焔と渦巻く忍法帖 第十二話

「・・・っつー訳だよ」
説明が終わり、溜めていた物を吐き出せた事にすっきりした顔をするルーク。だがルークは一転、額に汗をかきだす。
「我慢しなくてもよかったんだってばよ?ルーク」
「やめてやめて、いつにも増してその笑顔がすげぇ怖ぇ」
自分に向けられた負の感情ではないのに、ルークはそのまばゆいばかりの笑顔に恐怖する。
「その分シンクとの接触に成功したからいいだろ」
「言いたいのはその後なんですぐ来なかったって事だってばよ。無理に我慢しなくても影分身に任せればよかったってば」
「・・・ま、そうしようかと思ったんだけどな。実際猪思考姫が入る前までは別にあいつら黙らせとけばいいって思ったんだけど、あいつ入って計算狂ったからタイミング逃してな」
はぁ~と吐かれる息には今までの鬱憤が込められているかのように深い。
「ただもうこれからは我慢しねぇ。どうせあいつらもこっちに来るんだ。来たら来たでどっちの意味でも数回は殺してやるさ」
だが、溜息からの声には一転して清々しさと殺意を入り混ぜたものがある。やはり開放感とストレスは相当なものだったようだ。
「じゃあ俺も力の限りやってやるってば」
「・・・ほどほどにしとけよ。お前の本気、この外殻大地にでかい風穴冗談抜きにあけれそうだから」
だがやはり終始笑顔のナルトだけはルークの恐怖の対象、ほどほどにしろと言う声には若干遠慮気味な感じが聞いて取れた。



「・・・あ、そうだ。影分身消さなきゃ」
ナルトとの会話に一段落したルーク、今までのナルトとの行動の軌跡を影分身から得る事にした。
「ほいっと」
「ほい」
影分身に渡した自らを口寄せするための巻物を影分身から投げられ、それをルークは受け取る。巻物を本体のルークが受け取ると影分身は同時に姿を消した。
「・・・えっと、ここはデオ峠、か」
デオ峠、ここはキムラスカの領地からアクゼリュスに行ける唯一の通行路である。
「やっぱ交通機関使うより走って行った方が早いってばよ」
「だよなー」
ナルト達は笑いあっているが、これは相当な事だ。ナルトの言う交通機関とは船、アクゼリュスはカイツールの上のマルクト側に位置している。この地はローテルロー橋が漆黒の翼に壊されている今、キムラスカとは地続きにはなっておらず普通に行くには船に乗ってどこかに接岸してから歩いて行くしかない。
だがナルト達は海上を走ってここまで来た。
「カイツールの兵に聞いたらまだ老け髭達は港にもたどり着いてないって言ってたってばよ」
「ならまだ十分時間はあるな」
更には船のスピードを遥かに凌駕した速度でカイツールにまで到達している・・・いくら海を最短距離を通って行ったとしても、平然と休息の時間も取らずここまでの距離を走れるのはこの二人くらいだ。
「よっしゃ、なら行くか。今現在も苦しんでる人達がいるわけだし」
「そうだってばね。預言に殺されるなんて不憫過ぎるってばよ」
更には底知れぬ体力、今までの道程の疲れを見せる様子をナルトは見せる事なく、ルークとともにデオ峠から一瞬で姿を消してしまった。




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