焔と渦巻く忍法帖 第十二話

一瞬で姿を消した二人と影分身達が現れたのはパイロープにキャンプ地だと告げた場所から少し離れた平原だった。






「よし、ナルト。どんどん頼む」
「了解だってばよ」
そういうと、ルークは自らが作った影分身達とともに一斉にナルトが作った影分身達が背負って来た人達を地面に寝かせ、左手に意識を集中しだした。
するとルークの手に淡い光が灯り、その手をルークが倒れている人にかざしだす。その様は医者がする触診、そして数秒もするとルークは左手を持ち上げる。するとその光に包まれた左手の上には紫色の液体状の物が乗っていた。
「・・・こりゃ体調異常起こさない方が無理があるな・・・」
眉を寄せて痛々しく呟くと、ルークは右手で手荷物の中から巻物を取り出す。そして口で巻物の糸を紐解いて巻物を投げると、ボンと音と煙をあげる。
煙が晴れるとそこには封印の術式が外観一杯に書かれた木桶が現れた。現れた木桶にルークはその紫色の液体をビチャッと投げ入れる。
「・・・わりぃナルト。治療すんだ人達を横に運ぶ分だけの影分身を残してアクゼリュスにまた行ってくれ。手遅れになる人も下手すると出て来る。だからペース上げて治療するから」
「了解だってばよ」
傍らにいたルークとともに同じように治療に専念していたナルトはルークの言葉に了承で返し、一瞬でその場から消える。



ルークとナルトは共に医療忍術を心得ている。腕前は共に綱手が舌を巻く程、というより言ってしまえば綱手よりも上だ。

そんな二人、もとい今ルークが行っているのは医療忍術用に練ったチャクラを使って体から直接の障気抜き取りだ。

だがこの方法は手間と時間がかかる。譜術でまとめて治療というのが賢いやり方かと思われるが、実はそうではないと二人は理解している。

障気というのは正に毒、譜術での解毒はいわゆる動物や植物等が持つ生物特有の体にすぐに回る毒には聞く。だが障気というのは普段からの生活の積み重ねにより血液に徐々に体の一部として結合していく。譜術というのはあくまでも体に突如入り込んだ異物排除という即効性を重視したもの、障気みたいに体の一部にまで組み込まれた生活習慣病みたいな物にはいたって効果が薄いという事を知っている。

だから二人は医療忍術により、血液に結合している障気のみを集めて体外に出す事の方が人命救助に適していると判断した。



「ほい・・・ほい・・・ほい・・・」
一定のリズムで障気を抜き取り桶に入れ、側にいるナルト影分身に治療をすんだ人を渡す、そして別の影分身から運ばれてきた人をまた治療、という流れを繰り返す。淡々と繰り返されている様子にこれは簡単なのではないかと思われるが、元々医療忍術は使い手を選ぶ上にチャクラの消費量も繊細なコントロールが必要な分に下手な忍術より多い。それを影分身にまで同じように行える技量から、ルークの能力の高さを伺える。
無論ナルトもルークのように行えるが、役割としてはナルトは住民のアクゼリュスからの移動を受け持っている。最初はナルトは影分身だけに任せようとしていたが、ルークの声を受けて住民運搬の役目に徹する事にした。






「ルーク、後千人程追加するから今のうちに兵糧丸食べとくってば?」
住民を運んで来る中、ナルトがあっさりと大量の人数が来るから食べとかない?と話しかけてきた。
「ん、結構長丁場になりそうだから食べとく」
ルークも大してそれに反応する事なく普通に了承で返す。
「んじゃ、アーン」
兵糧丸の入った筒を取り出し、何粒かほど手に乗せアーンしろとナルトは言ってくる。
「アーンってガキじゃねぇけど、アー・・・」
片手間で右手を使って食べるのもなんだと思ったルークは口を開ける。
「ほいっと」
口にホイっと兵糧丸をナルトは入れる。
「ん・・・あんはとな」
「じゃあ俺は戻るってばよ」
ルークから口をモゴモゴさせながらの礼を受け取ったナルトは再び住民の救助にと、その場から消え去った。
「はーへ、ばんはっは」
ボリボリと兵糧丸をかみ砕き、ルークは目の前の患者達への治療スピードをアップした。






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