焔と渦巻く忍法帖 第十三話

笑みを浮かべたルークは表情を老け髭が変えるのを待つでもなく、剣から手を離し老け髭の腹に蹴りを放つ。
「・・・!」
一瞬の出来事に遠巻きに見ている兵士達はただ呆然としている。何しろ神託の盾の総長である老け髭がルークの蹴り一発で宙を飛んでいるのだから。だが兵士達が老け髭の様子を見ていると、相当の早さで飛んでいるはずの老け髭の横に瞬間的にその場にルークが姿を表した。
「しばらく寝ていて下さい、ヴァン謡し・・・いや、老け髭」
まだ意識が残っているかどうか定かではない老け髭に一瞬だけ顔を近付け、見下げ果てた笑みを浮かべて丁寧な言葉から完璧な素の声を出す。顔を離すとルークは勢いよく飛び上がり、明らかに素人目から見ても重傷を負わざるをえないすさまじい早さの踵落としを鳩尾に放った。



‘ズシャァッ!’
土がえぐれ、老け髭の体が地面に埋まる。一瞬の出来事を見る事が出来なかった兵士達が見たのはその踵落としの後の音が鳴り響いた後の光景だった。
兵士達はあまりの展開の早さに何が起きたのかと、何がどうなってこうなったのかと理解出来ずただ指一本すらピクリとも動かない老け髭の横に佇むルークを凝視している。
すると当の本人のルークは老け髭から視線を離し、ナルトが庇った兵士の元へと歩み寄る。
「大丈夫ですか?怪我はありませんか?」
「・・・え?あ、ああはい・・・ありがとうございます、ルーク様・・・」
「そうですか・・・間に合ってよかった・・・」
ホッとした表情を見せるルーク、その顔は慈愛に満ちている。だが、兵士の雰囲気は戸惑いを隠せてはおらずナルトの肩を借りながらも立ち上がる。
「あの・・・ルーク様・・・これは一体どういった事なんですか?いきなりヴァン謡将が何やら言い出したのもですが・・・そ、そのルーク様がヴァン謡将を倒したというのも・・・」
その声には畏怖が感じられ、そのルークに対する怯えが見て取れる。だがいたってルークは痛ましい顔になり、兵士を見据える。
「・・・私は良からぬ情報を耳にしました。ですが、それを口にするには確証を持っていませんでした。なので私は核心を得る為にそこのナルトが用意した独自の交通機関を使い、事前にアクゼリュスまで先回りしたのです」
「良からぬ情報?・・・何ですか、それは?」
「その前に一つ聞きますが、貴方もそうですがアクゼリュスに派遣された貴方方は今年の預言はどう詠まれていると言われましたか?」
「え・・・?預言ですか?預言には重要な任を受ける年、その任を終えれば大厄は取り除かれると詠まれましたが・・・?」
「成程・・・やはりそうですか・・・他の方々は言い方は違えど大体同じような内容ではありませんでしたか?」
ルークからの問い掛けに、距離が離れている所にいる兵士達がざわつきながらも全員が頷く。
「どういう事なのですか?ルーク様?アクゼリュス行きは間違いなく我らにとっても貴方にとっても大任なはず。一体どのような事を・・・?」
その代表者の言葉に、兵士達も遠慮がちにルークに近づいてきて話を聞き逃すまいと真剣な様相を見せる。それを見てルークはあらぬ方向を向き出す。視線の先に何があるのかと兵士達も視線を向けると、影分身達に四方を守られながらパイロープがルーク達の元へ歩いてきた。
「ルーク様、お連れしました」
「ご苦労・・・この方はアクゼリュスの代表者のパイロープさんです。この方も交えて説明します。さあまずはアクゼリュス行きの事実をぶちまけた大詠師モースの言葉をお聞かせします・・・じゃあナルト。頼む」
「了解」
返事を返すと懐からテープレコーダーを取り出すナルト、そして再生のスイッチを押すとパイロープに聞かせたあの不敬師匠の声が響き出した。





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