焔と渦巻く忍法帖 第十四話

「これで分かったか?てめぇらがどんだけ無思慮な行動を取ったか?」
「・・・ルーク~、結局こいつら理解しきれてないような表情してるってばよ~?」
イオンの放心した姿に、ルークは腰を落として視線をイオンに合わせる。だが理解したかというルークの質問に答えたのはナルトのやけに疲労感溢れる声。その声にルークが顔を向けると、やけに挑戦的に目をぎらつかせている女性陣の姿が目に入って来た。
「・・・はぁ。ま、いっか。なんだ?何が言いたいんだ?」
ナルトの声の理由に気付いたルークは仕方がないとあからさまにやる気を失わせ、手を握る。するとすぐさま女三人は立ち上がり、ルークを倒れている時よりも強腰で射殺そうという目つきをしている。
「あんたが早くここに来たっていうのは事実だっていうのは認めなきゃいけないけど、あんたはティア達を連れて行かなきゃいけないじゃない!親善大使だっていうならそうしなきゃいけないんじゃないの!?」
「そうですわ!それに貴方が急いでここに来たというなら、ザオ遺跡にも今さっきのように急いで私達を連れて行って、その後私達全員を一緒にアクゼリュスに連れていただければよかったではありませんか!」
「そうよ!それに貴方は今までの旅で私達に今のように動ける事を隠してたじゃない!私達を騙しておいて、偉そうに説教なんてされたくないわ!」
・・・何を勘違いしているのだろう。自分達が犯した失態、それはルークが協力すれば丸く収まっただろうと、尚理解をせずに反論してくる。自らの行動に間違いがないと信じて疑わず、事実を知れば都合が良くない事には非難を浴びせる。正に都合がいいとはこのことだ。
「なーに言ってんだか。人がてめぇらの役割をこなしてやったのに、文句を垂れられる言われはねぇぞ?それとも自分達が動かなきゃアクゼリュスの住民を助けた事にはならないって救助隊より先にアクゼリュス入りした俺達の救出作業まで否定する気か?今のてめぇらの状態で苦しんでいた人達の現実までよぉ」
「そ・・・そんな事は・・・」
障気で体を蝕まされている現状で、アクゼリュスの住民と出され言葉を失う女三人。だがそこにナルトがルークを手招きする。
「ルーク~、今度はこっちの眼鏡が何か言いたそうにしてるってばよ~」
「ん?なら今度はそっちだな。ほいっと」
指を指された先の眼鏡狸の顔を見て、ルークは再び手を握る。すると今度は眼鏡狸がスクッと立ち上がった。
「・・・貴方方がやられたことはわかりました。ですが一つお聞きしたい。貴方方は住民をどちらに運ばれたのですか?マルクト側のアクゼリュスに繋がる道は使えません。ですがデオ峠及び軍港にはアクゼリュスの人達はいませんでした。住民の皆さんはどこにおられるのですか?」
女三人と違い、どこか慎重に言葉を選びながらルークに眼鏡狸は話しかける。そのある意味傷付きたくないという保守的な物言いに、ルークとナルトは自らが上位でなければ嫌味一つ言えないのかといういらつきと眼鏡狸のあの対応能力の低さに対する怒りが混ざり合って込み上げていた。
「あぁそれはもう対策は取ってあるぜ?住民の皆さんはちゃーんとマルクトに送らせていただいてまーす。けどどういう事だ?カイツールのマルクト側とセントビナーにアクゼリュスの住民を救出したから住民を保護してくれって言ったらジェイド・カーティス大佐からは住民救助の為にアクゼリュスに行ったって報告すら来なかったって言われたぞ?一体どういう事なんだ?アクゼリュスの住民はマルクトの民だ。いくらキムラスカ側から助けるって言っても国に連絡しないと駄目だろ~?国境にいきなり行ってはい、住民を助けたからマルクトに入れて下さいって言ってわかりましたって即座に帰ってくると思うか?」
「・・・っ!」
嫌味ではない痛烈な皮肉、そして強烈過ぎる指摘。眼鏡狸はルークにストレートに心をつかれ、眼鏡を押し上げる動作で表情を隠そうとする。だが余計な手間をかけさせたこの眼鏡に、ルークの怒りはまだ収まってはいない。






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