレプリカは赤ん坊のような真っさらな何も知らない状態で産まれるっていうのが、通例なんだってば。でもルークはなんでかは知った事じゃないけど最初からちゃんとした知識を持ってた。でも新たに作られる事になるかもしれなかったレプリカにもそんな事が起こるとは限らなかった。だから超振動欲しさに命を塵芥にしか思ってないこの髭オヤジの犠牲になるかもしれなかったレプリカの為に、ルークは黙ってたんだってばよ」
猪思考姫を罵る事から一変したレプリカの為だと述べるナルトの声は更に続いていく。
「それにもしルークがいなくなってたら俺もこんな所に来る意味がなかった。それは真実を知ろうとする人員がいなかったって事だってばよ。もし新たにファブレに送られたレプリカが知識も何もないレプリカだったならここまで知る事も・・・アクゼリュスで死んでたかもしれなかったって事、理解してる?」
自分達がいたからこそ今お前達は無事にいる、考えに文句を言うのは命がなかった物と同義だ。正しく述べられ、その意味に達した一同は何も言えるはずがない。新たに置かれるレプリカの事だけを口にすればまだ多少反論の芽は出ていただろうが、自らに災難が降り懸かってくるとなればこいつらの思考は別になる。結果命が助かったからレプリカごときに温情をかけていた事など瑣末な事だと思っているに違いない。違っていても当たらずとも遠からずという所だろう。
だからこそナルトはルークを今でも敵視に近い悪意でしか見ていない、こいつらを許す気はなく手の内に留めるような発言にだけ納めておいた。



「着替えてきたぜ、ナルト」
ブリッジの扉が開き、ルークの声がナルトに届いて来た。扉から入って来たルークのその姿格好はこの世界で着ていた服ではなく、忍が好んではくサンダルに黒いズボンとふともも辺りにホルスターを身につけ、上は黒いロングTシャツに身を包んで首元に木の葉の額当てをかけており、長い髪の毛は後ろで結んである姿だった。







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