焔と渦巻く忍法帖 第十四話

・・・ルークからの何よりの辛辣な言葉に、物分かりが悪い面々も苦しみながらも流石に痛みと共に察したのだろう。反論の糸口を見つけようと出来ずに、顔を一斉に下に向ける。だがルークは一向に攻めの手を緩める気はなく、同時に再び手を握りしめる。



「・・・え・・・体が・・・?」
するとその動作とともに、イオンだけが不思議そうに顔を瞬かせながら立ち上がる。
「お前だけとりあえずは障気を丸薬の状態にして活動に支障がないように引かせた。さぁ質問の続きだ。何故お前はザオ遺跡で助けられた後、ここに来たいとこの馬鹿達に願い出た?」
そのイオンの疑問の声に丁寧に応じながらも、ルークは早く答えろと言外に告げつつイオンに問う。
「それは・・・僕はピオニー陛下に和平の仲介を頼まれたから・・・アクゼリュスの救援を見届ける必要があると思い・・・」
「だからか?けどお前の行動は浅はかとしか言いようがねぇってのはさっきの話から理解してねぇか?」
「・・・浅はか?」
ルークの言葉に心底疑問をイオンは顔で語っている。だがその浅はかという表現はこのメンバー全員に当て嵌まる事、ルークは表情を変える事なくイオンを強く見据える。
「イオンを優先して来たこいつらは勿論アクゼリュスの事を考えていなかったことをさっきの俺の言葉で証明した。だがそれと同じ・・・いや、それ以上にイオン。お前は自らの立場を理解してねぇ。理由、わからないよな?」
「は、はい・・・」
「・・・本来だったらアクゼリュスは俺らだけで行けと言われた場所。お前はキムラスカから依頼されていない。マルクトの為に何て言うのはただの勘違い以外の何物でもない。頼まれたのはあくまで仲介、ダアトの導師としての役割はマルクトからキムラスカヘ和平の橋渡しを担当したことで充分果たした。それで、結局仲介は仲介以上の事をやってはいけない、必要以上に片側の為に動くのは国から国ヘの干渉になる。和を望む為とはいえ、それは第三国としては行き過ぎだ。これは見方によればダアトのトップがマルクトと組み、キムラスカヘの強制的な和平という圧力をかけていると見られるぞ」
「・・・ぼ、僕はそんなつもりでは行動していません!」
急いで弁解に入るイオン。だがこのイオンの行動はキムラスカがもしまともな審議眼を持つ団体だったらイオンとマルクトとの間に密約があるからこその行動だと疑いの声が出かねない。キムラスカはイオンに何一つたりとも依頼していない、ダアトの代表はあくまでも老け髭と修頭胸を派遣すると言ったのだから。
預言がない木の葉の里で似たような同盟話が持ち上がれば確実に綱手及び、ルークとナルト以下の面々は裏を確認するまでは首を縦に振らないようにするだろう。そのような他国に躍らされるだけの同盟、他国同士の結束を強くし薄っぺらい紙のような結び付きだけが残る。もし裏が取れて誤解だとしてもそう見れる迂闊極まりない行動を取ったら、まず国の信用を失う。仲介した国は、国の失態の噂を情報を知った民により各地に広められるのは確定事項になるのだから。



だが、イオンの犯した愚はこれだけではない。
「それだけじゃねぇ、お前は更にこいつらと同じような事をしてんだよ」
「え・・・?」
「俺らがデオ峠に来た時、お前らは休憩していたよな?」
「・・・はい」
「体調が悪かったんだろ?お前も遅れるって可能性がここに来る前から理解出来るじゃねぇか。体調を鑑みればな。なのにお前は敢えて体調不良をおしてまでここに来た。そして結果はさっきのようにダウンしてしまう・・・もし、だ。アクゼリュスに人が残っていたとして、あまりの惨状を目にした。そこで住民から大分の数の犠牲が出たと言われた。そしてその瞬間目の前で人が死んだとしたらお前は言えるか?僕がもっと急いでいればって?今体験したからわかるだろう、これ以上苦しんでいた人達がいたって」
「・・・っっ!!」
それは障気のせいではなくルークの言葉に衝撃を受けて、絶句どころではなく顔を真っ白にまでしてイオンは膝を地につけて過呼吸気味に息をしている。



・・・なまじ中途半端に潔癖な正義を胸にしまっているイオンに突き付けるのは酷になったようだ、今の言葉は。








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