焔と渦巻く忍法帖 第十二話

制限無しの全力速度の二人は一気にデオ峠を抜け、ほんの一時もするとアクゼリュスへとたどり着いた。






鉱山という風景は見た事はある。だがそれにプラスで紫色が常に目に入る、それはルーク達からしても異様といわざるをえない光景であった。



「・・・っちゃ~、これは想像以上だな・・・」
「これは確かに壊滅同然の状態といってもおかしくはないってばよ」
道端には障気にやられたのであろう人達がそこらじゅうにゴロゴロ転がり、かろうじて意識を保って活動を行っている人も誰かを助ける為の元気など一片もないとすぐにわかる。
「遅効性の毒を常に吸ってるようなもんだな、障気とやらの性質からして」
「人間の抵抗力には差が出るからまだ元気な人は抵抗力がある証拠だってば。けどこのままじゃ遅くなればなるほど・・・」
「犠牲者が増える、か・・・なら本格的に救助活動を開始させてもらおうかな」
傍目から見てこの現状は誰かの手が加わらなければ街の住民は滅び絶える事は明らか、二人は一刻も早く救助作業を開始するべきだと辺りを見渡す。



すると、こちらに街の住民であろう人物が近づいてきた。
「あの・・・貴方方はキムラスカの方々ですか?私はこの街の代表者のパイロープと申します」
代表者と聞き、ルーク達は丁寧に頭を下げる。
「確かに私達はキムラスカの者です。ですが私達はキムラスカからの代表としてはこの街には来ていません」
「・・・は?どういう事でしょうか?」
ルークの言葉に何を言っているのかと理解出来ないパイロープは疑問を口にする。するとナルトがおもむろに懐から何かを取り出した。



「大変言いにくい事ですが、率直に申し上げます。アクゼリュスはキムラスカとダアトに見捨てられました」



「えっ・・・!?」
いきなりの突然宣告にパイロープは何を言っているのかと事情を理解出来ずに戸惑うばかり。それを見たルークはナルトから手渡された物を手に取ると、人差し指でその物体のある部分を押した。
『・・・ND2018、ローレライの力を継ぐ若者、人々を引き連れ鉱山の街へ向かう』
その物体を押した途端、辺りにあの耳障りな不敬師匠の声が鳴り響く。その物体からの突然の人間の声にパイロープは言葉を無くし驚くが、尚不敬師匠からの声は続く。
『そこで若者は力を災いとし、キムラスカの武器となって街と共に消滅す。しかる後にルグニカの大地は戦乱に包まれマルクトは領土を失うだろう。結果キムラスカ・ランバルディアは栄えそれが未曾有の繁栄の第一歩となる』
「なっ!?」
パイロープがその声に絶句すると同時に、ルークは物体の先程押した所の別部分を押して声を止める。
「これはテープレコーダーという譜業でして、このように人の声を譜業の中に記録するものです」
これはナルトが会話を録音するためにと一度向こうに戻ってから取ってきたものだ。これにナルトは自らの影分身に変化の術を使わせ、一言一句たりとも間違いのない会話を記録させていた。
「この声を出しているのはかのローレライ教団の大詠師モースです・・・もちろん信じられないとおっしゃる気持ちはわかります。私自身この預言に詠まれている身としてもですね」
「え・・・?という事は貴方が預言に詠まれている聖なる焔の光になるのですか?」
意味深に語られるルークの言葉に、パイロープは食いついてくる。
「はい・・・この預言の事をこちらのナルトから聞いた際には私は最初、預言通りに行動をするべきかと思っていました。ですがこの言葉を聞き、考えが変わりました」
悲しそうに話すルークはナルトから別のテープを受け取り中身を入れ替えると、再び再生のボタンを押した。



『・・・アクゼリュスが滅びれば預言通りになります。住民も預言を詠めばまず間違いなくアクゼリュスの崩落に巻き込まれて死ぬと詠まれるでしょう。つまりアクゼリュスの住民など助ける必要はないという事です』



「!!?」
まさかの宣告はもはや言葉を無くす、パイロープはただ呆然とよろめき地面にへたりこんでしまった。
「・・・この言葉を聞いた時、私もあなたのように絶望いたしました。ローレライ教団は預言の達成の為には罪無き人々も預言の一言で見捨てるのだと。ですから私は決心いたしました。預言に付き従い人々を殺す事を選んだ繁栄より、預言による繁栄を排して自らの手で掴む犠牲無き繁栄を掴もうと」
ルークはそっとパイロープに手を差し出す。
「いきなりの事で頭が混乱してしまっていると思います。ですが預言通りにならないためにはあなたの声が必要なんです。協力していただけませんか?」
慈愛に満ちた瞳と笑みを向けるルーク、するとパイロープは一も二もなくルークの手を掴んだ。





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