焔と渦巻く忍法帖 第十三話

『・・・となる』
「・・・という物です」
「そっ、そんな・・・」
「け、けどこの声は確かに大詠師の声になります・・・私は確かに聞いた事があるので・・・」
テープレコーダーからの不敬師匠の声を止めると、やはりその声は絶大だったようで兵士一同ざわめきながら嘘だ本当なのかと真偽を知りたがる声が上がる。
「・・・落ち着いて下さい、皆さん。確かに信じられないというのは分かります。ですがまたこれから入れるテープの中身がヴァン謡将の行動及びに、大詠師の言葉が本当だということを立証するものになります・・・では、静かに聞いて下さい」
ナルトから代わりのテープを受け取り、中身を入れ替えルークは再生のスイッチを押す。その動作を見た兵士達はがやがやしていた雰囲気をただし、一斉に静かになる。



『・・・アクゼリュス行きの主要メンバーを決めたのはいいが、モースよ。救援というからには死霊使いへの牽制も含め、兵士を派遣せねばならんのではないか?いくら預言に詠まれているとはいえ我が軍の兵を損ないたくはないのだが』
『陛下、その点は抜かりありません。兵士の選出は既にすんでおります』
『・・・どういう事ですかな?大詠師。一体いつそのような事を・・・』
『兵士の人選は預言によって決めてあります』



『今年命を落とすと詠まれていた兵士達をリスト作成しておきました』



「「「「!?」」」」
兵達の絶句の驚きなど露知らず、なにやらバサッという音がテープレコーダーから聞こえてくる。
『・・・年の初めに預言を詠む習慣を利用し、兵士の預言を詠んだ預言士に死が詠まれていた場合は大任が今年あると詠めと言わせておきました。このリストには死を詠まれている兵士だけです。故にこの兵士達を使えば預言通り、アクゼリュスに心置きなく送り出す事が出来ます。つまり陛下が心を痛める必要などないという事です』
「「「「!!?」」」」
これは何回聞いても気持ちのいいものではない、中身を知っているルークとナルトですらそうなのだから。命が失われる事を楽しげに当然と言う口調、苛立ちを感じるのはルーク達もなのだから兵士達がこれを聞いて心中穏やかにいられるはずもない。痛ましい表情で、ルークは停止のスイッチを押す。
「・・・わかっていただけたでしょうか?貴方方はこのことを知らされずキムラスカ・・・いえ、ダアトにアクゼリュスまで送り出された。ですがそれを知らないままでいたら貴方方は住民を救出しようと預言通りにいかない行動を取ってしまう、だからダアトはヴァン謡将に命じたのだと思われます。預言を乱されるようならいっそアクゼリュスの崩落に紛れさせ、殺してしまえ、と・・・」
「そ、それではルーク様が私を助けてくれなければ私達はヴァン謡将に殺されていたと・・・?」
「・・・恐らくそうなっていたでしょう」
とはいえ、老け髭がボロが出るのをパイロープとともに待っていなければここまであっさりは信じてはいなかっただろう。もしかしたら兵士が死んでいたかもしれないのは自らの腕でカバー出来たので、ルークはそれはよしとする。
「・・・ですが、私はこのような事を許す訳にはいきません。故に私は一つの結論にいたりました。ダアトはキムラスカから離すべきだと」
「ダアトを・・・ですか!?」
「はい、今のキムラスカはもはやダアトの傀儡。長年キムラスカに付き従った貴方方に非は何一つもない。なのに貴方方を切り捨てろと言ったのは他の誰でもない大詠師、陛下は断腸の思いを強いられたはず。故に私は許せないのです、国家の忠臣である貴方方を蔑ろにしたダアトを」
「!・・・ル、ルーク様・・・!」
兵士の顔は見えないが、その声にはルークへの敬愛の念を感じる。ナルトは落ちるなと思いながら、兵士の手を包み込むように両手で握ったルークを見る。
「安心してください。貴方方が帰る場所は私が作ってきます。救助した住民の皆さんと共にマルクトで待っていて下さい・・・じゃあ案内してくれ」
手で影分身兵士を呼ぶと、ルークは兵士達の横を通りナルトとともに未だ気絶している老け髭の元へ近寄ろうとする。
「・・・待ってください!」
すると兵士の代表者から決意に満ちた声が届いて来た。






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