焔と渦巻く忍法帖 第十五話

ナルトは海老ぞり状態でまだ寝ている煙デコに近寄り、屈むと幻術を解く解の印を組む。すると煙デコはうっすらと眼を開ける。
「眼は覚めたってば?」
「・・・テメェは!?」
「起きたばっかなのにうるさっ。まぁいいってば。とりあえず拘束は解いてやるから、余計な真似はしないよーに」
笑顔を見せてそのまま手足を縛っていた縄をクナイで切り絶つ。やたら起きぬけに元気な声を放つ煙デコは縄が解けた事を確認すると勢いよく立ち上がった。
「よぅ、久しぶりだな」
「・・・お前はっ!」
満面の笑みを浮かべるルークに顔いっぱいの怒りを表す煙デコ。対照的な表情を見せる同じ顔の二人だが、行動に絶対的に余裕が見られないのが煙デコだ。
「・・・学習しねぇな」
ルークを見るや否や腰元の剣を抜き、煙デコは即座に切り掛かろうとする。
だが激情に任せた弱者の剣にルークがあっさり斬られるはずもなく、自らも持っていた剣で振りかぶられた剣を振り切られる前に無造作に放った一振りで根本を叩き折る。舞い上がった白刃を見る事が出来たのはナルトのみ、瞬きすらしていないのにその瞬間は他にいた人物には誰も見る事が出来ない。だがその瞬間刃を折られた事を理解していないのは、当の煙デコ本人だった。



「・・・っ!?」
「落ち着けよ、バーカ。いや、落ち着かないから馬鹿なんだよな。なぁ、ナルト?」
「その通りだってばよ」
切り掛かった煙デコ、その表情には一転驚きしか現れていない。それも当然だろう。一瞬にして地面に大の字にうつぶせに臥して、その背中にルークが座りケタケタと楽しそうに自らを止めたと言わんばかりの発言をナルトとしているのだから。
‘ガッ’
すると叩き折った刃がちょうど煙デコの首筋を掠るように床に突き刺さる。
「はい、また死にー。ちなみに言っとくけどこの刃はお前の首だぜ?これを折らずに俺は首を刃のようにはね飛ばす事も出来た。分かるだろう?手元に残っている感覚が俺に敵わないって」
近く耳元に来た楽しいと隠しもしない声に、煙デコはようやく右手の感覚に注意を持っていく。だがその瞬間煙デコの顔が「ぐあっ・・・!」と痛みによって歪んだと分かる顔と声が、面々の眼と耳に届いた。
「・・・軽く見ても骨にひびが入ってる程度だってば。よかったな、手首が吹き飛ばなくて」
その様子にナルトがおもむろに煙デコの手を取り、慰めに聞こえないような慰めの言葉をかける。だがこれは立派な慰めだ、ナルトからすれば。手首が吹き飛ぶ、というのは比喩でもなんでもない。その気にルークがなれば、右手首ごと切り落としていてもおかしくはなかったのだから。
「よーく覚えとけよ。お前じゃ俺を殺せない、そして俺はお前を殺さない。今の状況からわかんだろ?生かされてる、ってことが」
喋りながらもルークはナルトから煙デコの手を受け取り、左手にチャクラを込めて右手を治していく。そして治療し終え、満足げな口元で魅せる笑みと目元で冷酷な笑みを同時に浮かべつつ煙デコの手を引き自らとともに立ち上がらせる。その行動に煙デコは未だプライドというか、勘違いを残しているようでルークに殺意を表情満面に見せている。だがそれが既に負け犬の遠吠え、虚勢から来る反抗心だとわかっているルークはスラスラと続ける。






「言ったな、俺は。起きたら全てを教えてやるって。だから全て話してやるよ、オリジナル様?」






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