焔と渦巻く忍法帖 第十五話

「さ、ルークが来るまでゆっくりしといていいってばよ?けど余計な事はしないよーに」
集中が集まる中、ナルトは笑顔を崩さず出口近くの壁に近寄り背中を預けてもたれ掛かる。さりげない動作ではあるがこれは突発的に逃げ出そうとしないように釘を刺した物だ。
「・・・なぁナルト。お前もルークがアッシュにルークって名前を名乗る事に賛成したんだろ?なんでお前はルークの事をルークって呼ぶんだ?」
逃げ出した時に自らに動きの少ないように配置したナルトに、フェミ男スパッツが不満げに声をかけてくる。
「なんで?それは俺にとってルークっていう人間は今出て行ったルーク以外にいないからだってばよ。そっちが本物のルークかどうかなんて関係ないし、七年の付き合いの呼び方を変える気は任務以外では更々ないってばよ」
当たり前のようにナルトは鼻で笑いながらフェミ男スパッツを見下す。しかしその言葉に今度は煙デコが反応を示す。
「・・・おい、七年の付き合いだと?ってことはテメェは最初からあいつがレプリカだと知ってやがったっていうのか・・・?それにいつからあの屑と会ってやがった・・・っ!?」
‘ヒュンッ、ガッ’
「口が悪いってばね?そんなにお仕置きされたいの、オリジナル様?ルークと同じ顔いじめるのって罪悪感があるんだけどなぁ」
ナルトの手元から投げられたクナイは顔の横を通り過ぎて行った。だが困り声であるのに顔は無表情に、一切口以外動いていない。
「余計な発言はもうしないって約束してくんないかなぁ?ルーク侮辱されたら俺、ルークみたいにけじめつけに来た訳じゃないから早めにケリをつけるために皆殺しにするってばよ?」
その言葉に皆が戦慄を覚え、全員が無意識に一歩下がる。だが眼鏡狸は表面上だけは顔は変えてはおらず、他の面々はほとんどが恐怖に顔を歪めガタガタ足まで震えさせている。それだけの脅威がナルトから感じていたのが分かる。
「あぁ返事はいらないってばよ。心にもない謝罪なんて期待しないし、不機嫌そうな声でわかったって聞いてもムカつくだけだし」
むしろ不機嫌だと言えるのはナルトの方だと簡単に感じれる、煙デコの返答を待つまでもなく切って落とすその口調。だがそれ以上にその眼が煙デコを冷たく打ち据えていて、煙デコも何一つ言えずに黙ったままだ。
その様子にナルトは冷たい視線を向けるのをやめ、代わりに視線すら向けずにあさっての方向を向いて口を開いた。
「まぁルークと初めて会ったのはルークが言うに生まれてから一ヶ月程度だってばよ。その時に自分がレプリカだってルークは明かしてくれたってば」
「ちょっとお待ち下さい。という事は自分がレプリカだと知りつつファブレにいたと?ならば何故その事を言わなかったのですか!?そうだと言っていただければキムラスカはすぐさまルークに戻ってもらうよう、手を尽くした物を!」
煙デコへの一応の返答を返していると早く明かせばよかっただろうと、猪思考姫が批難めいた響きを存分に含ませて突っ掛かってきた。
「そんなもんちょっと考えりゃ分かる事だってば。色々理由はあるけれど、言わなかった主な理由はルークからすれば二つ。まず一つはそれを言えばルークはキムラスカに殺されるか、それに準じた態度を取られたからだってば」
「・・・え?」
「実は自分はレプリカで、本物はダアトにいますって言ったらキムラスカが取る対応なんて二つしかないってば。ルークがおかしくなったって誰も信じなかった場合、完璧に誰とも会えないように監禁して、洗脳紛いな強制普通人間教育。自分の考えが徹底的に変わりきるまで教育が終わらないなんて死んだのと同じようなもんだってば。それで次にその言葉を信じた場合、禁忌技術から生まれたルークの存在を明るみに出さないように殺されるってばよ。禁忌ってのは文字通り、忌み嫌われ禁じられた物。そんな存在普通は許されるはずがない。殺される可能性が高いって知ってて正体ばらす気になる?もしばらしたら命ないって知ってて言える?自分は偽物ですって、ねえちゃんなら」
馬鹿に諭す、ではなく馬鹿に分かるようにかみ砕いた説明に猪思考姫は途端に無言になり目をキョロキョロさせている。立場を考えて、どうなるかを少しも考えてもいない。発言の一つ一つが勢い任せな猪思考姫にもう一つの理由を話すべく横目で見ていたナルトは出て来る溜息を隠しもせず吐き、再び口を開く。





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